自動車業界における未来のモビリティを創造する新ブランド「AUMOVIO(オモビオ)」が始動
2025年12月19日
オモビオ株式会社は去る12月5日、都内赤坂の会場にて『コンチネンタルから独立し、新たに始動したAUMOVIO(オモビオ)。日本代表が語る未来のモビリティへのビジョンと戦略』と題した説明会を開催した。
自動車業界における未来のモビリティを創造する新ブランド「AUMOVIO(オモビオ)」が始動。「これは自分には手に負えないかもしれない……」SDV、UX、コネクテッド――。AUMOVIO(オモビオ)から届いた招待状には見慣れぬ言葉が目白押しだった。どうやら車載電子制御器機に関連するテクノロジーに特化した新しい会社の説明会のようだ。ところが私は自他共に認めるITオンチ、出席したところでなにも理解できそうにない。ちなみに事前に調べたところ、SDVはソフトウェア デファインド ビークル、UXはユーザーエクスペリエンスを示すのだそうだが、そう言われても具体的なイメージがわかない。私は不安を抱えながら当日の発表会会場へと赴いた。

同社代表取締役社長 難波裕一郎氏。自身、営業の出身だと明かすだけに、聞く者に寄り添った語り口によって、この日の説明会全体が和やかに進行した。
Photo:アウトビルトジャパン
AUMOVIO(オモビオ)とは
登壇したのは同社代表取締役社長 難波裕一郎氏。
AUMOVIOはメガサプライヤー、コンチネンタルのオートモーティブ事業からスピンオフしてできた新しい会社だと説明する。去る9月18日にフランクフルト証券取引所にて上場を済ませている。これを受けて日本でも11月より新社名で業務をスタート、これを期にこの日の説明会開催の運びとなった。
スピンオフとはいえ、AUMOVIOはコンチネンタルから経営面も含め完全に別個の独立起業である。
コンチネンタルから独立した理由については、モビリティ分野がかつてないスピードで変貌しており、この変改の波に迅速かつ柔軟に対応できる組織作りが必要だったとの説明があった。「(コンチネンタルから離れ)自らのスピードと創造性をもってモビリティの新しい価値を作っていきたい」と難波氏は語る。
日本市場の重要性
日本の自動車メーカーの2030年のグローバルシェアは25%(生産台数予測ベース)を保つことを例に挙げ、「日本はAUMOVIOにとって非常に重要な市場に位置づけられています」と難波氏は強調する。



AUMOVIOの日本の拠点は上の写真が示す通りで、北海道・紋別と千葉・旭にテストセンターを所有、日本の自動車メーカーの所在地をカバーするサテライトオフィスを構え、従業員数は約1300名を数える。
そんな同社の牽引役を担う難波氏が、「日本には日本流の仕事のやり方があるし、お付き合いの作法もあると思います」と発言されたことに注目したい。自動車メーカーは日本流のおもてなしの気持ちがあってこそ、今日の高いクオリティの製品が実現したのであり、部品メーカーも自動車メーカーと同じ気持ちで製品作りに取り組みたいと意思を表明された。グローバルとローカルのシンクロ――外資系企業では新しい発想だと思う。
なにを目指す?


難波氏は同社が目指す目的に「Safe」、「Exciting」、「Connected」、「Autonomous」という4つのテーマを掲げた
最後のAutonomous、自動運転との関連で、この分野の技術を革新させることにより、交通事故を削減することは可能だと思っていると氏は語る。傾聴に値する発言だと感じた。国内の交通事故による死亡者数は、昭和45年ごろをピークに減少を続けてるが、いまだ2000人を超える人が交通事故で命を落としている。氏は自動運転の進化がこれの歯止めに有効だろうとの考えを示した。自動運転と交通事故をこれほど正面から結びつけた提言は、私が知る限りでは初めてだったので、期待感をもって聞いた。
今後の製品展開
今後の製品展開の説明中、自動運転の分野で完全縦列駐車の実用化を視野に入れていることを難波氏が示唆したことにも興味を惹かれた。個人的な話になるが、最近私は狭くて混んだ駐車場で空きスロットに自車を収めるのが億劫になっている。とくに混んだデパートの屋内駐車場で、駐車しようとする他車が後ろに並んでいたりするとど、早く入れなくてはとあせるのだ。こんなとき、自分に代わってクルマがすべての運転操作を迅速かつスムーズに完了してくれたらと、思うことがしばしばある。こうした日常的な場面で効用を発揮してこそ、自動運転の有り難みは人々に理解されていくのだと思う。

もう1つ、ドライブレーキなる制動装置が開発途上にあるというのも嬉しいニュースだった。ドライ、つまりブレーキフルードを使わず、その経路も不要なブレーキだ。EVが前提のシステムかと思われるが、インホイールモーターが実用化されれば、自動車から摩擦の力を利用した従来のブレーキは姿を消すかもしれない。「かなり細かい制御ができます」と難波氏は語る。
遠く1900年、かのフェルディナント ポルシェ博士が制作した電気自動車は左右前輪のハブ内にモーターを内蔵していた。まさに歴史は繰り返すの一例だが、さすがのポルシェ博士もブレーキ機能までは期待していなかったと思う。
予想通り、私にはすべての技術的な解説を理解することはできなかった。ただ、解説のなかには共感を覚える部分も多数あった。それに今回AUMOVIO が催した説明会で、この企業を特徴付けている大きな要素もわかったような気がする。牽引役を担う難波裕一郎氏のビジネスに臨む姿勢だ。「技術だけではなく、人と人との繋がり、信頼が大事だと思っています」と語る難波氏。外資系企業に新しいタイプのリーダーが生まれたと印象づけられた。

ソフトウェアが定義する乗り物と、自動車の乗り手に与えられた移動の自由。この2つは今後いかに融合し、私たちの生活に定着していくのだろう。高い志をもって独立独歩の道を歩み始めたAUMOVIO。興味をもってその成長ぶりを見守りたい。
Text:相原俊樹
Photo:オモビオ

