【動画付き】これほしいかもー 父子のロマン 超気持ち良さげな木製モーターホーム
2020年12月15日
魅惑の1台 ウッドメイドモーターホーム
MAN(エム アー エヌ。マンとも称す) TGE: ローリングログキャビンとして177HPを備えた全輪駆動トランスポーター。このキャンピングカーのアイデアは実に明快だ。木造の家があるのだから、キャンピングカーも木造あり? そういうことなのだ! フィリンゲンシュヴェニンゲンの父と息子は、このアイデアをMAN TGEで実現させた。文句なしに共鳴できるアイデアだ。
ドイツ西部の小都市、フィリンゲンシュヴェニンゲン(Villingen-Schwenningen)では、伝統が育まれている。
木製の鳩時計など、ここは優れた木工の技術を持つ職人たちがいることで有名で、住民は自分たちの地域の職人技に誇りを持っている。
そしてこの地域では木材貿易が重要な役割を果たしている。
この地域の硬い植物は昔から建築材料として使われてきており、燃料としては使われてこなかった。
フィリンゲンシュヴェニンゲンに住み暮らす父子、オリバーとその父ステファン オッフェンバーガーは、車輪の上に木材でできたモーターホームを作り上げた。
この木製のモバイルのためのアイデアは、従来のキャンピングカーでの旅行で、プラスチック素材に含まれていた軟化剤の蒸発によって、たびたび頭痛に悩まされていた、オリバーは次のように言う。
「そのことが決定的な要因でした。私は持続可能性と健康を望んでいた」と、コンピューター科学者であり、エンジニアでもあるオリバーは説明している。
祖父譲りの名大工の父親が、彼のこのアイデアを同じように素晴らしいと思ったことによって、プロジェクトは実現化していく。
地域の木材のみを使用
そして、計画はすぐにスタートし、作業は始まった。
まずはルールに従って、鉛筆とノコギリを使って、車輪上の「木造の小屋」を作るための図面が描かれ、モデルが作られた。
木の雰囲気は、四輪のサウナや山小屋のような狭いものには見えず、本当にリラックスできる広々としたものにしたいと考えていた。
二人は、材料として地域の木種のみを採用した。
異なる素材の組み合わせは、インテリアに特別で繊細なタッチを与えている。
床はアルダー(欧州などに生息するカバノキ科ハンノキ属の広葉樹)材で作られ、家具は木目の関係でブナ材を使用、そして個々の部品はポプラ材で作られている。
これにより、高貴な香りはもちろんのこと、多彩なインテリアが生まれた。
実用的な棚や、しっかりと閉まる引き出しも随所に見られる。
「大工仲間も喜んで一緒にやってくれました」と、ステファンさんは微笑む。
可動式パーティション(間仕切り)はドアとして機能する
出来上がったエクステリアやキャビンの隅々の触れるたびに、このプロの感触と陶酔を感じることができる。
どこを触っても、すべてがしっかりとしていて、完璧にフィットしている。
しかし、木製のキャンパーバンの製作は挫折なくスムーズに進んだわけではなかった。
一度は木製のキャビネットを引き裂いてもとの状態に戻さなければならなかった。
「それは大工さんの目に涙をもたらしそうになりました」とステファンさんは述回する。
最適なスペース利用率と、シャワーをどのように統合するか、あるいは関連する木製ドアを含めて可能な限り省スペースであるようにするにはどうすべきかといったアイデアの数々に、ステファンさんの職人としての知識が役立った。
可動式パーティション(間仕切り)がドアとして機能し、多くの従来のモバイルホームよりも広々とした、キッチンを除く、トイレ、浴室、洗面室など、衛生エリアの拡大が可能になった。
完璧主義のアレマン(ライン川北部のバーバリアのゲルマン民族)的な傾向は、アプリで制御できるアンビエント照明から、フラットスクリーン、超最新のサウンドシステムに至るまで、モーターホームに設置された超最新技術にも顕著に表れている。
父と息子は材料を最も過酷なテストにかける
せっかくの美しい居住空間も、屋根から雨が漏れてしまっては意味がない。
だから、二人は、キャンピングカーの仕上げに徹底的に拘った。
そのためには、ボートや自動車がお手本となった。
外皮はボートウッドで作られており、7つの層で構成されている。
塗料は自動車業界で使われているもの、コーティングはボート用のものを採用した。
「これは実際、これらのコーティングの相互作用をテストするための最も複雑な作業の一つでした。私たちは最適な組み合わせで機能することを確認するため、非常に長い時間をかけて何度もテストしました」と、オリバー オッフェンバーガーは回想する。
その耐候テストには本当に時間がかかった。
父と息子は何度も何度も、何ヶ月も森の中に建てた小屋に籠り、延べ4年(!!)もの間、最も過酷なテストを繰り返した。
天候に加えて、船体は強力な蒸気ジェットによる熱、紫外線、衝撃処理にも耐えなければならなかったからだ。
しかし彼らの努力にはそれだけの価値があった。
この偉業への代償は軽量化だった。
モーターホームの乾燥重量は約3.7トン、許容総重量は4.5トンとなった。
適切な可動式足回りはMANで見つけ、177馬力のディーゼルエと切り替え可能な四輪駆動のMAN TGE 4トランスポーターをウッドハウスの下に詰め込んだ。
この自然派モーターホームへの反響は大きかった。
スウェーデン、ノルウェー、湾岸諸国から関心を持つ業者が木造モーターホームを見にオッフェンバーガー父子のもとへ続々と訪れる。
「我々はコンセプトを維持した上で、彼らリクエストに応えたいと考えています」とオリバー氏は言う。
2021年5月までに、5台の車両が準備される予定で、1台の基本価格は約182,000ユーロ(約2,275万円)で、そのほかに特別な要求などはない。
車重は3.5トンにまで軽減された
次なる進化のステップはすでに計画されている。
木製モーターホームでより多くの人が移動できるようにするために、必要に応じて重量を3.5トンにすることだ。
これは、材料の節約によって実現される。
例えば、床の厚さは16ミリではなく8ミリになる。
「これによる品質の損失なし」、オリバー オッフェンバーガーは保証する。
これらのモデルは、約30,000ユーロ(約375万円)ほど安くなる。
米国からも最初となる興味をもった業者からコンタクトがあった。
しかし、ステファンは彼のガールフレンドから最大の賞賛を受けているらしい。
「今、彼女は私たちがこの車(最初に作った車)を販売することを恐れています」と、笑いながら教えてくれた。
これはなんともヨーロッパ的で良い話である。
その発端がプラスチック製品の素材から由来する体の不調、という点もさることながら、耐候テストなどに長い時間を費やし、細部の仕上げなども妥協せずに仕上げたという点がなんともいい感じではないか。
そのようにして仕上がった車は文字通りの「モバイルホーム」であり、自動車というよりもウッドキャビンのような感じである。アメリカらしさならばアルミ(ジュラルミン)製、あるいはバスのような大きさのヴィネベーゴのような素材を連想するが、こちらはなんともヨーロッパらしい。
日本のような湿度の高い場所だとキノコが生えちゃわないかと心配にもなるが、そういうところも十分に考慮済なのだと思う。4輪駆動であることも、自動車部分?のカラーも控えめで好感が持てる。価格は高いが別荘と思えば納得いく金額ではないだろうか。
Text: Stefan Grundhoff
加筆:大林晃平