ブガッティのコーチビルディング&パーソナライゼーションプログラム”ソリティア”によって産み出された唯一無二のワンオフモデル「ブガッティ ブルイヤール」
2025年9月18日

ブガッティ ブルイヤール(Bugatti Brouillard):ミストラルをベースに馬をモチーフにしたW16搭載の1台限りのモデル。この車は、現在のブガッティモデルの中から選りすぐりの要素を凝縮したモデルだ!
馬の名前を冠したブガッティ?所有する愛車の個性化への要望はますます高まっている。ブガッティの顧客も例外ではない。ブガッティの「量産車」はこれまで存在しなかった。それでも、そのさらに上を目指すことは可能だ。まさにその理由から、モルスハイムでは、コーチビルディング&パーソナライゼーションプログラム「ソリティア(Solitaire)」が誕生した。夢を現実にするオファーだ。最初のソリテールプロジェクトは「ブルイヤール(Brouillard)」と名付けられ、ブランドの物語をロマンチックに表現している。
約100年前に遡る。創業者エットーレ ブガッティは、才能あるエンジニアであるだけでなく、馬をこよなく愛する人物だった。彼の愛馬は「ブルイヤール」と名付けられ、これは「霧」を意味する。
この事実を知った熱心なブガッティの顧客が、約1年半前、チーフデザイナーのフランク ハイル率いるチームにアプローチした。彼は、「ブルイヤール」に敬意を表する唯一無二の車を希望していた。これにより、ソリティア プログラムの基礎が築かれた。

年間最大2台:ソリテールプロジェクトの生産能力
過去にもモルスハイムから注目を集める限定モデルがたびたび登場してきたが、最も有名な例は「ラ ヴォワチュール ノワール(La Voiture Noire)」だろう。しかし、こうした唯一無二のモデルに特化したプログラムを設けたことで、ブガッティはより具体的に計画を立てられるようになった。年間最大2台のソリティアプロジェクトの生産能力がある。そして、顧客はすでに列を成していると、チーフデザイナーのフランク ハイルが明かしている。
ベースはブガッティ ミストラル
これはひとえにブランドの伝統によるものだが、同時にブロイヤールの鮮烈なデビューの力も大きい。筆者自身、歴史的な建物に開設されたばかりのベルリンのデザインスタジオで、その姿を目にすることができた。ベースとなったのは99台限定のブガッティ・ミストラル。しかし完成したこの一台は、ロードスターとはほとんど似ても似つかない造形でありながら、間違いなくブガッティそのものだった。

現時点ではまだ走行不能なデザインモデルだが、一目でわかるように、カーボンボディは完全にリデザインされている。硬いラインやエッジは意図的に排除され、代わりに筋肉質な、ほぼ彫刻のようなラインが採用されている。特に後部のサイドパネルを見ると、その特徴が明確に表れている。「ミストラル」と「ブルイヤール」は、ヘッドライトとテールライトを除いて、ほぼすべてのコンポーネントが新開発だ。
デザインは「ベスト‐オブ」
さらに、現代の伝説的なブガッティの「ベスト‐オブ(Best-of」」を彷彿とさせる美しいディテールが加わっている。例えば、ルーフのアルミニウム製エアインテークは、今年20周年を迎える「ヴェイロン」を彷彿とさせ、乗員はルーフのガラスパネルを通してそのデザインを鑑賞できる。
ダックテールデザインのリヤウィングは、約1,000万ユーロ(約17億5千万円)でオークションにかけられた「シロン プロフィレ(Chiron Profilée)」をモチーフに設計され、広い馬蹄形のラジエーターグリルは「トゥールビヨン(Tourbillon)」に似ている。排気管(6本、そのうち2本はディフューザーに隠れている)は「シロン スーパースポーツ(Chiron Super Sport)」から借用され、「ブルイヤール」は同モデルと駆動系を共有している。

「ブルイヤール」は現時点ではオリジナルスケールのデザインモデルに過ぎないが、この唯一無二のモデルが極めて完成度が高いことは断言できる。フランク ハイル率いるチームは、「ロードスター ミストラル」を基に、細部まで丹念に作り込んだ独自のクーペへと変貌させた。「ミストラル」よりもコンパクトでスポーティな印象ながら、一定のエレガンスを漂わせている。
これが最終的な仕様だ
このプロジェクトに具体的なビジョンを持っていた顧客に対し、無限のデザインの可能性から最適な選択肢を提供するため、ブガッティのチームは4つの異なるカラーパレット(グレー、レッド、ブラウン、グリーン)を最終仕様の出発点として開発した。最終的に顧客は、サテン仕上げの「ティールグリーン」の外装色と、グリーンに染色されたカーボンファイバーを組み合わせた仕様を選択した。
ギアセレクターレバーの馬の頭
インテリアも同様に緑のテーマを継承し、さらに壮観だ。ステアリングホイールのグリップ部分を含むさまざまな要素にタータン生地が使用されるほか、馬のモチーフが複数採用されている。刺繍だけでなく、染色された本物の馬の毛がドアパネルや他の部分に組み込まれている。

しかしそれだけではない。ガラス製のギアセレクターレバーには、後にアルミニウム製で約2センチメートルの馬の頭が配置される予定だ。もちろん、これも「ブルイヤール」を模したデザインだ。エットーレ ブガッティの兄であるレンブラント ブガッティのモノグラムが刻まれた回転ノブが、細部までパーソナライズされたインテリアを完成させる。
W16 1600馬力
情熱的な顧客が、この唯一無二の車のインテリアに座り、1,600馬力の8リッターW16クアッドターボの音を堪能できるまでには、まだ少し時間がかかる。完成は2027年の予定だ。緑の「ブルイヤール」もまだショーカーの段階だ。

価格については非公開
プライバシー保護の観点から、ブガッティは限定モデルの価格を明かしていない。ただ、「ブルイヤール」は「ミストラル」の数倍の価格であると言われているだけで、「ミストラル」はドイツで、595万ユーロ(約10億4千万円)で販売されていた。少なくとも、「ブルイヤール」はヨーロッパに残り、個別認証により登録が可能となることは明らかになっている。
ブガッティは、次なるソリティア コーチビルド プロジェクトについて明言を避けている。だが筆者としては、ブロイヤールがシロンやミストラルで公式に幕引きとなったはずのW16プラットフォームを用いた最後の一台になるとはどうしても思えない。新しいV16ベースへの移行を前に、まだ何かがあるはずだ。いずれにしても、今後どのような唯一無二のブガッティ ソリティアが登場するのか、期待は高まるばかりだ。ひとつ確かなことを学んだ-ブガッティには常に「その先」がある、ということだ。
Text: Jan Götze and Katharina Berndt
Photo: Bugatti Automobiles S.A.S.