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【トリビュート】「トップガン」の名脇役や「バットマン フォーエバー」で主役を演じた故ヴァル キルマーがこよなく愛したポンティアックGTOの物語

2025年4月13日

故俳優ヴァル キルマーのポンティアックGTO:つい先ごろ亡くなったハリウッドの名俳優ヴァル キルマーはポンティアックGTOを所有し、こよなく愛していた。米国では、このモデルはコルベットやマスタングと肩を並べる存在である。

彼自身も一流の俳優であり、ニコラス ケイジやマイケル ダグラス、ニコール キッドマンやナタリー ポートマン、アンソニー ホプキンスやケイト ブランシェットといったハリウッドの伝説的な俳優たちと共演した。つい先ごろ、65歳という若さで、アメリカ人俳優のヴァル キルマーが亡くなった。

一流の俳優として活躍した彼は、最高級の車を運転していた。その中でも、お気に入りの1台だったのが、この「ポンティアックGTO(Pontiac GTO)」だ。

ワンダーランド:これがヴァル キルマーのGTO、青のメタリックで、少ししわの寄ったソフトトップ付きだ。

ドイツでは、「ポンティアックGTO」は余程のアメ車好きしか知らないが、アメリカでは「フォード マスタング」や「シボレー コルベット」と同様に、伝説的な評価を得ている。なぜだろうか?それは、最初の成功した「マッスルカー」と考えられているからだ。

マッスルカーとはいったい何だろうか?

マッスルカーとは、巨大で強力なエンジンを搭載した中型の車のことだ。車輪のついた武器のようなもので、シャシーはシンプルであることが多いが、米国SAE基準では300、400、時には500馬力を超えるものもある。以前にも強力なミッドレンジの車は存在していたが、1965年に登場した「ポンティアックGTO」は、短気な新米ドライバーの親や自動車事故保険会社の担当者を冷や汗たらたらにさせるほどのトレンドを生み出した。

Kill Me Again:2011年、ヴァル キルマーのコンバーチブル(リアスポイラーと塗装バンパー付き)が2度目のオークションにかけられた。

こうしてポンティアックGTOは誕生した

その起源は極めて平凡なモデルだった。「ポンティアック テンペスト」は、当初は4気筒エンジン搭載車も販売されていた(当時、米国の顧客は4気筒エンジンがどのようなものかさえ知らなかった)。1964年には、140馬力から始まるエンジンを搭載した2代目が登場した。

1961年より、ポンティアックのチーフエンジニアを務めたのはジョン Z デローリアンだった。そう、後に「バック トゥ ザ フューチャー」の車、「デローリアンDMC-12」を開発した人物だ。1960年代初頭、彼はモデルラインナップから車を選ぶことを許されたが、気に入る車は見つからなかった。

なんと天才的:デローリアンは、フェラーリ250 GTO(「グランツーリスモ オモロガート」)から「GTO」という名前を盗んだ。

そこで、自動車の世界を変えることになるアイデアを得た。彼は、古き良き「テンペスト」のエンジンルームに6.4リッターのV8エンジンを搭載したのだった。ポンティアックは「W62 GTO」オプションとして、「テンペスト」に300ドルの追加料金で、6.4リッター、特別なカムシャフト、タペット、シリンダーヘッドを搭載した強力な421「H.O.」(ハイアウトプット)エンジンを装備した。その結果、SAE方式で325馬力、DIN規格では260馬力以上を発生するエンジンが完成した。さらに追加料金でTri-Powerキャブレターシステムと348SAE馬力を提供した。

トップガン:6.6リッターV8エンジン、レストアの際に磨き上げられたパーツが多数。

GTOがアメリカ人を熱狂させた理由

「GTO」の6.4リッターV8は中型車の最大排気量を330CI(キュービックインチ)V8 5.4Lに制限している当時のGMの方針に違反するものであったため、「GTO」を特別限定車として捉えることで承認を得た。そしてその生産台数は5,000台に制限するとされたが、最終的には32,000台が販売された。競合他社もそのコンセプトを模倣し、1970年代初頭までに、馬力過剰の2ドア車が大量にアメリカの道路を走り、アメリカの側溝に飛び込み、街灯に衝突した。

バットマン フォーエバー:フロントデザインはヴァル キルマーが乗ったバットマンカーを彷彿とさせる。

ヴァル キルマーが1969年式「GTOコンバーチブル」を購入したとき、それはすでにクラシックカーとなっていた。このマッスルカーは6.6リッターエンジン、オートマチックトランスミッション、より近代的なラジオ、そして美しい名前のフッカー社製のエキゾーストシステムを搭載していた。

キルマーの車は、キルマーの指示で大幅に改造された

2017年、青い車はMecumオークションハウスで競売にかけられた。4年後、その車はMecumに再び登場した。今では修復され、パウダーコーティングされたフレーム、黒く塗装された外装、内装には新しい白いレザーが張られている。

グローブボックスの中には現代的なエアサスのコントロールスイッチが隠されている。
トランク内のパネルの奥には、おそらくエアサスのシステムを隠している。

いくつかの技術は新しかった。エアサスペンション(「エアライド」)、4つのディスクブレーキ、4,500ドル(約67万円)のホイール、オーバーホールされたオートマチックトランスミッション、フォード製の新しいディファレンシャルなどだ。

ボンネットの上にタコメーターがある。

工場出荷時には装備されていたが、キルマーのカブリオレには装備されていなかったギミックが、レストア時に追加された。ボンネットの上に小さなフード付きのタコメーターを配置するというものだ。これは1967年にGMデザイナーのロン ヒルが考案した。

いささか修復しすぎたコックピット。前面白だ。
メーターはオリジナルに見えるが、ダッシュボード全体を白くしてしまったのは趣味が良いとは言えない。

ヴァル キルマーには、息子のジョンと娘がいる。彼は娘にメルセデスと名付けた。

Text: Frank B. Meyer
Photo: Mecum Auctions