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【このクルマなんぼ?】ポルシェ944人気急上昇中! クラシック911より944のほうが価値がある?

2020年12月27日

今やネオクラシックの仲間入り ポルシェ944 その動力性能とユーズドカーの価格をチェック

944が911の代替モデルとしてお買い得な理由。クラシックポルシェの中でも、ますます注目を集めている944。価格面だけでなく、トランスアクスルモデルは本当に911の代りとなりうるモデルと言えるだろうか。チェック!

ポルシェといえば、911が真っ先に思い浮かぶ。
多くの人にとって、ポルシェと言えば911、911と言えばポルシェだ。
しかし、興味があって、最近中古車価格が下がってきたとは言え、一般の人々にとってはまだまだ高価格なクラシック911をウェブサイトとかで検索していると、ポルシェ944に遭遇することが、ままある。
その先代モデルであるポルシェ924ほどスポーティでもなければ、後継モデルのポルシェ968ほど高価でも精巧でもないものの、ポルシェ944はリーズナブルで魅力があり、多くのポルシェファンを魅了する身近な存在だ。

今日では、多くのポルシェファンが924と同様に、944に興味を示し、探し始めている。
924とは対照的に、ポルシェ944には、ポルシェ純正エンジンが搭載され、フォルクスワーゲングループからの目に見えるエクストラ装備品やパーツの類いも、年月をかけて徐々に置き換えられていった。

シャシーはクラス独自のもの

ツッフェンハウゼン生まれにもかかわらず、不幸にもポルシェファンからはそれほど多くの愛情を受けることのなかったトランスアクスルを備えた944だが、ともかく生産販売は1995年まで続き、40万台以上が新しいオーナーを見つけた。
しかし、ポルシェ944が本物のスポーツカーであることは、ほんの数キロ走っただけで実感できる。
特に初期のモデルでは、エンジンパワーこそソコソコだったが、944のシャシーは他のモデルとは一線を画したものだった。
さらに、リアアクスル上のドライブトレーン、タンク、トランスミッションによる、ほぼバランスのとれた重量配分に加え、ドライブの影響を受けないニュートラルなステアリング、そして非常にフラットなシートポジションが兼ね備わっている。
開閉(フリップアップ)式のヘッドライトとドーム型のガラス製テールゲートが特に印象的なそのデザインは、ポルシェ944が1980年代生まれの自動車であることを明確に示している。

1995年までに、40万台以上売れたポルシェ944。

特に人気があるのは944 Sだ

ポルシェ944の4気筒エンジンは、より大型のポルシェ928に搭載されていたV型8気筒を形成していた2つのバンクの1つから派生したものだ。
1985年から使用可能になった触媒コンバーターにより、エンジン出力は163馬力から150馬力に低下した。
1987/88年には、それぞれ160馬力と165馬力へとわずかに出力がアップしたが、これは排気量を2.7リッターに拡大したことで実現したものだった。
944のラインアップの中でも、特にファンに人気があったのはポルシェ944 Sバージョンで、当時最新の4バルブテクノロジーのおかげで、2.5リッターから190馬力という俊敏な出力を得て、最高時速370km/hまで加速することができた。
しかし、生産開始から2年後、944 Sははるかに高価で精巧な944 IIに取って代わられた。
排気量が3.0リッターに増加したことで、211馬力へと大幅にパワーアップするとともに、フロントエンドが変更されたことで、かつてのポルシェ924のナローフェイスを1990年代に復活させ人気を得た。
ターボチャージャーを搭載した944は、内部名称が「951」となっており、当初は220馬力、その後250馬力を発揮した。

Photo: Roman Raetzke
1988年以降のターボモデル(タイプ951)には220馬力から250馬力の最高出力が備わっていた。

装備の整った211馬力944なら30,000ユーロ(約380万円)くらいする

ポルシェ944にはクーペ、コンバーチブル、タルガモデルがある。
しかし、実際のタルガモデルは、当時のポルシェ911のGモデル(964)とは異なり、ルーフを全幅に開いたり、取り外したりすることができないため、見せかけのモデルだった。
ポルシェは、マーケティングツールとして、911をオマージュした「タルガ」という言葉を使ったのだが、商業的には大した成功は得られなかったのは、944タルガが単に電動で開閉可能な大型サンルーフを搭載したモデルだったからだ。
今日に至るまで、944コンバーチブルは、デザインの面で純粋主義者の人々からは敬遠されている。
そのため、クラシックカー市場ではクーペの方が人気はあるものの、特に設備の整ったカブリオレを探し求めているファンもいることもまた事実だ。
価格の面では、整備の行き届いたポルシェ944は、ちゃんとした履歴を備えたものであれば、15,000ユーロ(約190万円)程度から市場に出回っている。
装備が充実している190馬力や211馬力の944は、あっという間に30,000ユーロ(約380万円)以上になってしまう。
しかし、人気はまだまだ高まりつつあるので、今が買い時だとも言える。

価格の面では、ちゃんとした履歴を持つ整備の行き届いたポルシェ944は、約15,000ユーロ(約190万円)というリーズナブルな価格から市場に出回っている。

正直言って、とてもリーズナブルな価格だ。
日本の中古車ウェブサイトを確認したら、944はすべて応談となっている。
ポルシェのクオリティなら、ドイツで購入して日本に持ってくるというアイデアも悪ないな、という誘惑にかられる。

ポルシェ944も登場してから40年が経過するのか…。少しも古さを感じさせないデザインを見ながら感慨深く思った。私はその頃まだ免許を持っていなかったし(免許取得の年齢に達していなかった)、毎日自動車専門誌を愛読しながら、出たばっかりの944を眺めているだけの生活だった。
本当にそれから40年が経過しても、944は時代遅れになることもなく、格好だって悪くないのに、911ほどには高値安定物件ではない。もう何回も言われてきた通り、FRのポルシェというだけで人気がないのか、ポルシェらしくない形(つまり911に似ていない、ということ)が原因なのかはわからないが、日本でもお買い得の価格で売られているのを環八や目黒通り近辺で見かけることは普通であった。そしていつの間にか944そのものを見かけることが希になってしまっている。
そんな944が今価格向上中、というニュースは決して悪い話ではなく、40年を経過して正当に評価される時代がやっとやってきた、という気持ちにもなるし、ヴァイザッハのエンジニアたちの努力もやっと報われる時代になったと考えると、なんだか嬉しい。なぜならばFRポルシェは、自動車の正常進化ともいえるし、ポルシェのエンジニアだって944や928の販売が大成功していれば、そのままFRポルシェを進化させ、開発継続していたのではないだろうか。
944や928や968を今所有すると、それなりに苦労することは確かかもしれないが、911だけがクラシックポルシェではない、そんな当たり前のことを今回の記事は教えてくれたようにも思える。

ポルシェ944「グローブトロッター号」。オーストリア人、ゲルハルト・プラットナーはこの944で世界中を駆け巡った。

Text: Stefan Grundhoff
加筆:大林晃平
Photos: Porsche AG