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「フェラーリ SC40」F40の精神を現代に継ぐ、唯一無二のベルリネッタ

2025年10月27日

マラネッロから新たなワンオフ・フェラーリが登場した。その名は「SC40」。ベースは296 GTBでありながら、その姿かたちは完全に独自。フェラーリ・スタイリング・センターのフラビオ・マンツォーニ率いるチームが、ひとりのオーナーのためだけに作り上げた“究極のオーダーメイド・フェラーリ”である。

デザイン:F40へのオマージュと現代的彫刻美

名称の「40」は、1987年に登場した伝説のスーパーカー「F40」への敬意を表している。しかしSC40は、決してそのコピーではない。F40の鋭く直線的な造形言語を踏襲しながらも、曲面を巧みに織り交ぜ、現代フェラーリらしい有機的な流れを纏っている。

デザインテーマは「インダストリアル・プレシジョン」。構成は幾何学的かつ彫刻的で、筋肉質なボリュームと緊張感に満ちた面構成が際立つ。

ロングノーズにショートテールという理想的なプロポーション。その後端には、ボディと一体化した固定式リアウイングが鎮座する。特別に調合された“SC40ホワイト”に塗られたこの翼は、エンジンカバーから垂直に立ち上がり、ブラックの分割ラインによってリアフェイシアの黒とのコントラストを生み出す。メカニカルな内部構造を透かして見せるメッシュパネルやスモーク処理されたLexan®製ルーバーが、マシンとしての官能を引き立てる。

ディテール:F40譲りの素材感と機能美

側面では、インタークーラー用の吸気口が新解釈のNACAダクトとして存在感を放つ。カーボンプレートが三角形にアクセントを描き、ボディ全体を貫く垂直ラインがまるで楽譜のようにデザインのリズムを生む。

フロントはワイドなエアインテークと四角いブレーキ冷却口が印象的。ヘッドライトは外端に配置され、DRL(デイタイムランニングライト)が精密機械のような表情を作り出す。

インテリアでは、F40を想起させるケブラー素材が随所に採用されている。カーボン・ケブラーは新たに再設計され、フットウェルやシート背面、ステアリングホイール、ラゲッジスペースなどに使用。内装はチャコール・アルカンターラとレッド・ジャカード織ファブリックの組み合わせで、クラシックとモダンを高次元で融合している。

パフォーマンス:V6ハイブリッドの新たな解釈

SC40は「296 GTB」のテクニカルアーキテクチャを継承する。ミドシップに搭載される120度V6ツインターボ+電動モーターのハイブリッドユニットは、最高出力830cv、最大トルク740Nmを発生。0-100km/h加速はわずか2.9秒、最高速度は330km/h超。8速F1 DCTと電制デバイス群(eSSC, eDiff, FDE2.0, ABS Evoなど)がその性能を精密に制御する。

乾燥重量は1550kg。前後重量配分は41.5:58.5。パワーウェイトレシオは1.87kg/cvという驚異的数値を誇る。SC40は単なるデザインスタディではなく、完全な走行性能を備えたリアル・スーパースポーツなのである。

ワンオフという哲学

フェラーリの「スペシャル プロジェクト」は、顧客とデザイナーが約2年をかけて二人三脚で仕上げる唯一無二のプログラムだ。SC40も例外ではなく、クライアントの理念とフェラーリの美学が一点で交わることで誕生した。そのスタイリングモデルがマラネッロのフェラーリ・ミュージアムに展示される。

テクニカルデータ
エンジン形式:V6 120° ツインターボ+電動モーター
総排気量:2,992cc
システム最高出力:830cv
最大トルク:740Nm / 6,250rpm
トランスミッション:8速F1 DCT
0–100km/h:2.9秒
最高速度:330km/h超
乾燥重量:1,550kg
全長×全幅×全高:4,700×1,975×1,198mm

このSC40は、単なる“オマージュ”ではない。F40が象徴した「純粋で妥協なきスポーツスピリット」を、ハイブリッド時代の文脈で再定義した存在だ。マラネッロのデザインとテクノロジーが融合した、この唯一無二の一台は、まさにフェラーリの未来を映す鏡である。

Text:アウトビルトジャパン
Photo:Ferarri Japan