【レトロな車】恐ろしいビンテージ メルセデスの話
2020年11月27日
まるで新手の詐欺?
これはクルマ好きにとってはちょっと辛いストーリーだ。専門家の意見ではコンディショングレード1に認定されたこのベンツには35個の欠陥が存在する。高価なクラシックカーを購入する際には、多くの場合、クラシックカーエキスパートによる査定が信頼をもたらす。しかし、トップスコアにもかかわらず、その車に35個もの欠陥があったとしたらどうだろうか? その場合、トラブルは何年も続く。ちょうどこのメルセデス220 Aカブリオレのように。
高価なクラシックカーを購入する多くの人にとって、クラシックカーの査定のみが頼みの綱だ。個人で独立して活躍する専門家が車を検査し、状態に学校のグレードを割り当て、価値を決定する。しかし、その査定に欠陥があった場合はどうなるだろうか。そうなると、その後、トラブルは高額な費用を発生させ、何年にもわたって続く可能性がある – 今回のペーター・ロットマン氏のケースのように。メルセデス220カブリオレAは、ロットマン氏がまだ若かった頃、すでに高級車だった。1950年代のバロック様式のベンツは、最高の状態であれば、今では13万ユーロ(約1,625万円)以上の価値があるクラシックカーだ。
現在72歳のロットマン氏にとって、この車は夢の実現であり、同時に将来への保証でもあった。そして、ベーブリンゲンのクラシックカーディーラー、ベクテルモーターカンパニー(Bechtel Motorcompany)で、彼はその両方を備えた今回のメルセデスベンツに出会った。デクラ(Dekra=自動車や技術システムの検査を行うドイツの企業)の査定では、このクラシックカーはグレード1のコンディションであり、1952年に納車された時よりも良い状態であることが証明された。ロットマン氏はまた、ベクテル社から、「最高の透明性、安全性、運転の楽しさ」を評価する「100点満点のテストシート」を受け取った。彼はこのために139,000ユーロ(約1,737万円)を支払い、さらにミッドナイトブルーの新塗装に、30,000ユーロ(約375万円)を支払った。そしてある晴れた日、6気筒カブリオレは彼の家のドアの前に届けられた。
ポンコツの証明
しかし、その楽しみは長くは続かなかった。ロットマン氏は購入前の試乗をしていなかったせいだろうか、初めてのテストドライブ中に、まず最初の問題が発生し、最終的には35個もの欠陥がリストアップされた。それは6年前のことで、まだすべての解決策は見つかっていない。これらの問題点は、ベンツオールディ(Benz-Oldie)によって発見された。それを列挙してみよう。
● サイドメンバーのサビ
● エンジン、トランスミッション、リアアクスルのオイル漏れ
● ボディ隙間が合っていない
● ドアが垂れ下がっている
● ラジエターマスクとバンパーの内側が錆びている
● (新品)塗装が傷んでいる
● ブレーキフルードが漏れている
● エンジンが傾いて取り付けられている
● ソフトトップカバーが折れている
● オリジナルではないエキゾーストシステム
● オリジナルではないハブキャップ
などなど。
車体番号は既に割り振られている。ロットマン氏は、独自の専門家に再査定を依頼し、
そして彼は判断した。この車両はグレード1の定義を満たしていない欠陥がある。その専門家は、この状態のメルセデスがどのようにして、一般検査を受けられたのか、理解することができなかった。そして、最大の問題は車体番号プレートで、それは後付けされたもので、そのナンバーは1952年にダイムラーがリムジンに付けたものだった。氏が購入したこのコンバーチブルは、いわゆる「ニコイチ=2個1」、つまりどうやら2台の車から作られたもののようだ。そのため二人目の専門家の評決では、グレード1からは25,000ユーロ(約312万円)低い状態であると鑑定された。しかしロットマン氏はこの類の不幸の最初の被害者ではない。クラシックカーの愛好家は、別のことも発見した。前オーナーが、欠陥に気づき、メルセデス220 Aカブリオレをベクテルモーターカンパニー社に返却した後、同社に対して訴訟を起こし、裁判は現在も続いているというのだ。
胸が痛む。
ロットマン氏は、クラシックカーの販売店を詐欺であると非難し、その間に発生した費用を含む購入代金の返還を要求した。ベクテルモーターカンパニー社は、補償金として5000ユーロ(約62万円)しか送金してこなかった。したがって、ロットマンは当分の間、車を保管し続けている。
結論:
クラシックカーのオリジナリティは、多くの場合、多大な努力によってのみ証明できるが、すべての有能な専門家は、明らかに露骨な欠陥は指摘できるはずだ。専門家のレポートには、時には自動車ディーラーでさえ、クライアントの立場として読むべきことがたくさん指摘されてある。
【以下、欠陥の数々】
昔憧れていた車が欲しい、あるいは今、ちょっと古いクルマを所有したり、乗ったりしたい、そんな気持ちを抱くことは車好きなら当たり前だし、私もそういう意味では欲しいクルマもあることは事実だ。だが、実際にそれを所有するということになると、そのハードルも課題も大きくそこに存在していることも事実で、なかでも今回の話は極めて不幸な一例であろう。しかし、ブームとはいえ、このような詐欺まがいの取引がなされていることも事実である以上、また、支払う額に見合う、細心の注意を払う必要があるだろう。
Text: Jochen Wieloch, Roland Wildberg
加筆:大林晃平
Photo: Kai-Uwe Knoth / AUTO BILD