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伝説の名を背負う、フェラーリ849 テスタロッサ誕生

2025年9月17日

フェラーリが送り出す最新作「849 Testarossa」は、ネーミングのノスタルジーを超えた純然たるハイパフォーマンスマシンだ。SF90に代わってラインナップされる。

最大のトピックは、その心臓部に搭載された新世代V8ユニット。排気量は3.9リッターながら、ツインターボと電動モーター3基を組み合わせ、システム最高出力は1,050馬力に到達。0-100km/h加速は2.3秒、最高速は330km/hだ。

赤いカムカバーを意味する「テスタロッサ」。エンジン単体では830馬力を誇る。
ボンネットから流れる空気はドア上部を通って黒く塗られたインテークへ導かれる。

トランスミッションは8速デュアルクラッチ。シフトスピードは過去最速レベルに研ぎ澄まされ、サーキット走行でも公道でも瞬時に駆動力を引き出す。駆動方式は後輪駆動を基本としつつ、電子制御ディファレンシャルと最新のトラクションマネジメントが加わり、極限の状況下でもドライバーの意思を裏切らない。

“顔”を連想させないフロントビュー。

シャシーはカーボンとアルミのハイブリッド構造。徹底した軽量化により、乾燥重量は1,570kgに抑えられた。前後重量配分は理想的な45:55。可変エアロとアクティブサスペンションの組み合わせにより、ダウンフォースと快適性を高次元で両立させている。

ブレーキはカーボンセラミック製。制動力は市販車最高峰で、サーキットラップを連続してもフェードを許さない。タイヤは専用開発の21インチ高性能ラジアルを装着し、路面を確実に捉える。

インテリアは機能一辺倒。デジタルメーターとHUDを中心に、ドライバーが必要とする情報のみを最適化して表示する。余計な装飾を排し、走りに徹する空間は、まさにレーシングカー直系だ。

ドライバーを中心にデザインされたコックピット。

サイズ一覧
・全長:4,718mm
・全幅:2,304mm
・全高:1,225mm
・重量 1,570kg

849 Testarossa Assetto Fiorano

標準仕様よりも動的性能と空力性能をさらに高めるトラック志向のオプション仕様。動きの鋭さ、ダウンフォース、軽量化などを中心に専用のチューニングがされている。

849 Testarossa Assetto Fiorano。スパイダーにもAssetto Fioranoは用意されている。

軽量化:約30kg の軽量化。主な内容として、カーボンファイバー/チタン部材の多用。アルカンタラ張りの軽量チューブラシートで約18kg削減。カーボン製20インチホイール採用でバネ下重量の削減。

空力強化 フロントに大型フリック(flicks)/アンダーフロアの渦発生装置(vortex generators)の追加。リアでは、ツインテール(標準)から“ツインウィング”と高迎角プロファイル/垂直エンドプレートを持つスポイラーへの変更。これによりリアのダウンフォースが標準より大幅に強化される。ドラック(空気抵抗)への影響を大きくしすぎずバランスを取る設計。

849 Testarossaは、単なるレトロリバイバルではない。フェラーリが持つ技術の粋を集め、スペックで世界を圧倒する“走りの象徴”である。伝説の名を現代に蘇らせたこのマシンは、再びフェラーリの血統を最前線へと導く存在となるだろう。

849 Testarossaと849 Testarossa Spider。
849 Testarossa849 Testarossa Spider
エンジン3.9L V8ツインターボ+電動モーター3.9L V8ツインターボ+電動モーター
システム総出力1,050馬力1,050馬力
最大トルク842Nm900Nm(推定)
0-100km/h加速2.3秒2.9秒
最高速度330km/h330km/h
トランスミッション8速F1DCT8速F1DCT
駆動方式後輪駆動(電子制御ディファレンシャル付)後輪駆動(電子制御ディファレンシャル付)
車両重量約1,570kg約1,660kg
前後重量配分45:5545:55
シャシーカーボン+アルミ複合カーボン+アルミ複合(補強付)
サスペンションアクティブ可変式Spider専用セッティング
ブレーキカーボンセラミックディスクカーボンセラミックディスク
タイヤ専用開発21インチ高性能ラジアル専用開発21インチ高性能ラジアル
ルーフ固定式カーボン製リトラクタブル(開閉約14秒)

歴代テスタロッサと849 Testarossa ― 伝説と革新の交差点

「Testarossa(赤いヘッド)」という名が初めて登場したのは70年前の1956年の「500 TR」に遡る。記憶に新しいのは1984年の「テスタロッサ(Testarossa)」水平対向12気筒をリアに積み、ワイドに張り出したボディと特徴的なサイドルーバーで、スーパーカー黄金期の象徴となった。最高出力390ps、最高速290km/hという数値は当時として驚異的であり、ランボルギーニやポルシェを相手に“公道最速”の座を争った存在だった。

左上から時計回りに250 Testa Rossa、330 TR、500 TR、500 TRC、512 M、512 S。

90年代に入ると512TR、さらにF512Mへと進化。空力と信頼性を改善しながら、最高出力は440psにまで到達した。だが排ガス規制や時代の流れもあり、フラット12の時代はやがて幕を閉じた。以降、テスタロッサの名は長らく歴史の中に眠ることになる。

1984年の「テスタロッサ(Testarossa)」から512TR、512Mへとフラット12の系譜が続いた。

その伝説が、40年近い時を経て「849 Testarossa」として蘇った。フラット12からV8+電動モーターへ。パワーは倍増し、1,050馬力へと進化。0-100km/h加速は2.3秒、最高速は330km/hという数値は、まさに別次元だ。かつてのテスタロッサが“時代のスーパーカー”だったのに対し、849は“未来のハイパーカー”と言えるだろう。

デザイン面では、往年を思わせる水平基調のリアエンドやワイドなスタンスが随所に盛り込まれている。単なる懐古ではなく、当時のエッセンスを現代のエアロダイナミクスに融合させることで、過去と未来を繋ぐ存在感を獲得したのだ。

250km/h時415kgものダウンフォースを発生。インテークはインタークーラー、ラジエーターへ最大限空気を導入する。

テスタロッサは1980年代の「夢」であり、849 Testarossaは2020年代の「現実」。伝説の名は今、再びフェラーリの最前線で息を吹き返した。

未来を切り拓く“赤い伝説”

849 TestarossaとSpiderは、単なる過去の名車の焼き直しではない。1980年代にスーパーカーの象徴となった「Testarossa」の精神を、現代最高峰の技術で再構築した存在だ。

クーペは精密機械のように研ぎ澄まされたパフォーマンスを誇り、Spiderは開放感と官能を極限まで高めた。どちらもスペックの高さだけでなく、ドライバーを中心に据えたフェラーリの哲学を体現している。

リアビューは往年のレーシングフェラーリを想起させる。

かつてのテスタロッサが“夢”だったように、849 Testarossaは“現実の夢”だ。数字だけでは測れない熱量と、ハンドルを握った瞬間に伝わる昂揚感。それこそがフェラーリが再びこの名を蘇らせた理由であり、次の世代に伝えるべきスーパーカーの本質なのだ。

Text:アウトビルトジャパン
Photo:Ferarri Japan