祝ランボルギーニ チェントロスティーレ20周年
2025年10月29日
どんよりとした空からついに雨が降り出した。最初はポツリポツリだったが、やがて傘がないとつらいほどの降りになる。あいにく私は持っていなかった。行列を作って開場を待つ皆さんは辛抱強く待っている。それでも受付が始まる気配はない。係員からは、突然の雨のため会場の手直しをしているとの説明があったが、そぼ降る雨のなか、待つ身はつらい。10分ほど経っただろうか、ようやく受付が始まり、私は会場に入った。その瞬間、気分は一気に晴れた。目の前に飛び切り希少なランボルギーニがずらりと並んでいたのだ。
去る10月24日、東京・江東区の有明アーバンステージパークにて開催された「ランボルギーニ デイ ジャパン2025」には2つのテーマがあった。1つはフューオフモデル「ランボルギーニ フェノメノ」の日本デビュー。もう1つは開設20周年を迎えた同社チェントロスティーレに向けた記念行事だ。
フェノメノの解説は別稿に詳しいのでそちらをご覧いただくとして、本稿ではランボルギーニ チェントロスティーレが過去20年に生み出したフューオフモデルと、同チェントロを牽引するミィティア ボルケルト(Mitja Borkert)氏にスポットライトを当てたい。
間近に見たミィティア ボルケルト氏
ランボルギーニ チェントロスティーレ(Lamborghini Centro Stile)は2005年に稼働を始めた。現在、年齢層もバックグラウンドも様々な25名のスペシャリストが働いている。そのリーダーがデザイン担当重役を務めるミィティア ボルケルト氏だ。氏は現在の東ドイツに生まれた。1999年、ポルシェのデザインセンターに入社、パナメーラ スポーツツーリスモや987型ボクスターなどを手掛ける。2016年にポルシェからランボルギーニに移籍、フィリッポ ペリーニの後任としてスタイル担当重役の要職に就き現在にいたる。

ボルケルト氏は今、一番乗っているデザイナーの一人だろう。レヴエルトとテメラリオはどちらも今後のランボルギーニのスポーツカーラインを形成する重要なモデル。その2車のデザインを成功裏に完成させた。今日の主役であるフェノメノも彼のペンの先から生まれた秀作だ。多忙を極める当代一流のデザイナーだけに、私はちょっと近寄りがたい人物を想像していた。ところが間近で見る氏はこうした先入観とはまったくの反対で、笑顔をたたえて来場者サービスにこれ勤める姿が印象的だった。

ファンを大事にするデザイナー。その印象を確かにする場面に私は遭遇した。私はかねてから氏のサインに好感を抱いていたのだが、そのときまさに彼が来場者のリクエストに応えてサインをしているところだった。非常に真剣な顔で、サイン一つ入れるにも手を抜かない姿勢に胸を打たれた。


一堂に会した歴代フューオフモデル
会場にずらりと並んだ歴代フューオフモデル(Few Offs)もぜひ紹介したい。こうしたシーンを今後見たいと思えば、おそらくランボルギーニミュージアムを訪れるほかないと思われる、貴重な機会だからだ。






「レヴエルト、テメラリオ、フェノメノ。どれも紛う方なきランボルギーニですが、語る言語はそれぞれ異なります」。ランボルギーニのDNAに忠実でありながら、常にお客さまの予想を上回るデザインを提供することが私たちにとってのチャレンジなのです」。ボルケルト氏は公式リリースの中でこう語っている。次のランボルギーニは一体どのようなデザインで私たちを驚かせてくれるのだろうか。私はそんな期待を胸に会場を後にした。
Text&Photo:相原俊樹

