1. ホーム
  2. スポーツカー
  3. 【試乗レポート】これぞ本物のGTIだ! VWゴルフ8 GTIクラブスポーツに初試乗

【試乗レポート】これぞ本物のGTIだ! VWゴルフ8 GTIクラブスポーツに初試乗

2020年11月16日

これが本当のGTIの姿だ

スムーズでパワフルな300馬力のエンジン。シャープなルックス。GTIのデビューからさほど待つこともなく、VWは新たに「クラブスポーツ」なるバージョンを発表した。我々は、本来のGTIともいえる性能を持つこのモデルを徹底試乗した。

 現行のゴルフGTIは基本的には何も非難されるようなものはない。
速く、そしてクリーンにドライブでき、そのパワーユニットは先代モデルの性能を上回っている。すべてが正常進化といえる。あえて言うならエモーショナルな部分が少々欠けていると言えるのかもしれない、サウンドこそ際立つものがあるが、たとえば、さほどこの車に興味のない人にとっては、GTIが特別であることを前後につけられたレタリング以外からは感じることができないだろう。
 しかし、このクルマを見てほしい。
 あなたが本当にパフォーマンスGTIとディテールにこだわるなら、このGTIクラブスポーツがベーシックモデルのGTIに欠けているものを(ほぼ)すべて提供してくれるはずだ。
 我々はそんな欧州市場で登場間近の「クラブスポーツ」をさっそくテストすることに成功した。

0から100km/hまで5.6秒

 最も大きな数値上の変化は、245馬力から300馬力へのドライブトレーンの強化だろう。トルクも370Nmから400Nmに増強されている。
 ホットハッチについて語る場合、くどくどと数値的な前置きを語るより、ドライバーズシートに身を沈め、ホイールを握って、カントリーロードへと飛び出すべきだと考える。
 

 クラブスポーツの発進加速のパンチ力は間違いなく特筆モノだ。
「EA888」4気筒エンジンは、2000回転からもりもりとトルクが湧き出し、6000回転を超えてもなお貪欲に回転しようとするパワフルさも兼ね備えており、実に運転が楽しい。
 標準装備のDSG(デュアルクラッチトランスミッション)は、いつものように軽快にシフトワークをみせてくれる。
 そして強化されたパワーを前輪がしっかりと路面に伝えてくれている。  この試乗車による加速タイムをまだ測定することは許可されていないが、VWの言う0-100km/h加速5.6秒という数字は、まんざらでもないと実感できるものだ。
 そしてOPF(ガソリン直噴エンジン車の排気ガスから粒子状物質排出量を削減するためのフィルター)が装着されているにもかかわらず、スポーツ走行に不可欠なサウンド演出も、これまで以上に良いものとなっている。エアインテークからのヒスリングノイズ、ターボの過給音、フラップエキゾーストからの唸り、ダウンシフトやスロットルダウン時には意図的にプログラムされたミスファイアリングサウンドが出るようになっており、人工的とはいえ気分的にもアガる。

控えめなリアディフューザー、太目のエグゾーストパイプ、そして大きなリアスポイラーが、GTIの「らしさ」をアップさせている。

練り上げられた足まわり

 動力性能もさることながら、新しいブレーキとサスペンションのチューニングは何よりも賞賛に値する。ワインディングロードでこそこの「クラブスポーツ」が楽しめた大きな理由がそこにある。

 テスト車には、冬用タイヤが装着されていたのだが、それでもここまで言わせるのだからよほどである。
 左右で600gの軽量化が図られた、ベンチレーテッドディスクと大型キャリパーが採用されているフロントアクスルには、ネガティブキャンバーの増加と、1cmのローダウンにより、1461kgのゴルフはより速く正確なコーナリングを実現してくれるようになった。
 さらに、電子制御デフロックとオプションの調整式ダンパー、そして電気機械式となったフロントアクスルのラテラルロックと、新しいドライビングダイナミクスマネージャーにより、GTIクラブスポーツには事実上アンダーステアをなくすことに成功したという。ちなみに、ESPスポーツモードを選択するとリアエンドがある程度リフトアップすることさえある。
 これが冬用タイヤを履いていても、コーナリング時にアンダーを感じることなくカーブを正確にクリアできた理由かもしれない。ステアリングも、わずかながらに不自然さを感じるものの、良いフィードバックを与えてくれる。
 唯一の気になったのはマニュアルモードを選択していても、リミッターが働き自動でシフトアップしまうところだ。これはちょっと残念。

オプションの19インチのホイールの後ろには、フロントに460mmのベンチレーテッドディスクを備えたスポーツブレーキがある。

 これにとどまらず、VWはクラブスポーツ専用に、ニュルブルクリンクドライビングモードを開発している。
 エンジンとトランスミッションをよりスポーティに、シャーシをややソフトに設定するというものだが、VWの発表によれば、クラブスポーツはあのニュルブルクリンク北コースで、なんとGTIより13秒速いラップタイムを記録したのだという。
 こんな走りの楽しみ満載の車にもかかわらず、コンフォートモードを選べば、快適に日常生活を送ることができというところが素晴らしい。
 排気システムも、オプションの19インチタイヤを使用した場合でも、許容レベルの快適性を提供する。

ついにGTIテールパイプがチューニングカーのような太さにになった! レポーターの手がすっぽりと入ってしまうほどだ。

 エクステリアに目を移してみると、VWはいくつかのマイナーチェンジを施したが、どれも正しいチューニングだといえるだろう。
 フォグランプを取り除き、粗くメッシュ化されたグリルでリデザインされたフロントエプロンはワイルドさを増した。
 リアには大きなルーフスポイラーと太いテールパイプが採用されている。やはりGTIならこうでなくては。
 残念ながらインテリアについてはこうしたアップデートはない。
シートカバーが新しくなった以外は何も変わっておらず、GTIのコックピットには、らしさを増す演出は施されていない。
 例えば、シフトパドルを大きくしたり、あちこちに滑り止めのアルカンターラを貼ったとしても、クラブスポーツの名にふさわしいスポーティさを演出できたのではないだろうか。
 さらに、車のどこを見渡してもクラブスポーツのロゴは1つも刻印されていない。
 総合的に見れば、このクラブスポーツは、GTIという車をよりエキサイティングなクルマにすることに完全に成功していると言えると思う。

コックピットでは、VWはクラブスポーツにもう少し独立性を持たせても良かったのではないかと思う。

ベーシックGTIにリーズナブルな追加料金


さて、肝心の価格だが、16%の付加価値税を含めたクラブスポーツの費用は、40,224ユーロ(約502万円)からとなっており、ベースモデルのGTIよりも2,617ユーロ(約32万円)の上乗せという計算になる。
 とてもリーズナブルなアップグレードではないだろうか?
 
 現在ドイツでは、クラブスポーツの注文を受付中。デリバリーはおそらく2020年の終わり頃から開始されるだろう。

クラブスポーツは、高い運動性能でありながら日常使いをまったく犠牲にしない、真のGTIかもしれない。

テクニカルデータ: VWゴルフ8 GTIクラブスポーツ
● エンジン: 4気筒、ターボ、フロント横置き ● 排気量: 1984cc ● 最高出力: 300PS@5300rpm ● 最大トルク: 400Nm@2000~5200rpm ● 駆動方式: 前輪駆動、7速DSG ● 全長×全幅×全高: 4295×1789×1465mm • 乾燥重量: 1461kg ● トランク容量: 374~1230リットル ● 最高速度: 250km/h ● 0-100km/h加速: 5.6秒 ● 燃費: 13.5km/ℓ ● CO2排出量: 167g/ℓ ● 価格: 40,225ユーロ(約502万円)より

 日本でも長く人気のGOLF GTI。その高い性能と日常使いでも活躍する万能ともいえるバランス感覚は常に名車といわれるゆえんであるが、そのアップグレード版なので、期待は高まるばかりだ。
 御存知の通り、8代目ゴルフがいまだ未導入の日本市場において、こうした気になる情報ばかりが先行してくると、なお一層妄想が膨らんでしまう。メルセデスベンツやBMWやアウディが、どんどんニューモデルを日本市場に導入しているのに、一体なぜ…。一日もはやくなんとかしてもらいたいものだ。

Text: Moritz Doka
加筆:Autobild JP
Photo: Christian Goes / AUTO BILD