【気になるウワサ】実際のところ、いちばん速く走れる車ってどれ?

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単純な最高速ではなく、実際に走ると何が一番なのか? その疑問はドイツのサーキット、ニュルブルクリンクが一つの基準になっている

ニュルブルクリンクをいかに速く走れるか…。それは各メーカーのエンジニアやテストチームをいつも悩ませている。サーキットではあるものの、あらゆる走行条件が試せる通称「緑の地獄」とまで呼ばれる20.823kmのコースを一番速く走れる車は?

ラグジュアリークラスセダン最速のメルセデスAMG GT 63 S 4 MATIC+(639馬力)のラップタイムは7分27秒800。
Photo: Daimler AG
アウディRS Q8が市販SUV最速の車だ。ニュルブルクリンク公式認定記録は7分42秒253
Photo: CAR PHOTO ASSEMBLY Audi RS Q8 / Audi AG
ポールスターが電気自動車を作り始めて以来、シアンレーシングはボルボのレーシングカーモデルのチューニングなどを担当している。Lynk & Co 03シアンコンセプトモデルは、ボンネット下に528馬力を発揮する2リッターターボガソリンエンジンを搭載したWTCCツーリングカーのストリートバージョンだ。この車で、7分20秒143*というラップタイムを記録、前輪駆動車としての最速周回記録を樹立した。
*ニュルブルクリンク公式認定記録
Photo: Lynk & Co
前輪駆動車の2位には、ルノー メガーヌ R.S. トロフィーRが入った。メガーヌ R.S. トロフィーをベースにした限定スペシャルモデルは、7分40秒100※を記録
*ニュルブルクリンク公式認定記録
Photo: RENAULT
マルコ エンゲルがメルセデスAMG GT R Proでノルトシュライフェを周回した際のラップタイムは7分04秒63だった。この結果、この車は9番目に速いロードカーとして同じAMGの兄弟モデルを抜いて、トップ10入りを果たした。
Photo: AUTO BILD Assembly Mercedes-AMG GT R Pro / Daimler AG
2018年10月25日、ポルシェのテストドライバー、ラース カーンが、ポルシェとマンタイ レーシングが製作した911 GT2 RS MRでノルトシュライフェを周回するのに要した時間はわずか6分40秒3*だった。
ポルシェは、このGT2 RS MRでニュルブルクリンクサーキット北コース上最速のロードカーとなった。
700馬力のGT2 RS MR(MRはManthey-Racingの略)には、チューナーのパフォーマンスキットが装着されていた。
全体的なセットアップは、緑の地獄(ニュル北コース)の特性に合わせて行われた。
*ニュルブルクリンク公式認定記録
Photo: Porsche AG/9pm media
2018年6月29日以来、ポルシェ919ハイブリッド エボはノルトシュライフェの王者であり続ける。
5分19秒55*!
この素晴らしいタイムで、ポルシェ919ハイブリッド エボに乗ったファクトリードライバーのティモ ベルンハルトは、ステファン ベロフの35年前の記録(6分11秒13分)を大幅に更新したのだった。
以降、伝説の「緑の地獄」、ノルトシュライフェでより速い記録を樹立した車は今日まで他にない。
919ハイブリッド エボはこれまでで最も速い車だ。
この記録を持つポルシェは、2015年から2017年にかけてル マン24時間耐久レースで3連覇したプロトタイプをさらに発展させたものだ。
さすがにルマンに出場したモデルの発展型ともなると、速さのレベルが違いすぎる。
*ニュルブルクリンク公式認定記録
Photo: Porsche
市販ロードカーの2位は、ランボルギーニ アヴェンタドールSVJで、ランボルギーニ自身の声明によれば、2018年7月に市販車としては記録的なタイム(6分44秒97)でノルトシュライフェを周回したとのこと。
数々の軽量化により、アヴェンタドールSVJは1.98kg/PSというパワーウェイトレシオを備えている。
そのアクティブなエアロダイナミクスにはエアロベクタリングが含まれている。
セットアップを全面的に見直し、オプションのピレリPゼロ トロフェオRタイヤを装着して記録を達成した。
Photo: Lamborghini
市販ロードカーの3位は、現在標準モデルのポルシェ911 GT2 RSが保持している。
6分47秒3というタイムでノルトシュライフェを周回している。
ポルシェによれば、ポルシェのテストドライバー、ラース カーンとレーシングドライバーのニック タンディは、ランボルギーニ ウラカン ペルフォルマンテの持つ6分52秒のラップタイムを5秒縮めた。
2人は6分50秒以下のラップタイムでノルトシュライフェを数周した。
ツッフェンハウゼンからの情報によれば、700馬力の911は、標準タイヤのミシュラン パイロット カップ2を履いて走行し、全長20.6kmのコースでの平均速度は184km/h前後だったという。
最近では、元F1レーサーのマーク ウェバーがGT2 RSでノルトシュライフェに挑戦したという。彼自身の声明によれば、最長のストレートでは336km/hの速度を記録したという。これはGT2 RSがランボルギーニ ウラカン ペルフォルマンテよりも32km/h速いことを意味する。
Photo: Car Photo assembly 911 GT2 RS / Porsche AG
ポルシェ911 GT2 RS に抜かれて、4位となってしまったランボルギーニ ウラカン ペルフォルマンテは、2016年10月に6分52秒を記録して4位となっている。
Photo: Automobili Lamborghini
第5位のポルシェ911 GT3 RSは、伝説のノルトシュライフェのベストリストに2018年4月にランクイン。520馬力を発揮し、ランキングではポルシェ918スパイダーに代わり、わずか6分56分でコースを完走した。
これにより、911 GT3 RSは、7分未満でコースを完走した7台目のストリートリーガルスポーツカーとなり、この項目では4台目のポルシェとなる。
Photo: Porsche
ポルシェ918スパイダーが6分57秒台で6位を確保。マクラーレンP1やフェラーリ ラフェラーリなどの直接のライバルがニュルブルクリンクサーキット北コース上でタイムトライを実施していないこともあって、ハイブリッドのアスリートは長い間無敵だった。
Photo: Werk
7位に入ったのはもう1台のイタリア製闘牛で、6分59秒73は、今でもノルトシュライフェにおける市販車としては優れて速いタイムと認識されている。2015年5月18日、マルコ マペリが操るランボルギーニ アヴェンタドール750-4 スーパーヴェローチェは、6.5リッターV型12気筒ミッドエンジンから750馬力を発揮し、ノルトシュライフェを爆走した。
Photo: Ronald Sassen
第8位は唯一の米国車のダッジ バイパーACRだ。7分1秒3というタイムで、レーシングアイコンは神話となる7分の壁をわずか1秒のところで破ることが、できなかった。
しかし、バイパーは2017年9月1日に2つの他の関連する記録を樹立した。それは米国製ロードカーとしての最速タイムとマニュアルスポーツカーとしてのトップタイムだ。
Photo: Werk
7分4秒63というラップタイムは、メルセデスAMG GT R Proがストリートカーの永遠のベストリストの9位に入ったことを意味する。これによって、7分10秒92でラップを終えた兄弟車のメルセデスAMG GT Rをトップ10から押し出すことになった。
Photo: Daimler AG
第10位は日本からの伝説のスーパースポーツカー、ニッサンGT-Rニスモだ。シリーズ生産モデル「ゴジラ」の550馬力は、2013年9月30日に7分8秒679というラップタイムを記録。ハンドルを握ったのは2011年のGT1世界チャンピオン、ミハエル クルムだ。
Photo: Werk
最速の電動レーサー。2019年6月、VWはID.Rでノルトシュライフェでの電気自動車の新記録を樹立した。ヴォルフスブルクからの680馬力の電動レーサーは、6分5秒*で、厳しく難しいコースを走破した。その平均速度は時速206.95kmという驚異的なものだった。
*ニュルブルクリンク公式認定記録
Photo: Volkswagen AG
中国の電気自動車メーカー、「NextEV」が、1360馬力のスーパースポーツカー「Nio EP9」で記録した6分45秒90というノルトシュライフェラップタイムも、高く評価された。これにより、形だけではなく、ちゃん速く走るクルマであるということが証明されたのだ。
Photo: NIO
ちょっと面白い最高記録。
最速のチーム。メーカーによれば、この記録は1台のポルシェではなく、積んだトレーラーを牽引した状態でニュルブルクリンクでの特別記録を樹立した。
ポルシェ パナメーラ スポーツツーリスモ ターボは、モエテフィント社のトレーラーを装着して12分06秒でラップを完了した(十分に速い)。
トレーラーには魅力的なオールディーズトラクター「ポルシェ ジュニア」が搭載されていた。
ハンドルを握っていたのは、2011年のル マンで総合1位を獲得した「ドイツ最速の3兄弟」の一人、レーシングドライバーのパトリック シモンだった。
Photo: Porsche
最速のリムジン。Lynk & Co 03 Cyan Conceptは、7分20秒*で 「最速リムジン」の称号を獲得した。このスウェーデン車は、シアンレーシングがWTCCで使用しているツーリングカーのストリートバージョンと言っても過言ではない。
*ニュルブルクリンク公式認定記録
Photo: Lynk & Co
リムジン(4ドアセダン)2位には、ジャガーXE SVプロジェクト8が入った。300台限定のXEの特別仕様車で、5リッターV8馬力から発揮される600馬力によって7分21秒23*を記録した。
*ニュルブルクリンク公式認定記録
Photo: Automedia
510馬力の強力なアルファロメオ ジュリアQVは7分32秒で3位。M3を抑えたことに、アルフィスタは溜飲を下げたことだろう。
Photo: Thomas Starck
4位にはBMW M3 CSが7分39秒で続く。もう少し速いかなと思っていただけに、ちょっと残念。
Photo: BMW Group
ボルボV60ポールスターは、ノルトシュライフェを7分51秒で周回し、5位を確保した。
Photo: Toni Bader
スバルWRX STI タイプRA NBRスペシャルはセダンでありながら、その過激なコンバージョンのためにランク外に落ちてしまう。ラリーエンジンとアクティブエアロダイナミクスを搭載したこの車は、ノルトシュライフェを6分57秒で駆け抜けた。
Photo: Subaru
ニュルブルクリンク上で最速のSUVはアウディRS Q8だ。2019年9月13日、ワークスドライバーのフランク スティップラーが7分42秒253分*でノルトシュライフェを制覇した。重さを考えれば十分以上速い。
*ニュルブルクリンク公式認定記録
Photo: Audi AG
2番目に速いSUVは、メルセデスAMG GLC 63 S 4MATIC+で、ラップタイムは7分49秒369*だった。
*ニュルブルクリンク公式認定記録
Photo: Daimler AG
アルファロメオ ステルビオ クアドリフォリオで、レーシングドライバーのファビオ フランチャが7分57秒というラップタイムを達成した。これにより、イタリア製SUVは、旧型ポルシェ カイエン ターボS(92A)よりも2秒速くニュルブルクリンクサーキット北コースを走破したことになる。
Photo: Fiat Chrysler Automobiles
最速の前輪駆動車。ニュルブルクリンクコースレコードを争う前輪駆動車もある。ノルトシュライフェの前輪駆動車の王者は、7分20秒*を記録したLynk & Co 03 シアン コンセプトだ。
*ニュルブルクリンク公式認定記録
Photo: Lynk & Co
Lynk & Co 03 シアン コンセプトの後ろには、7分40秒*のルノー メガーヌR.S.トロフィーRが着く。メガーヌR.S.トロフィーよりも130kgも軽量化されたメジャーヌR.S.トロフィーR。これを実現するために、開発者はシャシーとエアロダイナミクスを作り直した。エンジンは変わらず300馬力の1.8リッターターボガソリンエンジンを搭載している。
*ニュルブルクリンク公式認定記録
Photo: RENAULT
2017年4月、シビック タイプRが7分43秒08でノルトシュライフェを周回した。
シビック タイプRは先代のタイムを7秒も上回ったと、メーカーは当時語った。成功の鍵は、10馬力の向上、エアロダイナミクスの改善、ブレーキ時の安定性を高めるための新しいマルチリンクリアアクスルの採用だった。
安全性を考慮して、記録挑戦のためのシリーズ仕様のプロトタイプにはロールケージが装着された。これはボディの剛性には何の影響もなく、重量が増えるだけだった。それを補うために、インフォテインメントシステムとリアシートが一時的に取り外された。
Photo: Honda

ホンダのオンボードカメラによる映像はYouTube動画でどうぞ。

4位はVWゴルフGTIクラブスポーツSだ。2016年12月、レーシングドライバーのベンジャミン ロイヒターがハンドルを握ってノルトシュライフェを7分47秒19で走破したが、VWによれば、当時の他の前輪駆動車よりも速かったとのことだ。
Photo: VW
Photo: YouTube/Nordschleife Video
タイムは未確認。パガーニ フヤーラBCはニュルブルクリンクでも筋肉を鍛えていたが、確認されたラップタイムは存在しない。大音量のV12の轟音、レールの上を走るような乗り心地、そして何よりもパワフルなスピードで、イタリアのスーパースポーツマンはテストドライブで「緑の地獄」を駆け抜けた。6.0リッターAMGツインターボから800馬力、1000Nmのトルク、シーケンシャル7速トランスミッション、アクティブディファレンシャル、後輪駆動という仕様だった。
パガーニのタイムは不明だが、ちゃんと走ればおそらく7分は楽に切れるだろう。
Photo: Werk
コルベットZ06(C7パッケージ搭載)について、2つの噂が流れている。2015年7月に7分08秒678と、その6ヵ月前の1月の6分59秒13という、寓話的なラップタイムを樹立したという噂だ。それらのラップタイムは検証されていない。
Photo: Werk

いつもこういう数字の記録合戦を見ていると、いったいいつが限界なのだろう、と思ってしまう。
陸上競技などでも世界最高記録や、国内最速記録というものがあるが、それがいったどこまでで打ち止めで、それ以上は人間の肉体的限界、と言えるのか、という思いを抱いてしまうのである。
クルマだって物理の上に成立しているのだから、必ずどこかでそれを超えることができない限界、がやってくる。それがニュルブルクリンクサーキットの場合、いったいどれくらいなのか。今回の記録を見る限り、市販車のスポーツモデルなどには7分の壁、というのが存在し、そこから先に進むことはものすごくリスクの多い、厳しい挑戦であることがわかる。
そしてニュルブルクリンクサーキットでの記録挑戦の場合、自動車だけの性能だけではなく、それを操るドライバーのテクニックも必須であることは言うまでもないだろう。

いずれにしろ根性一発でなんとかなる世界では絶対になく、多くのスタッフが理論的かつ情熱的に組み上げた世界、それがこういう記録に結び付く。そしてそのことは自動車の開発と進化のためには必要な過程であるともいえよう。

加筆:大林晃平