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【自動車大好き倶楽部の入会証】祝35周年&ND10周年記念企画「マツダ ロードスター」4台一気乗り!後編

2025年4月4日

今年で世の中に誕生して以来35周年となる「マツダ ロードスター」。現行モデルのNDも発表されてからあっという間に10年となった。毎年改良が加えられ進化を続けているし、昨年大幅な改良を受けている。熟成が進み、様々な新しいデバイスも追加されているロードスターであるが、いったいそれはどんなふうに違っているのか、今回はND4台とNA一台を集めて乗り比べてみることにした。

2023年モデル 990S

990Sが登場したのは2022年のことで、生産終了になったのは2023年、ということは2年間だけ作られたモデルである。ベースになったのはベーシックなSでブレースバーもリアアンチロールバーもリミテッドスリップデフも遮音材もナシのないないずくしだが車重は1トンを切り990㎏、というモデルである。

バネ下の軽量化、オートエアコンをマニュアルエアコンにするなど全体にわたって手が入っている。

そんなSをベースにブレーキをブレンボに、ホイールをレイズにと特別な装備を付け加えただけではなくダンバーやコイルレート、電動パワーステアリングなども再設定し、エンジンの制御マップなども最適化したというところが、これまたマツダのロードスター愛溢れる部分である。

キネマティックポスチャーコントロールは装備されているが、車内は実に質実剛健に真っ黒け。ナビがないのは当然としても、バイザーの裏までくりぬいたりと涙ぐましいまでの軽量化で990㎏を実現したので名前も「990S」となった。

ブルーの差し色がアクセントになっている。

それでもエアコンの吹き出し口に青いリングをつけたりブルーの幌にしたり、とお洒落にも一応配慮し、特別感を演出することも忘れていない。なお試乗した一台にはアルカンターラのダッシュボードとドアトリムが装備されていたがこれはオプションである。

さてそんな990Sに乗ってクラッチをつなげて走り始めた瞬間、タイヤが回る感じがなんとも軽く感じた……というのは自分が今乗っているのは990Sだから、というプラシーボ効果が効いているということも多分にあるかとは思うが、今回の比較試乗に参加したほかのメンバーに聞いても、やはり転がり始めが軽いこの感じを異口同音に述べていたので、間違えではないと思う。

シートの生地はファブリック。

走り始めてみても990Sはなんとも軽やかで、今回4台そろえたNDの中で、これだけ違う感じが一番強い。特に乗り心地や爽快な操舵感などは990Sが一番で、路面の凹凸をやさしくいなしていく感じだけで僕は嬉しくなった。この荒れた路面をひょこひょこっと柔らかくいなしていく感じはかなり前のフランス車、たとえばプジョー309あたりを連想させるほどで、ロードスターを柔らかいなどと表現することが正しいかどうかは別として、快適であったことは確かである。

こういうたおやかなクルマに乗っているとあまり飛ばそうという気にもならないし、ひっちゃきに飛ばすべきではない。心地よいスピードで無理なくふんわり走ることで、心地よいロードスター、これはそういう一台であり王道の直球勝負のセッティングであると思う。

もう二度と1トンを切るNDロードスターは作られないだろうし、こんな990Sのような自動車はますます少なくなることだろう。そんなせつない気持ちになりながら、ふわりふわりと990Sを走らせた。

2024年モデル 最新型RS(マツダ広報車両)

今回広報車輛を貸していただいた横浜にあるマツダのR&Dセンターの出口でステアリングを切った瞬間、そのしっかりさと剛性感を如実に感じた。今回の車輛は13,000㎞余りを走っていたためまだ慣らしがついていないとかそういうことではなく、ステアリングフィールをはじめ、車全体がなんともしっかりと固く剛性感のある感じ、そんな感覚が最後まで持続した、そここそが最新車両の一番の特徴に感じられる。

ブレンボ社製ベンチレーテッドディスク&対向4ピストンキャリパー(レッド塗装)とRAYS社の鍛造アルミホイールはセットオプション。

このステアリングホイールの手ごたえ向上の原因は、ステアリングラックの摩擦低減とパワーステアリングモーターのアシストの制御ロジックの改善からくる、とのことだが、この乗った途端に感じる違いこそ、最新モデルの特色といえるのではないかと思う。

他に乗った途端に感じる部分としてはメーターの字体などがすべて新しくなり洗練されている部分や、プラスチックだけの処理だったセンターコンソール周辺が柔らかい素材となり大いに品質が向上していること、さらにはウインカーのインジケーターが従来まではベタに光るものが、周囲の枠(中央が光らない)だけが光るようになっていたり、ハザードランプスイッチの意匠(形状は同じだがマークの意匠が若干異なる)など、いったいこんな部分にお金を(いまさら)かけてモトが撮れるのか、と心配になってしまう。そしてそんな細かい部分にまで手を抜かず、執念のようなものを感じるほどのビックマイナーにマツダらしさとロードスターへの愛を感じることが出来る。

エンジン出力は4PSアップの136PS。踏めばそそるエグゾーズトノートを奏でる。

これほどのビックマイナーチェンジを敢行しなくてはいけなかった大きな理由は、サイバーセキュリティ法案をクリアするためのものであったことは間違えないが、それに便乗して(?)ここまでNDロードスターを改良したということは、まだまだNDを作りますよ、という表明かな、と個人的に嬉しく受け止めた。

なお今回のビックマイナーチェンジで最高出力も若干(4馬力)増えて136PSに、最大トルクは152Nmとなっているが、確かに上のほうまで回すとちょっと力強くなったかなとも思ったが……やはり街中では大きな変化とは思えなかった。それでもたった4馬力というのは簡単だが、先ほどのステアリングフィールの向上も4馬力のパワーアップも、ちょちょいのちょいではい完成、ということは絶対になく様々な要件をパスしなければ世の中に出てくることはあり得ない。それは開発陣のどれだけの手間と努力の結果なのだろうか、その情熱には頭が下がる。

ちなみに今回の車輛の重量は1040㎏、つまり990Sよりも常に成人女性一人分くらい違う。パワー不足などは感じないものの、走り味めのヒト転がりに990Sのような感じはなく、ちょっと重厚な走り出し感があることで、そのしっかり感は常に感じられた。決して重ったるいとかそういう意味ではないが、硬質で良いもの感を感じるのは最新型の特徴で、特にこのビルシュタイン製ダンパーに専用チューンを施されたRSというグレードは、なんとなく最近のゴルフGTIを彷彿とさせるようなイイもの感なのであった。ロードスターも10年が経過し、すべての部品の精度などがあがったからだろうか。

なお形式名5BA―ND5REの最新型RSロードスター、車両本体価格が3,745,500円に、ブレンボ社製ベンチレーテッドディスク&対向4ピストンキャリパー(レッド塗装)とRAYS社の鍛造アルミホイールのセットオプションが330,000円の合計4,075,500円。400万円をロードスターも超える時代になったのかと思うが、それでも内容を考えたら日本人は幸せなのではないかとも思った、というのがいつわらざる感想である。

蛇足ながら今回はご自慢のアシンメトリックLSDが効果的に作用している、という領域の走行は一切しなかったためその効能には触れることが出来ない。申し訳とも思うが、世の中でその恩恵に毎日触れる人も決して多くはないと思うし、あくまでも日常領域での比較試乗を主題としているのでお許しいただきたい。

1990年モデル NAロードスター Vスペシャル

4台のロードスターを乗り比べた直後、せっかくだからと会場に来ていたNA「ユーノス ロードスター」に乗ってみることにした。1990年モデルのそれは大切に乗られてきたVスペシャルのドノーマルの一台で、ちょっと幌などには劣化が見られたが無交換のまま、なのだという。なんとも薄く華奢に感じるドアを閉め、NAの低いシートに座るのは久しぶりだったが、あらためてその小ささや助手席との近さに驚く。

NAの魅力はまったく色褪せない。

そしてデビューした当時はまったく感じなかったが、ダッシュボードやスイッチ類などが簡単で簡潔で失礼ながらちょっと安っぽい。こんな質感だったっけ、と感じるのは2024年モデルのNDに乗った直後だったからで、1990年当時はこれでもなかなかお洒落に感じながら乗っていたことを昨日のように思い出す。

これまた華奢なウッドのステアリングホイールを握り、ウッドのシフトノブを1速に入れて走り始めた瞬間、車内は周囲から巻き込む風でいっぱいになった。フルオープンで高速道さえ苦も無く走れるNDと比べるとこちらはフルオープンらしさ満点である。

リトラクタブルライトが堪らない!

ごうごうと吹き込む風、軽く華奢なステアリングホイールの感触と、同じように軽い走行フィール。ちょっと頼りないと感じるのはやはりボディのゆるさとブレーキフィールで、特にブレーキに関しては35年の進化の違いを大いに感じる部分といえる。その当時はまったく感じなかったノイズが、ワイドFM放送の登場で今は妙に大きく感じるようになってしまったAMラジオのようなものだろうか。でも、それもまた懐かしい味である。

たしかNAロードスターの車重はベーシックグレードで950㎏を切っていたはずで、その軽さはNDと比べても明らかだし、この軽さ、ライトウエイトらしさに心を奪われてNAから離れられない人を僕は何人も知っている。そしてこのひらひら感と軽快感は、たとえ990Sであっても追いつけない絶対的なものであるともいえる。軽さはやはり正義だし、小ささも含めNAロードスターの魅力は今でも色あせていない。むしろNDと比較することでその魅力を再認識できたと思う。

「マツダ ロードスター」は世界的にも類を見ない小型FRオープンスポーツカーだ。

トンネルに入ったのでライトを点けると大きなリトラクタブルライトが、ぴょこんと立ち上がった。この独特な光景ひとつとっても、NAの魅力から離れることが出来ない人を生んでいることがよくわかる。

結論にかえて

なんとも身もふたもない結論で大変申し訳ないが、それぞれのロードスターは若干の味の違いこそあっても、どれも乗って心地よい、というオープンツーシーターの基本をしっかりと持った車たちであった。そもそも今回のように厳密に乗り比べることなど一般的にはあり得ないし、単体で乗ってみた場合にはそれぞれの違いなどまったく気にならないどころか、いずれも爽やかな心地よさだけが心の中に残る車であったと言い切ってよい。

個人的に一台を選ぶとしたら軽く、なんとなくフランス車的にふんわりした乗り心地の990Sが好みではあるが、ラグジュアリーな雰囲気の100周年車も、ゴルフGTIのように硬質な感じがするRSも甲乙つけがたい。

さらにどうしようもないことを言ってしまえば、オープンカーというのはそれだけで反則みたいな部分があり、気持ちよい天気の下、空いた道路を屋根を開けて走ってみれば、多少の雑味のようなものがたとえあったとしても空の向こうに飛んで行ってしまう、そういう乗り物である。

今回の試乗は日曜日に行ったということもあり、何台ものマツダ ロードスターとすれ違った。その多くがこちらにちょっと会釈したり手をあげたり、と同好のサインを送ってくれる。もちろん見ず知らずの人たちだというのに。この同調感は、ほかのクルマではあまり味わえない。これほどまでに多くの人に愛されつづける日本のオープンカーはマツダ ロードスター以外にない。

次の世代では電動化されてしまうのだろうか。

格好がよくて気持ちよく、そして毎日気兼ねなく使える、そんなNDロードスターを新車で気楽に購入できのは、いつまで続くのだろうかと思うとちょっと悩ましい。

Text&Photo:大林晃平