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【新型車インプレッション】使い勝手は抜群!「VW ゴルフ ヴァリアントeTSI」

2025年2月27日

VWゴルフが大幅マイナーチェンジを受け、8.5へと進化した。前回の記事ではハッチバックタイプのディーゼルエンジン試乗したレポートをお届けしたが、今回はその続き。ワゴンボディであるヴァリアントの1.5リッターガソリンエンジンモデルのインプレッションをお届けしたい。

VW ゴルフ TDIアクティブ アドバンスのシルバーから華やかな赤いメタリックに塗られた、ガソリンエンジンモデルのゴルフ ヴァリアント eTSI(Golf Variant eTSI)のスタイルというグレードに乗り換える。スタイルというとプジョーではその昔スタンダードモデルだったがこちらは「ややスポーティなグレード」となりマイクロフリース生地の貼られたスポーツコンフォートシート、うろこ状の(?)室内ガーニッシュなどが用いられる。個人的にはサポートの強い盛り上がった普通のシートの方が座り心地も良いと思ったし、やはりネクセンの225/45R17 のタイヤは同じだからあえてスタイルを選ばなくともよいとも思ったが、Rライン(18インチタイヤを筆頭に、かなりスポーティなコスメティックスが多い)ほどの演出を不要とする人には良いチョイスとなろう。

今回からベーシックなガソリンエンジンとなった1.5リッターの4気筒エンジンは48ボルトのマイルドハイブリッドシステムを採用し、走行時には状況に応じて2番シリンダーと3番シリンダーを休止し2気筒にもなるがその場合1と4番シリンダーのバルブタイミングをも変えるというハイテクさを見せる。

そのエンジンを見てみようとボンネットフードを開ける時に気が付いたのだが、ゴルフ7では油圧ダンパーだったものがつっかえ棒式に格下げされたフードストッパーと、左右2点式のボンネットキャッチ、そして世界各国のパーツ類だった。

油圧ダンパーが廃止されたことは残念だが、左右2点式のボンネットキャッチはボディ剛性の高さに寄与する。こういうところで手を抜かないフォルクスワーゲンらしい。

それにしてもスペイン、チュニジア、ベルギー、トルコ、ウクライナ、韓国、中国……と書かれたパーツ類を見ながらあらためてゴルフがワールドワイドな商品であることを実感する。そしてそんなパーツ類の中にメイドインジャパンがなかったことが、妙に寂しかった。

さてそんな複雑な思いで乗り込んだヴァリアントは345㎜全長が長く、ホイールベースも50㎜長いせいかより安定して落ち着いた乗り心地に感じられた。実はそれだけ全長が長いにも関わらず車重は先ほど乗ったTDI(5ドア)よりも20㎏ほど軽いのだが、これはもちろんディーゼルエンジンが重いためである。150馬力250Nmを発生する1.5リッターガソリンエンジンは、もちろん2リッターディーゼルエンジンほどのモリモリ感はないものの軽快にそして静かに回るし、7速DSGの巧みさが相まって容赦のない試乗で15km/lほどの燃費をたたき出した。

ハンドリングも乗り心地もエンジンの軽さが効いているのか、やはりディーゼルエンジンのモデルよりも軽やかに感じられる。あの奇跡のように軽やかで滑らかだったゴルフ7の1.2リッターエンジンと比べると残念ながらそこまでには至ってないが、1.5リッターのエンジンと車重を考えればこのヴァリアントは想像以上に完成度が高い。

ワゴンボディは圧倒的に広い荷物スペースで、犬などを乗せた場合のローラーネットを持つなど装備も十分。リヤのレッグルームもホイールベースが長くなっているために犠牲になっておらず、ゆったり座ることが出来る。残念ながらヴァリアントは全体の3割ほどしか売れないのが現状だと聞くが、ゴルフをレジャーでも仕事でも日常でも、徹底的に使いたおすような乗り方にはこちらの方が適していると思う。少なくともヴァリアントだから、ワゴンボディだからというネガティブな面は皆無であった。

燃費的にも十分優れているし、やはり静かさやスムーズさでもガソリンエンジンの方が上である。ではいったいディーゼルエンジンとガソリンエンジンのどちらをゴルフでは選ぶべきか、と悩み始めてしまったのだが、個人的にはやはりディーゼルエンジンかな、というのが自分なりの結論であった。その理由は……

低いトーンをわずかに聞かせながら、若干の振動を伝えて力強く走る姿に、昔大好きだったゴルフ2の姿を重ねる、というのは大げさすぎる懐古趣味かもしれないが、実用車らしい飾らない働き者エンジンとしての魅力はディーゼルの方が強かったし、おそらく燃料代も安いと思う。そういう生活に根差した懐に優しい車こそがゴルフなのではないだろうか。さらにゴルフ8.5のガソリン車の乗り味が、あのゴルフ7の滑るような軽やかさにまだ若干追いついていない、という気持ちもディーゼルエンジンを選んだ理由でもある。そうあのゴルフ7の最初期型1.2は、奇跡のゴルフだったと今でも思う。

Text:大林晃平
Photo:アウトビルトジャパン