初試乗 ポルシェ911ターボSに続いて投入された911ターボをホッケンハイムでドライビングテスト その結果は?

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ターボとターボSの違い 911ターボはターボSでなくても凄いドライビングマシンなのか? サーキットテストで検証!

Sがつかなくても、新しいポルシェ911ターボは本当に驚異的だ。ポルシェは911ターボSの市場投入後、かなりの時を経て(Sのついていない)911ターボの発売を開始する。しかし、レーストラックへの我々の旅が示すように、待った甲斐はあった。テストの詳細をお届けする。

ホッケンハイムリンク

1930年代に建設されたホッケンハイムは、F1では長らくドイツ人レーサーとしての勝者がいなかったため、低迷時期が続いたが、1995年に「ベネトン ルノー」のミハエル シューマッハがドイツ人として初勝利を挙げ、フェラーリに移ってからもシューマッハは勝利を重ね、ドイツ人レースファンを歓喜させたことで知られるサーキットだ。
テスト日の気温は摂氏11度。
我々はアイコニックなスポーツカー、992シリーズのポルシェ911ターボ クーペの実力と動力性能を試し、ターボSとの違いを確認するために、興奮をおさえつつ、ピットを離れホッケンハイムのコース上へと乗り込んだ。

ファーストラップ(1周目)はウォームアップのため、コースをチェックしながら、タイヤとドライブトレーンをしっかりと温める。
そしてセカンドラップ(2周目)から本格的なアタックを開始する。
するとたちまちこのスポーツカーが、我々の期待する以上のことを提供してくれることが明らかになった。
最終コーナーの出口手前で、メインストレートに向けて思いっきりアクセルを踏み込み、できるだけスピードを上げる。
北側のカーブ手前でブレーキを強めに、しかし短く踏んで、ターンイン。
「パラボリカコーナー」の手前で再びブレーキをかけたあと、コーナーを全速力で駆け抜ける。
スピードメーターはとっくに250km/hを超えているが、ポルシェターボはすべてを受け止めて、難なくこなしていく。
このクルマでここまでリラックスできることは信じがたいことだ。
もっとも急な「モトドロムコーナー」でも、このレーサーは動揺することなく、淡々とコーナリングをこなしていく。
他のドライビングモードよりもドライバーの操作に重きを置く、「スポーツプラスモード」でも、このクルマは信じられないほど機敏に反応し、ハンドルを握っている人間のちょっとしたミスをも許してくれる。

新しいターボでは、パイロットは再びより多くのことに関与する

ポルシェ911ターボは、リアアクスルのトラクションとドリフト角がどうなっているのか、常にドライバーに詳細を教えてくれる。
車が事実上アスファルトに張り付いているという事実は、強化されたフロントアクスルトランスミッションを搭載した全輪駆動システムの改良の結果であり、それにより最大500Nmのトルクをホイールに分配できるようになった。
また、スポーツサスペンションは、剛性の上がったボディを10ミリ下げて俊敏性を促進している。
ステアリングは、より強力に兄貴分のターボSと同じように、レスポンスが良く、ドライバーの指示を適確に実行する。

誰もが楽しめるレースカー: 洗練された911ターボでは、ほとんどの人が最初から速く走ることができる。

新しいポルシェ911ターボは、先代モデルよりも多くのドライバーを魅了する。
非常に高速で、驚くほどスムーズになったため、パーフェクト911と言っていいだろう。
新しい911ターボはすべてを以前より優れたレベルでおこない、あなたは常に、いつまでもパイロットとして操縦桿を握っていたいと感じ、決して乗客として横に座りたいとは思わないだろう。

パフォーマンスは価格差をほとんど正当化しない

静止状態から2.8秒後には100km/h、9.7秒後には200 km/hに到達し、580馬力という最高出力と750Nmという最大トルクによって最高320km/hまで加速できる。
結局、「ターボS」モデルよりも70馬力劣るものの、性能的にはそれほど劣っているわけではない。
その差はわずかなものだ。
そしてなにより、911ターボは、911ターボSより、かなり安い。
911ターボの価格、180,811ユーロ(約2,296万円)は、ターボSよりもなんと31,900ユーロ(約405万円)も安くなっている。
ドライバーズシートの後ろで機能する3.8リッター6気筒ボクサーエンジンの持つ「中毒性」は、この「小さい」バージョンでも、もちろん健在だ。
カントリーロードに限らず、ポルシェ911ターボは、日常における使用にも非常に適している。
アダプティブダンパーは道路のデコボコに柔軟に適応し、アクセルペダルは右足の動きにそれほど貪欲に反応しない。
加えて、スポーツシートもとても快適だ。
これは、長い距離をも簡単にカバーできることを意味する。

Sが付いてなく、70馬力少ない分、ターボは31,900ユーロ(約405万円)安くなるものの、だからといって、性能的に大きく劣ることはなく、その差はわずかだ。

911ターボSが出た後に、普通の911ターボが出るというのはなんとも話が逆な気はするが、いずれにしろ普通のターボでも十分以上、というか人間が(とくに公道上では)、追い付いていけないほどの性能を持っている、ということが今回のレポートでよくわかる。
なにしろホッケンハイムに持ち込んで走行テストをしたところで、これほどの絶賛を受けるのだから、一般道で普通の人間がその性能を使い切ることなど到底無理な話である。


そう考えると「S」の意味はいったいなんだろう、という話になってしまうわけではあるが、レポートによれば普通のターボはSよりも400万円ほど安く買えるのがメリットらしい。3,000万円のポルシェを購入する人が、この「400万円」をどう考えるかちょっと想像もつかないが、最近のポルシェではあっという間に400万円くらいのオプション価格となってしまうから、意外と「そんなものならいっそのこと」と、Sを購入してしまう人が多いような気もする。
ひょっとすると普通の911ターボは、ものすごくラグジュアリーに振ることでSと差別しているのかなとも思ったが、そういうことでもないらしく、400万円節約して普通の911ターボでいいのか、いっそのこと911ターボSを買うべきなのか、そこを誰かにバサッと一途両断してもらいたい気がする。

Text: Wolfgang Gomoll
加筆:大林晃平
Photo: Porsche AG