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2025年のプジョーとは?新型「プジョー 3008」はヒットの予感

2025年7月8日

プジョー 3008 Hybrid(Peugeot 3008 Hybrid):この度新開発されたSTLA-Mediumプラットフォームを使用した最初のモデルである「プジョー 3008」に早くも試乗することとなった。自ら次世代フラッグシップモデルと呼ぶプジョーの最新モデルの乗り心地とはいかに。

「おしゃれ!」21インチの「PEUGEOT Panoramic i-Cockpi」と呼ばれるパノラミックディスプレイの中心下部にはPeugeotの小さな文字と細いトリコロールカラーが描かれている。そう、これはステランティスが新しく開発し、今後同社のC及びDセグメントに拡大採用する新しいプラットフォームであるSTLA-Mediumを用いた第一段の最新プジョーなのである。

それにしても内装は素晴らしくスタイリッシュである。前述の21インチディスプレイは目前で浮いているかのようにフローティングマウントされ、その周囲には複雑な形状のドットパターンで華飾されたパネルとざっくりした布地が乗員を迎える。

今年の「コックピットデザイン大賞」と言っても過言ではないモダンなデザイン。ステアリングホイール上部の後ろにトリコロールが見えるのがわかるだろうか。

最近のプジョーの特徴でもあるセンターコンソールもスタイリッシュならば、エアコンの吹き出し口のデザインもすべてがスタイリッシュでデザインざれている。

僕のような「プラスチックの悪夢」と評された504や初期の505のダッシュボードを知っている古い人間には、もう自分がいかに垢抜けずダサい人間なのか、そこに座っているのが場違いなのか赤面してしまうほどお洒落で先進的な内装だ。そしてこの内装デザインこそ新型3008のもっとも魅力的な部分なのではないかと思う。

そんな内装デザインではあるが、いやらしく検証すればセンターコンソール部の熱線スイッチなどは押すと全体がびよーんと歪むし、アポロチョコほどの大きさのハザードスイッチはもう少し大きい方がわかりやすいだろう。

操作パネルの日本語化はいろいろと大変であったと想像する。デザイン上ハザードスイッチは邪魔だったのか?

「ドアを閉めてしまうと操作しにくいので」と、試乗前に親切なステランティスジャパンのスタッフが教えてくださったパワーシートの(特にランバーサポートスイッチ)はドアを閉めてしまうと本当に手が届きにくいし(その場合にはスクリーン上にコマンドを表示し、タッチスイッチで操作することはできる)、他のクルマと比較するとダントツで繊細で素晴らしくスタイリッシュな字体と、細部まできちんと翻訳された日本語で表示されるディスプレイは、見やすい反面どこになにが表示されているのか還暦ジジイには戸惑うことが多い。一番肝心のスピードディスプレイや時計、外気温などはもう少し大きくわかりやすく整理されてもよいのではないか。

フロントグリルと呼応するデザインのダッシュボードパネルとドア上部は8色から選べるアンビエントライト付き。調節できるサイドボルスターがついたフロントシートの座り心地はとても良い。

でも……そういう部分こそフランス(ヨーロッパ)らしさと魅力を感じるという人には、これはこれで悪くはない。かくいう僕はそういう人だから、その魅力は理解できるしプジョーのやりたいことはよくわかる。そして後述するなかなか挑戦的な値付けを考えれば、この内装はおおいに説得力のあるものといえる。

走りだしてみるとどこかで感じたことのある軽快で日本の路上では必要十分なパワーユニットのこの感じ……そう2週間ほど前に試乗した「アルファロメオ ジュニア」のあの感じにそっくりである。当たり前なことに今回の3008のハイブリッドモデルは「アルファロメオ ジュニア」と同一の(ということは「フィアット e600」とも同一の)1.2リッター3気筒ガソリンターボエンジンに電動モーター内蔵の6速デュアルクラッチ式トランスミッションを組合せた48Vマイルドハイブリッドシステムを搭載しているからで、モーターのアシストの感じも、どのモードに切り替えてもちょっと効きすぎの感じが強い回生も、まったく同じ感覚である。といってもそれは批判ではなく、いい意味で乗りやすく扱いやすく、どの領域でもジュニアに比べるとちょっと大柄な「3008」を過不足なく走らせる。

アルファロメオ ジュニアのインプレッション:https://autobild.jp/53422/

清潔感のある「オケナイトホワイト」はプジョー 3008にお似合い。

ちょっと大柄というのは4565㎜の全長や1665㎜の全高、1620㎏の車重はともかく車幅が1895㎜もあるからで、実際に試乗会場で実車を目の当たりにすると「3008」は抑揚の強いボディデザインと相まって存在感が実に強い。

長野県北アルプス連峰の槍ヶ岳の名を抱く「Yari」と名付けられた19インチホイールも(槍ヶ岳の鋭い山頂部をモチーフとしてデザインされたのだそうだ)スタイリッシュだし、サイドウインドーのモールが表に見えないように設計されたプジョー初のデザインと言われる部分も含め、とにかく最新モードを身にまとった「3008」は抜かりないデザインを持つSUVである。

ライオンの爪にひっかれたかのような3本線のLEDデイタイムランニングライト。シャープなデザインの19インチカラードホイール「Yari」。

さてそんな「3008」の売りの一つであるはずのSTLA-Mediumと呼ばれるプラットフォームがどうであったかというのは……正直私程度の人間には良いのか悪いのか、短時間の試乗では判断がつかなかった。というかそもそもプラットフォームのよし悪しの判断は、いくつかの同じプラットフォームを使った自動車に乗ってみないとわからないのではいかとも思うし、このプラットフォームがうんぬんかんぬん、と一般の人が言いながら自動車に乗ることなどあり得ないのではないか。

ブラックアウトされてCピラーは見えず、リアゲートと一体化しているリアクオーター部分。空力特性に貢献しているルーフスポイラー。

と言い訳をしておいてから乗り味やハンドリングなどの印象を記せば、とにかく横浜の限られた試乗時間内ではひたすら快適で、破綻をきたさず運転しやすく、荒れた路面でも十分以上に乗員に優しい乗り味でした、と言ってよい。

プジョーを評価するときによく用いられる「ネコ足」かどうかと聞かれると、正直そういうものじゃないと思うし、そもそも僕は「プジョー = ネコ足」というものがどういうものなのか、そしてそれが的確な表現なのか懐疑的ではある。

個人的にプジョーの足回りというのはどんな外乱でも安心して乗っていられる、きわめて許容量の大きいタフなものであって、びよーんと“キャット空中3回転”をこなすようなニャンコ先生的足回りがプジョーのサスペンションではないと思う。少なくとも昨今のプジョーはそういうソフトなものではないし、今回の「3008」も乾いたさっぱり感のある感覚が残っている。

垂直に切り立ったリアエンドが斬新。

アルファロメオ ジュニアの時も感じられたが、最近のステランティスの値付け設定は世界的な物価高騰やユーロの通貨などを考えれば大変戦略的で頑張っている価格に思われる。

この「3008」も装備が簡略化されるモデルであるアリュールが489万円、今回試乗した上級グレードのGTでも540万円(アルカンターラパッケージは558万円)である。もちろん500万円を超える自動車を安いと安直に表記することはできないが、最近の他社の自動車と比較してもこの価格はかなりの競争力を持っていると感じられる。なにより「3008」はスタイリッシュで乗る者を魅了する最新デザインを身にまとっている。

もはやディーゼルエンジンがないことだけはプジョーらしくなく残念だが(という感覚も古いのかな)、40度近い酷暑の横浜を容赦なく試乗して16~17km/lという燃費にも文句はない。

エンジンは下に落ち込んでいるかのように低くマウントされている。奥行きが長いトランクは4:2:4分割可倒式リアシートにより使い勝手が良さそうだ。

見ても乗ってもお洒落な自動車、内外装に魅了されて乗ってみても裏切られることのない内容を持っているし、特にアルファロメオ ジュニアとはまったく違う方向の演出を施された内装は大きな魅力である。

そんな魅力をさらに増するために、パッケージがヨーロッパ仕様の(つまり全部横文字の)ボルビックを、試乗車のドリンクホルダーにしっかりとセッティングしてくれていたステランティスのスタッフのきめ細かさには頭が下がる。(やるなぁ)。

群雄割拠のCセグメントSUVの中に投入された、お洒落な都市型SUVが新型「プジョー 3008」だ。

炎天下、大変良く効くエアコンと相まって運転して楽しく、上質な空間を味わわせてくれた「プジョー 3008」とてもありがたかったです。ありがとうございました。

Text:大林晃平
Photo:アウトビルトジャパン