【このクルマなんぼ?】20年経ったベンツのSL 500 その状態と評価は? そして価格は?

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メルセデス SL 500(R230): チェック、錆、テクノロジー、エンジン、購入

SL 500(R230)の中古車としての性能と信頼性は? 多くの人にとって、メルセデスSLは20年くらい経ってからでないと手が出ない。R230系は今、次期クラシックなのか、それとも底なしの落とし穴なのか?我々は20年経ったメルセデスSLを検分実証する。

多くの人にとって、メルセデスの神話は大文字のSとLに大きく影響されている。
しかし、SLはその名前(「スーパーライト」)のように単純なものではなかった。
ガルウィングドアを備えた初代SLでさえ、高い維持費を払える人のための車だったのだ。
その状況は後継モデルが出てくるたびに改善されていき、現行の第7世代のSLに至るまで、各世代のSLモデルは技術とデザインのパイオニアとして、その時代その時代に輝いていた。
これはSLの6代目にも当てはまる。

当初は電動油圧ブレーキシステムがトラブルの原因に

2001年秋から2011年末までに製造された2シーターのSL(R230)は、欧州初の電気油圧式スーパーブレーキSBCを搭載した車だった。
利点: 短い制動距離、坂道での自動停止などの追加機能、高い快適性。
欠点: 電気油圧式スーパーブレーキSBCは最初の頃は確実に機能していなかった。そのため、場合によっては油圧ポンプの故障で十分なブレーキ圧が供給されず、制動距離がかなり長くなってしまった。
2004年5月と2005年4月の2回のリコールで電気油圧式スーパーブレーキSBCの問題は解決したが、この部分の故障は修理以降のモデルでも再発する可能性もあるので注意が必要となる。
またスチールスプリングと油圧シリンダーを組み合わせたアクティブサスペンションABC(SL 500に標準装備)もR230には用意された。
それは非の打ちどころのない快適性と卓越した走行安定性を実現しているが、こちらも信頼性にはやや問題があり、このような部分のトラブル発生の場合にはクルマそのもの価格よりも修理費用が高くなってしまうこともありうる。

コックピットの眺め: 典型的な現代的なインテリアデザインを備えた2000年代の最高級インテリアだ。ただし、一部のプラスチックはチープに見える。特に今や細身のステアリングホイールとナビシステムなどは骨董品のよう。ただし各部分のプラスチックの厚さなどは現行モデルよりもはるかに厚く上質。なおエアコンなどもトラブル発生の可能性が高いので注意が必要だ。

245馬力の基本的なSL 350がお勧め

SLではどのエンジンを選択すればいいのか?
388馬力の5.5リッターV8(2006年から)が最も調和のとれた動力源であり、最も経済的なのは、V6と245馬力の基本的なSL 350だ。
SL 350であれば、12,000ユーロ(約150万円)から入手可能だ。
2006年から導入されたモデル、SL 500は約20,000ユーロ(約250万円)から市場に出回っている。
しかし、この価格であっても、言うまでもなく非常に重要なことは、過去の履歴がちゃんと備わっていることが重要で、そのサービスやメンテナンスを確認することなく、掘り出し物だからと言って拙速に購入に走らないことが肝要だ。
500のほうが350よりも当然メンテナンス費用や燃費などのコストはかさむし、維持にはお金がかかる。
またクルマ全体のバランスも350のほうが良いという声も多いし、実際に普段の使用には350で十分といえる。
だが、価格にひかれての衝動的な購入は、深刻な修理によって、購入価格を簡単に上回ることにもつながりかねない可能性がある。

バリオルーフ。もし何の問題もなく正常に作動するならば、16秒で開閉する(もちろん故障する場合も多く、その場合には多額の修理費用をかくごすること)。正常に閉じていても、調整次第では運転時の風切り音に注意。
2011年末までに製造された2シーターのSL(R230)は、ヨーロッパで初めてボッシュ製SBC(Sensotronic Brake Control)システムを搭載した車だった。このシステムは、しかし一部の車両で不具合が生じたため、2004年5月、メルセデスはR230シリーズの全SLをリコールして工場に戻した。修理したクルマでもトラブル再発するケースも多い。
換気、ヒーティング、マッサージ機能を兼ね備えたシートが高評価を得た。シートに関しては現在のメルセデスベンツよりもはるかにコストがかかっており快適。
エンジン: 388馬力(2006年から)の5.5リッターV8が最もパワーもあり魅了的ではあるが経済的なのは、V6と245馬力の基本的なSL 350だ。
バッテリー : 2004年11月までは、発電機レギュレーターとバッテリー制御ユニットに不具合があり、バッテリーから放電していた。電気系統はこの時代のメルセデスベンツのウイークポイントといえる。
腐食: ドアやトランクの縫い目や、アンダーボディにサビが発生することがある(写真)。しかし、ダメージは決して劇的なものではない。
ABCシャシー: サスペンションストラットと欠陥のある油圧ポンプからのリークは、要チェック項目だ。

結論:
20.000ユーロ(約250万円)未満で、修理履歴なしで、ちゃんとメンテナンスをされた、オリジナルのSL 500(R230)は良い買い物だ。
ただし維持費に関しては必ず最初から覚悟して、その分のお金を準備しておくことが必要とされる。車輛価格が安いからと言って気軽に買うと痛い目に合う可能性が高い。

数年前に、このR230の前のモデルである、R129の500 SLを中古車、ではなく大古車として購入したことがある。それはヤナセのステッカーが誇らしく貼られた500 SLの最初期モデルで、走行性能もそこそこ優れていて、全体的な程度も抜群に良かったが、それでも数々のトラブルは発生したし、お決まりの部分の劣化にともなうメンテナンスや、予想もしなかった突然の出費に負けて、2年ほどで手放さざるを得なかった。

R129ご自慢の油圧作動の幌が動かなくなった時には(ヤナセ経由で正規で直すと)、100万円コースだったし、燃料系のトラブル、電気系統のちょっとした不具合などなどに見舞われた。もちろんメルセデスベンツの利点として、こういうネオクラシックの車のパーツに関してもきちんと供給され、日本でもその恩恵を受けることはできるのだが、その一つ一つが驚くほど高価で(それは当たり前のことであり、責めているわけではない)、ちょっと旧いメルセデスベンツをきちんと整備して乗ることのハードルの高さを痛感したものだ。

今回のR230はR129よりもはるかに複雑怪奇なエレクトロニクスデバイスを持ち、その部分の整備が大変なことは容易に想像がつく。もちろんメルセデスベンツSLは魅力的な一台だ。だが安いからと言って迂闊に手を出すと、維持ができずに(私のように)手放さざるを得ない事態になってしまうのでご注意されたい。最初の車種価格が高い自動車は、当然のことながら維持費もそれなりに必要なのである。

Text: Lars bus man
加筆:大林晃平
Photo: Thomas Ruddies / AUTO BILD