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ボケもツッコミもナシ!BYDのPHEV「BYD シーライオン 6(FWD)」が日本上陸

2025年12月7日

BYDのスーパーハイブリッド(PHEV)SUVであるBYD シーライオン6が日本で発表になり、さっそく雪をかぶった富士山が美しく見える御殿場で試乗会が開催された。その価格は3,982,000円(AWDモデルは4,488,000円)。オプションなどなにもなく、ワングレードでフル装備展開のBYDのSUVに試乗した大林晃平は、正直驚いたのであった。

試乗会の会場には、黒と白とベージュといったいまいち冴えない(申し訳ない)ボディカラーに塗られたシール6が並んでいた。外観は「マカンとアウトランダーとクラウンエステートなんかを学習してみました」というAIが描いたような感じのデザインで、そこにBYDらしいややしつこいディテールが組み合わされている。早朝という時間もあってか目が覚めるような魅力は持ち合わせていなかった。

そんなこともあり、寒空の下で頑張っているBYDのスタッフには申し訳ないが、寒いし早々と室内に乗り込んでしまうことにする。

日本導入5車種目となる「BYD SEALION 6」。ボディサイドを走るキャラクターラインが印象的。

速攻で温まるシートヒーターとステアリングヒーターのおかげで、あっという間に快適になりつつある室内を見回すと、そこにはありとあらゆる装備が備わっている。15.6インチの大型ディスプレイ(もちろんナビやスマートフォン連携もばっちりOK)やインフィニティのオーディオシステム、ガラスサンルーフ、ヒーターとベンチレーションが備わったパワーシート、車外への給電(V2L)、家庭への給電(V2H)といった装備から2台分のスマホワイヤレス充電まで、とにかくありとあらゆるこれらの装備は「オプションではなく」398万2000円という価格にすべて入っているのである。

仕上がりが素晴らしい「SEALION 6」のインテリア。シートの座り心地は良好。

インテリアデザインはシンプルで、各部のつくりは大変良くできており、安っぽさは微塵もない。たっぷりしたシートは座り心地がとても良い。1890㎜という幅にだけ気をつけながら、ボルボXC90の最上級グレードのような透明なセレクターをDに入れ、さっそく会場を後にして箱根へとステアリングを切った。

170cmのドライバーのドライビングポジションでできる後席スペースは広い。トランクの容量は奥行きも十分で大きい。床板をトノカバーに固定するというアイデアは秀逸。

走り始めた瞬間に思う、これは静かで滑らかでしかも速い……。それは、世の中に星の数ほどもある他メーカーのSUVと比較しても間違えなくトップクラス、というか最上位のポジションの快適さではないか!

若干GTTI(ジーティーと読む)のコントロールプロの235/50 R19 のタイヤから固さとロードノイズがあるが、それさえも白い雪に覆われた富士山を見ながら走っていると徐々に気にならなくなってきてしまう。それほど自動車の基本的な性能が抑えられていて滑らかで静か、なのである。

SEALION 6に標準装備されるGTTI(ジーティー)の性能は未知数。

御殿場の市街を抜け箱根の山坂道に行っても好印象はそのままである。1500㏄の4気筒に電動モーターと18.3kWhのバッテリーが搭載されたPHEVなので、基本的にはEV状態のままの走行が続くのがBYDの「スーパーハイブリッド」たるところで、197馬力のモーターのパワーは余裕綽綽で不足感はまるでない。

大きくアクセルを踏むとアクセルペダルに「カチン」とちょと抵抗があり、そこから先まで踏むとエンジンを(強制的に)かけることができる。その場合エンジンによる発電がおこなわれた状態、つまり日産のeパワー走行状態となるわけだが、シーライオン6の場合、高速走行時にはエンジン直結状態となり、ガソリンエンジンパワーの100馬力ほどを足して走行することができる。

シーライオン6のDM-iハイブリッドシステムは第4世代で、第1世代は2008年まで遡る。

つまり計算上は197と100を足した297馬力に近い性能になるはずだが、それよりなにより効率が良くなることは想像に難くない。この直結機能は実に正しいと思う。どうして日産が、速攻でこういう制御にしないのか不思議でならない。

燃費に関してもBYDの発表によれば60リットルの燃料タンクを持ちながら、航続距離は(電気走行分を含めて)1200キロほども走れるとのことで、今回は正確な燃費は計測できなかったが20km/l以上は余裕で走れるということなのであろう。今回のFWDで1940㎏(後日追加予定の4輪駆動モデルは2100㎏の予定)という車重を考えると実に優秀である。

左側に内燃エンジン、右側に電動モーターユニットが収まるエンジンルーム。

残念ながら2時間足らずの試乗では日本初導入の”電気を主役にしたハイブリッド技術”である「DM-i」の特徴を生かした走行を体感することはできなかったが、箱根のワインディングロードを含めたすべての工程を電気駆動のみで走り切った。その中で新鮮だったのは長くない坂道の下りで回生ブレーキだけで確実に充電されたことだ。まさにこのあたりがスーパーハイブリッドということか。

「シーライオン6」のシャシー。内燃機と電動モーターは並列して組み込まれ、DM-i専用に開発された「PHEV専用ブレードバッテリー」はシャシーセンターの低い位置に配置されている。
Photo:BYD

ハンドリング、ブレーキングの制御、コントロールのチューニングが絶妙なので、それらがすべて乗り心地の良さにつながっている。BYDスタッフによれば「ガラスとタイヤ以外は全部自社で賄えます」とのことで、特に大得意分野のバッテリーは主バッテリーも補器用のバッテリーもLFP(リン酸鉄バッテリー)で劣化が少なく、補器類のバッテリーも交換不要であるという。

結局この日の試乗中にはタイヤに起因すると思われる若干の乗り心地の固さとロードノイズ以外にハードウエアに関しての不満点は見いだせなかった。そればかりか4輪の空気圧と温度(F1か!?)を常に表示する機能や、障害物までの距離を測定し数字で表示するクリアランスソナーなどあまり見かけない装備も装備されている。少なくともオプションで稼ごうとかそういう魂胆のかけらさえもない、フル装備モノグレードの展開も感心するばかりである。

着座位置も適切で運転しやすいのがシーライオン6の特徴。

そして再び思う。今乗っているシーライオン6はこの状態で398万円なのだ。同じようPHEVのモデルを日本のメーカー内で選ぶ場合の3分の2程度、ヨーロッパのメーカーと比較すれば半額のようなプライスであり、もはや万歳である(前述のタイヤのネガは10万円ちょっと投資すれば解決する)。

テクニカルデータ

BYD SEALION 6(FWD)BYD SEALION 6(AWD)
全長/全幅/全高(mm)4,775/ 1,890/1,6704,775/ 1,890/1,670
トレッド 前/後(mm)1,630/1,6301,630/1,630
ホイールベース(mm)2,7652,765
トランク容量(L)425425
車両重量(kg)1,9402,100
サスペンション(F/R)マクファーソンストラット/マルチリンク後日発表
ブレーキ(F/R)ベンチレーテッドディスク/ディスク後日発表
タイヤサイズ235/50 R19235/50 R19
パワーバッテリー容量(kWh)18.318.3
モーター定格出力(kW)60後日発表
モーター最高出力(kW)145270
最大トルク(Nm)300550
エンジン(型式)BYD472QA後日発表
排気量(L)1,4981,500
最大出力(kW/rpm)72/6,00096
最大トルク(Nm/rpm)122/4,000-4,500220
燃料/タンク容量(L)レギュラーガソリン/60レギュラーガソリン/60
最小回転半径(m)5.55後日発表
0-100km(秒)8.55.9
EV走行換算距離(km)100後日発表
WLTCモード(Wh/km)153後日発表
市街地モード(Wh/km)129.5後日発表
郊外モード(Wh/km)138.3後日発表
高速道路モード(Wh/km)173.7後日発表
ハイブリッド燃料消費率 WLTCモード(km/L)22.4後日発表
市街地モード(km/L)26.4後日発表
郊外モード(km/L)22.8後日発表
高速道路モード(km/L)20.8後日発表

だが、いうまでもなく、自動車という不思議な魅力を持つ商品は、ハードウエアの優越だけで選ばれるものではない。ブランドイメージや論評や風評やリセールバリューや生産国などなどの数多くのファクターが複雑に絡み合い、感情で選ばれるもの、それが自動車である。そんなことを勘案すると残念ながら、シーライオン6が我が国において爆発的にヒットする可能性は少ない……。

ヘッドライトユニットの中に見える水滴状の点々は水滴をイメージしてデザインされている。

といった感想を試乗後にえらそうにBYDのスタッフ(電装関係、特にサスペンションに関しては、圧倒的な匠の日本人スタッフ)に伝えていると「BYDの工場に行ってこのシーライオン6の製造工程を見て来たのですが、サスペンションアームをはじめ完全に日本仕様なんです。ブラックのアルミホイールもオリジナルになっていますし、右の位置になっているウインカーレバーもそうですが、とにかく日本仕様への対応が半端じゃありません。だからこの国でも売れてほしいですね」そんな話になった。そして彼は「中国のスタッフはとにかくいい人ばかりで優しいんです。私たちの要求を真摯に受け止めすぐにフィードバックしてくれますし」と付け加えた。

そんな匠の彼が情熱をもって改良個所を本国に伝えたところ、すぐに対応してくれたというマイナーチェンジされたBYD SEAL(シール)にその後、1時間ほどチョイ乗りさせていただいたのだが、昨年のこの時期に乗ったシールとは格段に違う上質な乗り味であった。

サスペンションがチューニングされて「BYD SEAL」は素晴らしいハンドリングのスポーツセダンに進化した。

販売台数の少なさにもかかわらず(今まで日本で販売されたBYDはすべての車種を合わせて7000台だという)速いスピード感と真摯な対応、それが未来へとつながる正しい技術と対応であることは言うまでもない。

バンパー下には立派なディフューザーが見える。

個人的には来年登場する軽自動車のラッコがBYDの日本における立ち位置の今後を左右するのではないか、そんなラッコへの試乗がとても楽しみになるようなシール6と、BYDのお話しであった。

Text:大林晃平
Photo:アウトビルトジャパン