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【新車情報】レストモッドで蘇るフェラーリ308GTS

2020年11月21日

レストモッド可能なフェラーリ?

 世界中で流行中のRestMod(レストモッド)。レストアするだけではなく、現代的なテクノロジーを投入したりパワーアップしたりというカスタムを加えるものだ。イタリアの「アウトモビリ・マッジョーレ」が手掛ける「308M」は、フェラーリ308 GTSiのレストモッド版である。

 多くの海外テレビシリーズや映画で活躍した元祖8気筒フェラーリ「308」シリーズ。
 この美しいフェラーリをデザインしたのは、当時カロッツェリア・ピニンファリーナに在籍したレジェンド、レオナルド・フィオラヴァンティ氏。スーパーカー世代なら知らぬものは居ない265GT4/BBや512BBをデザインした「あの方」だ。
 当時は12気筒ではないという理由から、スモールフェラーリと呼ばれたが、セールス的にも成功し328、288GTO、F40へとつながっていくV8フェラーリ伝説を作り上げた。そのはじまりが308である。
 そんな308も、他のビンテージモデルに比べれば手が届きやすいというものの、それでもやはりフェラーリである。果たしてレストモッドなどが許されるのだろうかという心配もよそに、フェラーリの地元、イタリア人のジャンルカ・マッジオーレ氏がこの仕事をやってのけてくれた。
 フェラーリの総本山マラネッロの人々やファンたちがどう思うかは別として、彼の現代的な解釈は、きっと創始者エンツォ・フェラーリを喜ばせたことだろう。

スープアップされた心臓

 ベース車両となったフェラーリ308 GTSi Quattrovalvole(クアトロヴァルヴォレ=一気筒あたり4バルブの意味)のエンジンは、ネジの一本に至るまですべてレストア&リビルトされたものだが、排気量は後継モデルの328と同じ3.2リッターにボアアップ。さらに新しい鍛造ピストンと相まってノーマルの240馬力を大きく上回る、300馬力までパワーアップされている。
 ジャンルカ・マッジオーレ氏いわく、日常での使用、特に低速域での扱いやすさとよりスムーズな走行性能を実現するためのモデファイとのこと。


 ちなみにシャシーは基本オリジナルを保っているが、フロントのトレッドが50mm、リアが100mmとわずかながらワイドなものになっている。
 これらのモデファイに加え、調整可能な同軸スプリングを備えたコニ製レーシングショックアブソーバーによって、より柔軟性のあるロードホールディングを実現しているはずだ。
 パワーアップに伴い、ブレーキシステムも280mmディスクのブレンボ製4ピストンシステムに変更されている。

近代的なModを受けたエクステリア

 308最大の魅力であるクラシックなラインを失わないよう、ウィンドウやドア、ベンチレーショングリルは、オリジナルのものが残された。
 ボンネットはカーボンファイバー製に改められ、フロント周りもリトラクタブルライトを排し、LED化され現代風になっている。
 フェンダーも広がり、新しいカーボンファイバー製のフロントスカートが装着されている。これにより、フロントはよりアグレッシブになり、かのフェラーリ288GTOを彷彿とさせるものとなっている。
 リアも新しくなったディフューザーをはじめ、LEDになったテールランプのエッジングなど、いたるところにカーボンファイバーが使用されている。テールエンドには80年代チックなリアスポイラーも装着されている。

内装は質感の高そうなレザー、大理石のシフトノブとデルタ シグマのサウンドシステムで構成されている。

ビンテージテイストあふれるインテリア

 カーボンファイバーはドアパネルにも採用されているが、内装はオリジナルの雰囲気を守っている。
 フェラーリのもう一つのアイコンである黒いシフトノブに対し、308Mでは、同じ形でありながら大理石製になっている。これはアウトモビリ・マッジオーレの地元が大理石の生産地であることが理由だ。
 室内エンターテインメントには、デルタ・シグマ(Delta Sigma)社製のサウンドシステムが採用されている。ヘッドアップディスプレイシステムも、生産化までには実装される見込みだ。
 重量はかさんでしまうが、シートには雰囲気の良いマハラム社のオールドレザーを使用。ただし、インテリア全体は、オーダー時に顧客の希望に合わせてカスタマイズするのが基本だとのこと。
 ちなみにこれらのデザインと素材の選定を担当するのは、ドイツ人のステファン・ショルテン氏(Stefan Scholten)だ。

気になる価格は…。

 ジャンルカ・マッジオーレ氏によるとこの308Mは約50万ユーロ(約6,250万円)になる予定。
なんといっても、レストモッドにかかる時間はおよそ半年とのことなので、それなりの忍耐力も必要となる。

サイドビューは拡大されたホイールを除けばオリジナルに極めて近い

 最近ではリバティウォークからもレストモッド308が登場しているが、各国でレストモッドの素材として308シリーズが注目を集めている。比較的台数が多いのと、なんといってもエンツォ・フェラーリ存命時、かつピニンファリーナの流麗なデザインを持つこのシリーズは高い人気を誇る。

 その意味ではできるだけ外観イメージを崩さないように努めたであろうこの308Mは、おとなしいモデファイに属するだろう。
 以前ご紹介した、ボルボP1800やアルファロメオ・ジュニアのEVもそうだが、魅力的なエクステリアやサイズ感をもつ旧車のレストモッドが、これからもどんどん広まっていくかもしれない。

Text: Bernd Schweickard
加筆:大林晃平
Photo: Automobili Maggiore