【テスト】新型VWゴルフR ゴルフのトップモデルの実力と評価は?
2021年1月1日
ゴルフ史上最強のゴルフRには今までのゴルフにはなかったモードが備わっている!その実力を初試乗テストでチェック。
新しいゴルフRで走り出すと、まずは「コンフォートモード」の素晴らしさに驚かされる。VWの優れたデュアルクラッチトランスミッション「DSG」は、地下駐車場の傾斜で始動した場合でもマナー良くシフトし、違和感を与えない。そして、デュアルクラッチのダウンシフトなしで、アクセルペダルを踏み込むことで、420Nmの最大トルクを有効に伝達する。3,700ユーロ(約46万円)のアクラポビッチ製チタンエグゾーストシステムからは、フル加速時でもエンジンサウンドはキャビン内には入ってこないため、すべての速度においてのRはかなりリラックスして操作できる。「スポーツモード」は以前とほとんど変わらないが、「レースモード」では、全輪駆動のゴルフの感覚が、文字通りタイトに変身することを感じ取れるようなセッティングになった。
Rはすでにノルトシュライフェでその実力を発揮している
エンジン音はスピーカーから人工的に聞こえてくるようになったが、アクセルペダルを踏んでエンジン回転数を3,000rpm以上に上げると、いくつかのサウンドが聞こえてくる。しかし、それだけではチタンエグゾーストシステムのためにお金を払う価値はない。ゴルフRの「レースモード」には、「ドリフトモード」のほかに高度にチューニングされた「スペシャルモード」も備わっており、そのドライビングプロファイルには、全輪駆動システムを含めてすべての主要な駆動パラメーターがニュルブルクリンク ノルトシュライフェに合わせてセッティングされている。
VWの開発エンジニアによれば、旧型Rよりも、20秒近く速い、7分51秒でノルトシュライフェを周回できるようになっているとのこと。残念ながら今日は試せないが、いつの日かノルトシュライフェで試す日を夢見て待とう。しかし、「ドリフトモード」は試すことができた。システムは「ドライビングスキルと閉鎖されたコースが推奨される」とドライバーに警告する。
「ドリフトモード」はゴルフRを新次元のドライビングの楽しさに導く
広いランオフゾーンを持つ我々のテストコースは、このトリックを実行するのにはもってこいの場所だ。「ドリフトモード」ではDSGの7つのギアはドライバーが自ら変更する必要があるが、これは優れた操作性のために大型化されたシフトパドルによって、うまく操ることができる。フルスロットルに達する前にブースト圧力が上昇するのに数秒かかるが、応答性は極めて高い。そのフルスロットル時のパワーとトラクションは、非常に印象的なものだ。カーブで勇気を失いさえしなければ、Rは軽快にリアエンドを振り回す。そして、それは理屈抜きに楽しい。決してトヨタのスープラのようにドリフトのスペシャリストにはなれないものの、ドリフトができるようになったゴルフRは、新たな次元のドライビングプレジャーを獲得した。
テクニカルデータ: VWゴルフR
● エンジン: 4気筒、ターボ、フロント横置き ● 排気量: 1984cc ● 最高出力: 320PS ● 最大トルク: 420Nm@2100~5350rpm ● 駆動方式: 全輪駆動、7速DSGデュアルクラッチトランスミッション ● 全長×全幅×全高: 4290×1789×1458mm • ホイールベース: 2828mm ● 乾燥重量: 1551kg ● 0-100km/h加速: 4.7秒 ● 最高速度: 250km/h(パフォーマンスパッケージ=270km/h) ● 燃費: 12.8km/ℓ ● CO2排出量: 177g/ℓ ● 価格: 48,018ユーロ(約609万円)、パフォーマンスパッケージはプラス2,208ユーロ(約28万円)
結論:
「パフォーマンスパッケージ」の320馬力ゴルフRは間違いなく先代モデルよりも楽しい。しかし、その楽しさのためには、5万ユーロ(約635万円)以上のコストがかかることを覚悟しなければならない。
AUTO BILDテストスコア: 2
ゴルフRというのはなんとも特別な存在で、言ってみればゴルフのラインナップの中の頂点であり、一言でいえば「てんこ盛り」高性能バージョンである。全輪駆動、高性能エンジン、シートなど手のかかった内装、といった装備を持ち、ざっと600万円から700万円というプライスタグを掲げるが、いつの時代にもゴルフRを熱望するエンスージャストも多く、中古車になっても価格はあまり下がらない、そういうゴルフである。フォルクスワーゲン ゴルフ8になって、もちろんゴルフRが再び登場したわけだが、新型に装備された「ドリフトモード」が今回の話題といえよう。
個人的にエンターテインメントとしてこういうモードがあることに決して反対はしないし、ローンチコントロールモードだって、アメリカ車に備わっていたタイアバーンモード(タイアをわざと空回りさせて、あたためるというもの)だって、無駄と言えば無駄、公道で使うべきものでないことは明らかである。ゴルフRのドリフトモードも同じことで、そういうこともできますよ、でも使うのは公道ではなく、サーキットや一部の場所だけですよ、という、そういうオマケである。だがそういう特別なものが備わっているということも、ゴルフRのような超高性能バージョンでは大切な価値なのではないだろうか。
まあもとのゴルフRの出来が良いから、こういう余技も輝くわけで、クルマそのものがヘロヘロであれば、こんなドリフト誘発モードなんて愚の骨頂だろう。そういう意味でも大切なのは、もとのクルマの完成度なのだと思う。そういう意味ではゴルフRは間違いのない完成度を持つ一台だ。悪天候の高速道路でも、たまに持ち込んだサーキットでも、そしてもちろん日々の実用車としても文句なしの一台。オールマイティーな自動車というのは、こういうクルマのことを言うのである。
Text: Dennis Heinemann, Stefan Novitski
加筆:大林晃平
Photo: Olaf Itrich / AUTO BILD