【このクルマなんぼ?】マツダRX-7 Ⅱカブリオレ
2020年12月12日
ドイツ人も愛するポルシェキラー
何故このジャパニーズポルシェキラーはこれほどまでに楽しいのだろうか。スポーティな第2世代マツダRX-7は、当時ポルシェとBMWに宣戦布告した。残念ながらあまり成功を勝ち得ることはできなかったが…。しかし、今日でも、この車は、多くの楽しみを提供してくれる。特にコンバーチブルとして。
1985年から1991年にかけて製造されたマツダRX-7の第2世代(シリーズRX-7 FC)は、ドイツでは長い間過小評価されてきたが、長い年月を経てその評価は逆転した。2代目マツダRX-7は、特に今回テストした200馬力ターボバージョンのコンバーチブルは、とても楽しいスポーツカーで、評価が上がったことも決して不思議ではない!
乗り込んで、電動ルーフをオープンにする。しかし、その操作はいくつかの面倒な過程を必要とするが、この複雑な構造のおかげで風切り音は聞こえなくなるほど低くなるのだ。
硬質プラスチックの90年代へようこそ
硬質プラスチックで覆われたコックピットはまさに1990年代初頭の車に典型的なものだ。コックピットの左右には、ワイパー、ハザードライト、オープニングヘッドライトなどのコントロールパネルがある。そこは今では見られなくなった、クラシックな装いで、とてもスッキリとした佇まいで、好感が持てる。タコメーターが中央に配置されていて良い雰囲気を演出している。
200馬力を発揮するスーパーチャージャー付きロータリーエンジン
その走りは、クルマ通や愛好家にとってはたまらないものだ。マツダのエンジニアは、2ローター ヴァンケルエンジン(内部コード13B)とツインスクロールターボチャージャーを装着した。 このヴァンケルエンジンを搭載したマツダRX-7は、オープンカーとして初のロータリーエンジンを搭載し200馬力を発生させた。乾燥重量は約1163kg(軽い!!)で、0から100km/hまで5秒で駆け抜け、最高速度は255km/hに達するため、ポルシェキラーと呼ばれるにふさわしいクルマだった。しかし、ロータリーエンジンとターボチャージャーを搭載しているため、燃料消費は多大なものがあった。
独立懸架式サスペンションとセミトレーリングアームマルチリンク式リアアクスル
ハンドルを握り、ワインディングカントリーロードを駆け抜けていくとRX-7は正確かつ軽快な走りを見せる。2代目RX-7のシャシーは、ニュルブルクリンクの北コース、通称緑の地獄、ノルトシュライフェでは大々的に、繰り返し、テストされたことで知られる。加えて、マツダのエンジニアは、リジッドリアアクスルの代わりに、リアサスペンションは独立懸架化され、剛性の高いセミトレーリングアームマルチリンク式リアアクスルを採用した。この設計の特徴は、縦方向と横方向のそれぞれにタイヤの角度に応じて変化に反応し、スポーツカーにさらなるダイナミクスと走行安全性をもたらしたことだ。
ロータリーエンジンは、低回転域ではじゃっかんパワー不足を感じるものの、4000回転を超えたあたりから、ターボチャージャーが本格的に働きだし、力強く走り出す。
5速マニュアルトランスミッションは、MX-5(ユーノス ロードスター)に受け継がれることになる、歯切れの良い優れたトランスミッションの遺伝子を備えており、その性能を遺憾なく発揮する。それは、当時の基準では非常にダイレクトなステアリングとマッチしている。従って、このクルマは曲がりくねったカントリーロードに適している。
クラシックデータによれば、マツダRX-7ターボカブリオレの現在の市場価値は、コンディション2で14,000ユーロ(約177万円)、コンディション3で8,600ユーロ(約109万円)となっている。
当時、この車を所有し、愛用していた女性を知っている。美人でスリムなその女性にはとっても似合っていたし、普通の屋根付きRX-7に乗るよりも、何倍も魅力的に見えた光景だった。残念ながら世の中では屋根付きのRX-7のほうが圧倒的に主流で、熱血漢のユーザーが熱く乗り、語り、そして今でもカルト的な人気を持っているのは普通のRX-7のほうである。いつの間にかカブリオレのほうはすっかり見かけなくなり、珍しいクルマの仲間入りをするようになってしまった。
髪の毛を乱さないようにするためのエアロボードや、BOSEのスピーカーなどなど、今のオープンモデルでは普通になった装備も、このRX-7カブリオレあたりが発祥のようにも思う。まなじり吊り上げて峠を走るのではなく、力を抜いてさらっと乗るためのロータリーエンジンのカブリオレ…。もうそんなクルマは今後出てこないだろうし、純粋なロータリーエンジンの駆動による自動車も出てこない可能性が高い。そう考えると、この一台はちょっと儚く思えるし、そんなネオクラシックな部分も魅了的な要素だ。
Text: Wolfgang Gomoll
加筆:大林晃平
Photo: Wolfgang Gomoll; press-form