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ガチンコ勝負 アウディS3対ホンダ シビック タイプR対メルセデスAMG A35 比較テスト 勝者は?

2021年1月7日

改良されたホンダ シビック タイプR ドイツ製高性能コンパクトスポーツセダンと直接対決

果たしてシビック タイプRは運動性能の面で、ドイツの強敵ライバル車、S3やA35より勝っているだろうか?アウディS3、ホンダ シビック タイプR、メルセデスAMG A35は、それぞれ2リッターターボで300馬力を発揮する。しかしその性格は、3台のモデルそれぞれに根本的に異なっている。我々の比較テストが明らかにする。

レッドブルは翼を与えてくれる?

そうかもしれない。
しかし、ホンダ シビック タイプRと比較すると、オーストリアのエナジードリンクは、せいぜい美味しい自然水のような爽快さに過ぎない。
日本製コンパクトスポーツカーは、その巨大なリアウイングの下に、320もの強力な馬力を秘め備えている。
さらに、今回のフェイスリフトではそのドライビングダイナミクスも、より洗練されて戻ってきた。
果たして、メルセデスAMG A35やアウディS3スポーツバックを凌駕するほどのパフォーマンスを発揮するだろうか。

レーストラック用ロケット。タイプRは本格的なレーストラックツールで、乗り心地はそれほど重要視されていない。

フェイスリフトされたタイプRのフォーカスはスポーツだ

日本のファンマシン(楽しいマシン)に乗り込むことに勝るものはない。
今回のフェイスリフトにもかかわらず、インテリアはドイツのライバルほどモダンには見えない。
しかしそれは大した問題ではなく、我々はともかく早くドライブしてみたい。
S3とA35が一般的に7速デュアルクラッチでのみ利用可能なのに対し、タイプRは常にファーストクラスの6速マニュアルトランスミッションを提供してくれる。
クールでかっこいいアルミ製のシフトレバーは、シャープなレスポンスを備えたステアリングホイールと見事にコラボしつつ、正確にシフトアップとダウンを繰り返す。
そして、「レブマッチ(RevMatch)」と呼ばれる独創的な機能がある。
タイプRはシフトダウン時に、プロレーサーたちの慣れ親しんだ中間のスロットルを与え、回転を絶妙に合わせる。
エンジンサウンドはクールで楽しい。
だが、もちろんその機能をオフにすることもできるようにもなっている。
我々は唸りを挙げるタイプRとともにレーストラックのコース上を疾走する。
タイプRの2リッターはクールな高いサウンドとともに、常に回転数を上げたままでいたいと思わせるほど軽快な走りを見せる。

エンジンは滑らかなにレブアップし、4000rpm時からはシューという吸気音とともに、地平線に向かって嵐のように猛烈なダッシュする。
今回のテスト車3台中、唯一の前輪駆動車にもかかわらず、弱点はほとんど見られず、最高速度はアウディやメルセデスの250km/hに対して、タイプRは270km/hにまで加速する。
言うまでもなく、タイプRはコーナリングエキスパートだ。
厚みのあるアルカンターラで覆われたステアリングホイールはタイトに感じられ、競合車たちよりもわずかにパワーは劣るものの、コース上に常にきれいなレーシングラインを描く。
非常に剛性の高いシャシーとフラットな20インチホイールは、アンダーステアを防ぐために最大限の努力をし、ホットなシビックはタイトなカーブでもレースカーのように食らい付き、ボディはほとんどアウト側に振られることがない。
重量は1,425kgで、ドイツの全輪駆動のアスリートよりも200kg近く軽い。
その結果: 1分36秒10でポールポジションを獲得。

オールラウンダー。アウディは、S3にあらゆる種類のラグジュアリーを装備している上に、パワフルな2リッターエンジンも搭載している。

乗り心地の良さが際立つアウディS3

タイプRよりもほぼ1秒遅れで、新型アウディS3がフィニッシュラインを通過する。
しかしそのギャップは、アウディにとっては、「ラグジュアリーさ」というカテゴリーほど重要ではない。
そして、その「ラグジュアリーさ」は確かにS3に豊富に備わっている。
高速S3に欠けている快適さはほとんどなく、少なくとも追加料金さえ払えば、提供されない電子デバイスのアシスタンスシステムはほとんど存在しない。
レーストラックでは、そのパワフルな2リッターエンジンが特に印象的だった。
このエンジンは、いつどこでも十分なパワーを発揮し、S3を0から18.1秒で時速200キロまで推進させる一方、デュアルクラッチトランスミッションがほぼ完璧なパートナーとして機能する。
これに加えて、非常に優れた乗り心地も魅力のひとつだ。

数え切れないほどの電子的なコントロールオプションにもかかわらず、アウディではRモードでのシビックのように、ラディカルでスポーティなセッティングを見つけることはできない。
S3は時速206km/hで、今回のテストトラックとなった「コンチドローム(コンチネンタルタイヤの所有するサーキット)」での最速タイムを達成し、インテリジェントな負荷分散機能を備えた全輪駆動システムのおかげで、タイトコーナーを素早く抜け出すことができたが、ラップタイムはタイプRに約1秒遅れの1分37秒07にとどまった。

他の2台を追う上でメルセデスに欠けているものとは?

メルセデスAMGも似たような状況だ。
当然のように、メルセデスAMGも素晴らしい豪華さと、使い勝手の良い快適さを備えているものの、ラップタイムを追い求めるには、最後の決め手に欠ける。
トラックペースとドラッグレース機能を備えたフル電子制御のメルセデスAMG製コンパクトスポーツのステアリングホイールの右側にあるダイヤルを介して、「スムーズ」、「インディビジュアル」、「コンフォート」、「スポーツ」、「スポーツ+」のドライビングモード間でいくら切り替えても役に立たない。
AMG35が黒と白のチェッカーフラッグを受けるのは、S3よりもさらに約1秒遅い、1分37秒92だ。
これは、A35がミッドレンジで少しパンチを欠いていることと、デュアルクラッチトランスミッションがいつも正しいギアをすぐに見つけられるわけではないこと、そして1,620キロの重さに起因している。
そしてその上にお金の問題がある。

今回テストに供されたAMGコンパクトスポーツモデルには、すべてのオプションを加えて、50,000ユーロ(約635万円)という価格設定になっている。
320馬力のレーシーなシビックが、実際には37,579ユーロ(約477万円)から利用可能であることを考えれば、タイプRがとても魅力的に感じるのも自然なことだと言えよう。

第3位 400満点中280点: メルセデスAMG A35
概ね、S3と非常に似ているが、ここ一番という時のキックに欠ける。その上、高価だ。
価格:47,432ユーロ(約602万円)から。

第2位 400点満点中283点: ホンダ シビック タイプR
トラック上でこれ以上楽しいクルマはない。その代償として快適さが損なわれている。価格は非常にフェア(公正)なものと言えよう。
価格: 37,579ユーロ(約477万円)から。

第1位 400点満点中285点: アウディS3スポーツバック
かなり上品で、しかもかなり速い。本物のレーサーではないが、非常に用途が広い。価格: 46,303ユーロ(約588万円)から。

結論:
デコボコしたカントリーロードでの走行や、日常的な使用には、今回の3台のホットハッチのうちのどれも運転したいとは思わないかもしれないが、レーストラックでは、運転してみたいという衝動を抑えるのは容易ではないだろう。
その一方で、コンパクトスポーツカーにもかかわらず、この3台には多種多様なキャラクターや装備や独自のテイストが備わっている。
S3の豪華さとパフォーマンス、タイプRのレース感覚、またはA35のようなパワーとプレステージ。
3台のモデル間のポイント差がわずかなことからも明らかなように、この三者三様の戦いでは、最終的には個々人のテイスト(好み)が決め手となる。

実はこのテストを最初に見た時に、「これはきっとシビック タイプRがドイツ車2台を押さえて一位になるに違いない」と妙に決めつけて読み始めたものだった。
というのも、シビック タイプRは現在まで多くの人々から賞賛され、高い評価を得ており、ホンダの最高傑作FFハンドリングモデル、という評価さえ与えている人もいるほどだ。
だからこそ、きっとシビックタイプRが圧倒的に他の2台を超えて、一位になるのだろう…。と思っていたら、一位はアウディS3だった。
理由はオールマイティーに優秀、特に一般道でも快適とのことで、その面でタイプRは劣っているとの評価を得てしまったのだった。たしかに以前のタイプRと比べれば今度のモデルは格段に快適にはなっているものの、それでもかなりの辛口で、状況によっては普通の使用で痩せガマンになることもないではない。
だから一般の使い勝手を考慮すればアウディS3勝利、という評価は間違ってはいないし、むしろ全方位的に考えれば一種の亜流ともいえるタイプRよりもずっと優れた自動車がS3だろう。
だけど……。個人的にはシビック タイプRがドイツ勢を押さえて一位を取ってくれることを期待していた理由として、これほどの走り一本勝負の内燃機関FFはこれが最後かも、という気持ちが強いからでもある。もうこんな硬派で熱く固いFFハッチバックがこれからの世の中に生まれてくるのかどうか怪しい雲行きになってしまってきた。だからこそ、EVだ、プラグインハイブリッドだ、といった話題ばかりの世の中に、シビック タイプRのような車がまだあと少しは残ってくれていることがちょっと嬉しいのである。

Text: Gerald Czajka, Henning Klipp
加筆:大林晃平
Photo: Sven Krieger / AUTO BILD