伝説の300SLを彷彿させる「メルセデス・ベンツ SLS AMG」 前編
2025年6月11日

誉れ高きエンジン「M159」
エンジンは、AMGが独自に開発したハイパフォーマンスエンジンとして定評のある「M156」6.2L、V型8気筒エンジンをベースに、アルミニウムのクランクケース、マグネシウムのインテーク、新設計の鍛造ピストンなど、120箇所以上に及ぶ改良を施し、ドライサンプ潤滑方式採用して571PSの圧倒的なパワーを発揮する「M159」が搭載された。市販車への搭載はSLSのみとなったが、GT3規定のAMG GT3に搭載されレースで活躍している。

パワーウェイトレシオは2.84kg/psで、最高速度は317km/h(リミッター作動)、0-100km/h加速は3.8秒という驚異的な俊足ぶりを実現している。一方、NECD総合燃費(欧州走行サイクル)は、13.2L/100km(約7.6km/L)とクラストップレベル(EU仕様)の燃費効率とクリーンな排出ガス性能(EU5、LEV2、ULEV適合)を達成している。
アルミニウム・スペースフレームの特徴
SLS AMG専用に開発されたボディは、重量241kgという超軽量のアルミニウム・スペースフレームに組み合わされる。このスペースフレームは、高度な軽量設計と最高レベルの剛性により、ねじれが発生せず、正確なハンドリング特性を実現している。つまり、軽量アルミ構造の低位置の大きなクロスセクションは抵抗トルクが高く、駆動力、制動力、シャーシの力のダイレクトな伝達を可能にしている。一方、不要な柔軟性は構造上低減され、高剛性かつダイレクトで、ひずみのない優れたレスポンスを得ている。

この軽量かつ高剛性のアルミニウム・スペースフレームボディ構造や、エンジンをフロントアクスル後方に搭載したフロントミッドシップ形式、7速ディアルクラッチトランスミッションをリアアクスル上に配置したトランスアクスル方式による理想的な前後重量配分47:53やドライサンプ潤滑方式よる低重心化により、スーパースポーツカーでありながら扱い易いハンドリングと優れた操縦安定性を実現したのであった。
マグネシウム製バックレストを採用したスポーツシート
SLS AMGのスポーツシートは、軽量かつ高強度なハイテク素材であるマグネシウムをバックレストに採用し、車両の重量配分と低重心化に大きなメリットを生み出している。また、シートクッションは2ゾーンタイプを採用。硬めの発砲材を詰めた大型サイドボルスターにより、最適なサイドサポートを実現すると共に、シートとバックレストの内側を柔らかくすることで長距離走行でも優れた快適性を確保している。

シート前後のポジションや髙さ、バックレスト角度、座面角度を電動調節できるメモリー付きパワーシートを標準装備。しかも、このメモリー付きシートは3名分の設定が可能。加えて、4ウェイ・ランバーサポートやサイドサポートを調節できるマルチコントロールシートバック、3段階調節式シートヒーター、助手席のシートセンサー/チャイルドセーフティシートセンサーを標準装備している。
AMGパフォーマンスステアリング
AMGパフォーマンスステアリングは、上質なナッパレザーの本革巻き3スポークにアルミニウウムのパドルシフト付きで、意のままのドライビングをサポートしている。ハンドル直径は365mm、フラットボトムデザインのレーシングスタイルのステアリングホイールは握りやすく、路面状況を適度に伝え、高いハンドリング性能を実現した。

中編では、SLS AMGの能動的安全性(事故を起こさない為の安全性)を紹介する。
TEXT:妻谷裕二
Photo:Mercedes-Benz AG、Mercedes-Benz Museum、妻谷コレクション
【筆者の紹介】
妻谷裕二(Hiroji Tsumatani)
1949年生まれ。幼少の頃から車に興味を持ち、1972年ヤナセに入社以来、40年間に亘り販売促進・営業管理・教育訓練に従事。特に輸入販売促進企画やセールスの経験を生かし、メーカーに基づいた日本版カタログや販売教育資料等を制作。また、メルセデス・ベンツよもやま話全88話の執筆と安全性の独自講演会も実施。趣味はクラシックカーとプラモデル。現在は大阪日独協会会員。