静かなる継承。Lexus LFA Concept ─ 未来に受け継がれた“天使の咆哮”の記憶
2025年12月11日
Lexus が新たな“LFA”を名乗るコンセプトカーを公開した。その名は Lexus LFA Concept。そして、これは単なるBEVスポーツのスタディモデルではない。“LFA”という名称を冠する以上、そこには特別な意味がある。
初代 LFA が残したのは、数値では測れない“文化”だ。4.8L V10 NA、9,000rpm で歌い上げるあのサウンド、CFRPモノコックを手組みで造り上げた執念。そして「日本のスーパーカーはここまでできる」という静かな誇り。世界はあのクルマを“孤高の芸術品”として記憶している。
その名を、あえてBEVの時代に復活させる。この判断自体、すでに挑戦だ。
進化ではなく“式年遷宮”。LFA Concept が投げかける問い
LFA Concept の真意は、歴史の延長線に新しいLFAを“加算”することではない。むしろ、初代が体現した“魂”を別の時代に“遷宮”させることだ。全長4,690mm、全幅2,040mm。ワイドトレッドと極端に低いシルエットが、ひと目で“本気のスポーツ”であることを語る。しかしその姿は、初代のような複雑なダクトの集合体ではなく、切れ味鋭い面で構成される、静けさと凄みを両立した新しいLexusのスポーツフォルムだ。
コクピットは徹底した“ドライバー中心設計”。センターディスプレイさえ排し、メーターとステアリングの周囲に最小限の機能を凝縮。現代の“情報過多”に対する明確なアンチテーゼ。運転そのものに集中させる意志が透けて見える。

BEVでスーパーカーを語る時代へ
LFA Concept はBEVだ。モーターの配置も出力も現段階では明かされていない。だが、GR GT/GR GT3 とシャシー思想を共有することで、“レースで鍛える”というトヨタの王道を踏み外していない。
初代LFAが持っていた“天使の咆哮”は、もちろんここにはない。しかし、代わりにBEVだからこそ得られる瞬発力、静けさ、レスポンスの純度が新しい官能を生み出す可能性がある。レクサスが向き合っているのは、単なるEV化ではない。“未来の官能”の創出だ。
初代 LFAと比べる ─ プロポーションが語る哲学の違い
初代LFAは、巨大なV10を中心にクルマを構成する“フロントミッドシップ”の発想だった。冷却、吸排気、軽量化。すべては高回転V10を正しく鳴らすための布石で、その結果としての唯一無二のフォルムだった。

対して LFA Concept はパワーユニットの自由度が高いBEV。だからこそ、キャビンを大きく後ろに引き、極端なロングボンネットを与え、“LFAらしいシルエット”の文法をEV時代に翻訳している。空力を削ぎ落とした造形は、まるで“静かに研ぎ澄まされた刃”だ。
500台の伝説と、新章の幕開け
500台限定で、手作業で組まれた初代 LFA。ある意味で、あれは“二度と作れないスーパーカー”だった。トヨタが真剣に“世界一のクルマ”を作ろうとしたとき、企業の理屈を超えた熱量が結晶となり誕生した奇跡だ。
LFA Concept は、その奇跡をBEVで再現するのではない。模倣ではなく、精神の継承である。

静かに走る。無駄がない。情報が少ない。だからこそ、ドライバーは研ぎ澄まされる。モリゾウが言う「クルマ屋として残すべき技術」が詰まった一台として、このクルマは未来へ繋ぐ“文化の橋”になる。
結論:
LFA Concept は“LFA 2.0”ではない。未来のスーパーカーに向けた、一度きりの宣言である。
初代LFAが生んだ熱狂と、BEV時代が突きつける現実。そのふたつを同じ土俵に乗せ、なおスーパーカーの未来を語ろうとする意志。それこそが、LFA Concept の存在理由であり、価値だ。量産の有無など、今は重要ではない。これは “レクサスが未来に何を残したいのか” を示す灯台である。
静かだが、力強い。LFA Concept は、そういうクルマだ。
Text:アウトビルトジャパン
Photo:LEXUS

