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【比較テスト】ガソリンエンジンVWゴルフ対電気自動車VW ID.3 結論は?

2020年10月29日

新しいE-コンパクト、ID.3には、ゴルフの後継車になるために必要な条件が備わっているだろうか?ドライブコンセプトの比較におけるVWゴルフ8と未来への希望に満ちたID.3。新しいこのEVは明確な将来像を提供しているだろうか?比較、確認してみた。

結論を先に言えば何十年も登録台数のトップエンドにいたモデルは、すぐに王座から叩き落とされることはない。ID.3はEゴルフの正当な後継車といえるもので、その中でも最強のバッテリー(58kWh、204馬力)を持つID.3は「未来のゴルフ」だ。

ゴルフはその全体のパッケージが印象的

ゴルフⅧは、48ボルト電動システム、シリンダーカットオフ、セーリングモードなどのハイブリッドシステムで走行し、DSGが目立たないように駆動する。DSGはピンポイントで正確にギアチェンジし、ほとんど目立たないよう実行する。

ゴルフの優れている点は、全体的に整ったパッケージだ: 快適なシャシー、スムーズでダイレクトなステアリング、優れたスペースコンセプトなどである。フォルクスワーゲンゴルフ8の今回のモデルは、セカンドラインスタイル(アルゴアクティブ運転席、アダプティブクルーズコントロール、「トラベルアシスト」、3ゾーン気候制御とナビゲーションシステム)を備え、31,905ユーロ(約398万円)という価格で提供されている。ID.3もまた、ゴルフとほぼ同様の装備を持ち、環境ボーナス(9480ユーロ)を差し引いた後の価格は29,506ユーロ(約368万円)となっている。

ID.3の航続距離は300キロ

ステアリングホイールのすぐ後ろにあるセレクターレバーをDに向けて前方にシフトする。
第一印象はなかなか素晴らしい。だがそれは、テクノロジーのことで、硬いプラスチック製のインテリアや、しばしば混乱するインフォテイメントのことではない。電動モーターは、リアアクスルに配置されており、ID.3は迅速に速度を取得すると同時に、ボディの動きを安定させ、乗客の姿勢を乱すことも防いでいる。ただしまだ乗り心地などは十分に熟成されているとはいいがたいのも事実だ。さらに優れているのは、ポルシェ タイカンのような「リラックスした」リカバリーだ。約1.8トンもある車体は、急停止するのではなく、数秒間転がり続け、ブレーキ(前部にディスク、後部にドラム)によるエネルギーの回復を開始する。テストドライブでは、オンボードコンピューターは、コンパクトモデルとしては、まあ充分と言える300kmの航続距離が可能なことを示している。100kWの直流電流で、75%(バッテリー保護)の急速充電には、約30分かかる。家庭用コンセントでは、24時間かかり、11kWで約6時間かかる。この面ではゴルフ8のほうがはるかに楽に長距離を走ることができる。

テクニカルデータ: VWゴルフ1.5 TSI
● エンジン: 4気筒ターボ、フロント横置き ● 排気量: 1498cc ● 最高出力: 150PS ● 最大システムトルク: 250Nm@1500rpm ● 駆動方式: 前輪駆動、7速DSG ● 全長×全幅×全高: 4396×2073×1491mm • 乾燥重量: 1366kg ● 燃費: 21.7km/ℓ ● 価格: 31,905ユーロ(約398万円)より

テクニカルデータ: VW ID.3
● エンジン: 電動モーター(PSM) ● 最高出力: 150kW(204PS) ● 最大トルク: 310Nm ● バッテリー容量: 58kWh ● 駆動方式: 後輪駆動、1速ギアボックス ● 全長×全幅×全高: 4261×1809×2070mm • 乾燥重量: 1794kg ● トランク容量: 385~1267リットル ● 平均燃費: 100kmあたり15.5kWh ● 価格: 29,506ユーロ(約368万円)より

結論:
ID.3としては、航続距離も良く、取り回しも良いが、出来栄えは中程度。また、価格や追加料金(サーチャージ)のポリシーは、あまり顧客に優しいものとは言えない。肝心なヒートポンプをはじめ、多くのエクストラは、パッケージとしてのみ入手可能という設定となっている。ゴルフは古典的に総合的には良いパッケージだが、先代モデルと比較すると一歩後退している。

比較テスト、と銘打ってはいるが、正直今回のレポートでは、どっちが勝ちなのか、忖度なしに正確には記されていない。しかし、どうやら今回の対決では、「まだ」ゴルフ8の勝ち、ということが、なんとなくわかる。ゴルフ8の完成度がまだまだ十分ではないことと、ゴルフ8の各種操作系が混沌としていて使いにくいことなどで、評価を下げてしまってはいるが、それでも、ID.3よりもまだまだすべての面でゴルフの地位はゆるぎないもの、なのだということは感じられる。そもそもID.3は安っぽい内装や、まだまだ十分に煮詰められていない走行性能などなど、ネガティブな面も多く、フォルクスワーゲン製の本格EVの第一歩だから仕方ないとはいえ、これから改善されるべき部分が多い一台、というのが今までのレポートで判明している。

そんなEVとガソリンエンジンモデルのゴルフを比較すれば、普通ならば圧倒的にゴルフの勝ち、となるはずだが、そうではないことも実は事実で、その理由は言うまでもなくゴルフ8の完成度がまだ先代ゴルフ7の領域にまで達していない、という、見過ごすことのできない点である。おそらく今回の比較テストにおいて、ゴルフ7の(普通の)1.2などを持ってくれば、圧倒的にゴルフの勝ちだったのかもしれない。だがそれも変な話であって、ゴルフ8がゴルフ7に負けるということはあってはいけないことなのではないだろうか。どうも最近のフォルクスワーゲンのクルマはどれも、以前のモデルほどのキレ味がない(つまり前のモデルのほうが良かった)、という意見を聞くことが多い。それは本来あってはいけないことであるはずだし、それがガソリンエンジンであろうと、EVであろうと、新しいクルマはより良い方向に進化しているべきだと思う。
 
フォルクスワーゲン ゴルフ8がまだまだ新しいEVに負けなかったことは素直に嬉しいが、手放しで喜んでいる場合でもないし、日本にフォルクスワーゲン ゴルフ8を導入することに関してもこんなに遅れてしまって、いったいどうなってしまっているのだろう、と不思議に思う。

Photo: Tom Salt / AUTO BILD
加筆:大林晃平