今まで習ったメルセデス・ベンツの基礎知識が通用しない!―崩壊した命名の法則
2025年12月31日
2025年はヤナセがメルセデス・ベンツを取り扱って73年。1952年6月28日、当時の関係会社であるウエスタン自動車が170V・170S・220・300の4台を発注し、同年に158台を販売したのが始まり。筆者は1972年に入社し、ドイツ本国の有名なトレーナーや先輩達にメルセデス・ベンツの基礎知識を教わった。しかし、今や当時習ったメルセデス・ベンツ(乗用車)の基礎知識の法則が通用しなくなってきている点にスポットを当て紹介する。
モデル表示と排気量の法則が?
例:230 E/W123
●法則:数字に10をかけるとそのモデルの排気量にほぼ等しくなる。
230×10=2,300(2,297cc)
●法則:数字の接尾辞・アルファベッドの意味は次の通り。
D=ディーゼル Diesel
T=トランスポート、ツーリング Transport 、Tourenwagen
E=燃料噴射 Einspritzung(アインシュプリッツング)
C=クーペ Coupe
S=スーパー Super
SEL=このLはロング Lang(ラング)
SL=このLはライト/軽量 Leicht(ライヒト)
G=ゲレンデバーゲン Geländewagen

Photo:Mercedes-Benz Group
以前のモデル表示は、この法則に沿って統一され、解り易くお客様にも説明し易かった。しかし、最近のモデル表示はいつ頃なのか、アルファベッドと排気量がこの法則に合致しなく解りづらくなっている。
アルファベッドの意味が?
「E」
例えば、現メルセデス・ベンツの中核であるミディアムクラスのEクラスセダン。そのモデル名はE 200、 E 220d 、E 300 Exclusive、 E 350 e Sports Edition Star、Mercede-AMG E 53 HYBRID 4MATIC+と豊富。このアルファベッドの「E」は、今や「先にE」が付き、あとにモデル表示の数字がきて、意味がわからなくなった。

Photo:アウトビルトジャパン
このアルファベッド「E」の意味が変わったのは、1984年に発表されたW124からである。それまで、「E」の意味は単にEinspritzung(燃料噴射)の頭文字だったわけだが、この傑作車W124で正式に「ミディアムサイズ」と「Eクラス」の名称を与えられた。
その意味するところは、Executive(エグゼクティブ)の「E」。当時、ヨーロッパではビジネスマンのインセンティブとして、給料の他にこのクラスの乗用車が提供されたこともあり、堂々の「エグゼクティブカー」となった。

Photo:妻谷コレクション
前期のW124のモデル表示は300E、後期にはE320(1993年9月のマイナーチエンジ)となったが、この「アトE」と「サキE」では意味が違っていた。つまり、「アトE」はEinspritzung=燃料噴射、「サキE」はExecutive=エグゼクティブの意味を持つEクラスと呼ばれ、現在に至っている。
「C」
「C」も、以前では「アトC」となっていた。例えば、280 CE/W114のCはクーペ、EはEinspritzung=燃料噴射の意味。しかし、その後ではどうだろうか?「サキC」となり、C280はクーペの意味ではなく、コンパクトの意味を持つCクラスとなった(Eクラスの下に位置する)。

Photo:Mercedes-Benz Group

Photo:Mercedes-Benz Group
いつ頃からそのように呼ばれたのか?それは、初代Cクラスが小型車190の後継車としてデビューした1993年からである。現Cクラスのクーペモデルは廃止されて、Cクラス/EクラスのクーペとしてCLEクラスが後継モデル扱いになっている。

Photo:アウトビルトジャパン
理由はC/Eクラスの2ドアクーペモデルが世界的に販売減少する中で開発/生産コストを削減し開発効率を大幅に改善するため、メルセデス・ベンツはひとつのCLEクラスに統合したといわれている。
「S」
メルセデス・ベンツ乗用車の最高峰として、正式にSクラスと呼ばれたのは、果たしていつ頃なのか?それは、1972年に登場したW116に正式のSクラスの名が使われた。つまり、メルセデス・ベンツは安全性の追求を徹底し、さらに進化した衝撃吸収ボディ構造や大型バンパー、衝撃を和らげる内装材の採用などで、当時社会問題となった自動車の安全性についてこのSクラス/W116で先進的な回答を示した。以来、Sクラスと呼ばれ現在に至っている。

Photo:妻谷コレクション
当時のラインナップは280 S/SE、350 SE、450 SE/SEL、さらに450 SEL 6.9も追加された。例えば、この450 SELの意味はS=Super(ドイツ語でスーパー、日本語で超の意味)、E=Einspritzung(燃料噴射)、L=Lang(ドイツ語でラング、日本語でロング)となり、450 SEよりもロングバージョンであることをはっきりとリアエンブレムで明記していた。

Photo:Mercedes-Benz Group
しかし、Sも同じく「アトS」から現在では「サキS」となり、現在スーパーの意味を持つSクラスはS 450 d 4MATIC/S 500 4MATIC/S 580 4MATICがあり、しかもリアエンブレムを見てもロングなのか、区別がつかなくなった(S 450 d 4MATIC除く)。特に1954年の300SL以来、このSLのLは、ドイツ語でLeicht(ライヒト)、日本語ではライト=軽量の意味で、現在も全く意味を異にしている事は周知の通り。

