【このクルマなんぼ?】フィアット パンダ4×4 走行距離44万9千キロの値段が! マジか?
2020年11月10日
売りに出たフィアット パンダ4×4は50馬力で走行距離が約44万9千キロ!アンビリーバボー!確かに状態が良ければパンダは今やコレクターズアイテムだ。ところが、このパンダ4×4は、44万9千キロという信じられないほど多くの距離を走行した1台だ。果たしてその価格は?
フィアット パンダはカルトだ!
1980年にジョルジェット ジウジアーロがデザインしたパンダが発売され、瞬く間に世界中でベストセラーとなった。現在ではフィアットの中でも最も成功したモデルの1台であり、コレクターの間では常に高い人気を誇るアイコンカーでありカルトカーだ。特に全輪駆動モデルの「パンダ4×4」は人気がある。
そして、今回紹介する、現在イタリアで販売されている「パンダ4×4シスレー(Sisley)」は、なんと、44万8000キロという驚異的な走行距離を記録している1台だ!
1980年から2003年までの間に、フィアット パンダは400万台以上製造販売された。ヨーロッパでは、イタリア国内市場を除いて、排出ガス規制や安全規制が強化されたため、1996年までしか販売されていなかった。当初、フィアットでは内部的に141型と名付けられたパンダには、3種類のエンジンが搭載されていた。1986年に導入された2代目パンダ(MK2)までは、より近代的なファイヤエンジン(FIRE 769cc SOHC L4)が装着され、最高出力55馬力を発揮した。
20種類以上のパンダスペシャルモデルがあった
パンダは、あらゆる場面で活躍する安価な小型車として構想され、そのように扱われてきた。しかし、数年前からコレクターの間でも目が離せないカルトカーとなっている。彼らからは、何よりも、初期モデルの年式や特別仕様車、全輪駆動仕様の「4×4」が求められている。
特別仕様車といえば、パンダの特別仕様モデルは、全製作期間中に20種類以上も存在した。1983年にオーストリアのシュタイア プフ社が製造する形で生まれたのが、オフロード仕様の「パンダ4×4」だ。四輪駆動と低価格のため、特に寒冷地方や地方の村落で人気があった。
パンダ4×4は人気があり、高い
現在では整備の行き届いたパンダ4×4は希少で高価なものとなっている。そして現在、ローマで、極めて例外的なパンダ4×4が販売されている。それは1987年に導入された特別モデルのシスレーで、ルーフラック、チルトセンサー、デコラティブストリップが標準装備されていた。当初、4×4のシスレーは500台限定で販売される予定だったが、高い人気と売れ行きの良さによって、その後恒久的な生産モデルとして追加された。
そしてローマで売られている、パンダ4×4シスレーが本当に特別な理由とは、その448,923キロという信じられないほどの総走行距離数だ。そして、それはたったの50馬力で走破されたものだ!もちろん、そのような走行距離数も古い車では珍しいことではなく、ヨーロッパやアメリカでは100万キロを超えることさえある。しかしそれはメルセデスEクラスのような中型車である場合が多い。
それにしてもこれほど多い走行距離数を誇る小型車は超レアだ!?
広告によると、パンダは信じがたい走行距離数にもかかわらず、まともな状態であり、致命的なサビの問題を抱えていないという。唯一、屋根と窓枠だけが日光によって色あせているが、ほぼ50万キロの走行距離数を考えれば、インテリアも驚くほど美しく見える。残念ながら広告には、メンテナンス履歴や前オーナーの数など、それ以上の情報はほとんど掲載されていない。
歴史的パンダは1,000ユーロ(約125,000円)以下で購入可能
イタリアのディーラーは、走行距離448,923kmのフィアット パンダ4×4シスレーに4,400ユーロ(約55万円)の値札をつけている。かなり走行距離の少ない4×4シスレーであれば、2,750ユーロ(約34万円)くらいからイタリアでは販売されているので、必ずしも掘り出し物とは言えない。
ただ、ドイツでは中古141パンダの供給はかなり少ない。最も安いモデルは1,000ユーロ(約125,000円)以下から出回っているが、それらの多くは大規模な錆の問題を抱えているか、運転するのもままならないものが多い。
フィアット パンダは名車である。
特にこのジュージアーロが精魂込めて、イタリアの庶民のために作った初期モデルは、日本でもカルト的に愛され続けていて、そんな人たちに言わせれば、このあとのパンダなんてパンダではない、という声が強い。まあ当のフィアットも、初代だけでパンダを終わらせようと画策し、次のモデルにはもうパンダという名前をやめて、ジンゴという名前を準備しローンチさせようとしていた。そのはずが、ルノーから「おいおい、トゥインゴがあるのに、ジンゴって名前じゃ判別しにくくて困るじゃねえかよ」といちゃもんをつけられ、仕方なくパンダになったという経緯があると聞いた。
それはともかく、この初代パンダ、私も大好きで、今こんなシャレた小型車が新車で売っていたら欲しいほどなのだが、今回の物件は45万キロも走ってしまったパンダなのだった。さすがにこれだけ安いイタリアの庶民向け小型車を走らせてしまえば、おそらく出がらしのような状態になっていることが予想される。そしてそんな車が、いくら一見程度がよさそうとはいえ、55万円とは、ゼロの数が一個多いんじゃないかというほどの驚きである。
実は小学校の同級生の親友が、パンダを新車で買って乗っていたことがある。ブルーに塗られたMTのそれは、なんとも洒落ていたし、走らせても運転する喜びにあふれた一台だった。だがトラブルはもちろん発生したし、路上で立ち往生したことも「もちろん」あった。このパンダもそういう風に直し、直し、使われてきた車だと思うし、何事もなかったということはありえない。そういう意味では壊れそうなところを全部一度は直し、補強したかもしれないから、ひょっとするとちゃんと走る、のかもしれない。
だが…、やはり45万キロも走ってしまったこの一台を僕は選ばないし、人にも勧めない。トラブルや故障などの理由だけではなく、それだけの走行距離に込められた思い出や時間の重さを考えると、ちょっと自分には引き受けるのには荷が重いなあ、という思いからである。
Text: Jan Götze
加筆:大林晃平
Photo: Link Motors Franchising