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【第44回JAIA輸入車試乗会】類まれなキャラクターと数々のアメニティーとともに楽しめる1台「ミニ クーパー 5ドア S」に試乗&レポート

2025年2月14日

JAIA輸入車試乗会で乗れる機会があった場合、できるだけ毎回、最新のミニは乗っておくことにしておる。いよいよ4世代目となり、その名もミニクーパーと名乗る青い4ドアの一台に今年も試乗させてもらえることになった。

今年乗らせていただいた「ミニ」は、その名も「ミニクーパー5ドアS」。以前にあった「ワン」というベーシックグレードはなくなり、ミニは全部ミニクーパーなのである。正式な自動車の名前がミニクーパーになったとは、ジョン クーパー親父も墓の中でびっくりだろう。

ちなみに今回のクーパー5ドアSは477万円の車両価格に、67万円のオプションが加わり、合計544万円であった。ミニはプレミアム商品なのだといつも思うが、だいたい100万円くらいはオプション費用を用意しておかないと購入できない。だがそういう部分こそがこの車の場合重要で、好きなオプションや色や柄(笑)を自由に選んで、自分らしい一台を購入してこそのクルマなのである。今回は2リッターの4気筒ガソリンエンジンに7速DCTが組み合わされた仕様で、もちろん前輪を駆動する。

でかいが意外と平板なエンブレム。もうちょっとお洒落な形とロゴであっても個人的には良いと思う。グリルに輝くのは赤いSバッチ

さて最新のミニクーパーに乗り込むとまず目立つのは中央の円形ディスプレイである。室内にメーター類は見当たらず、この大きなディスプレイとプラスチックパネルが起立したヘッドアップディスプレイに速度などが投影される。ものすごく太く複雑な形状のステアリングホイールではあるが、意外と握り感(?)は悪くないし、オフセットも少なく自然なドライビングポジションがとることができた……が……、その状態で前を見ると大きな丸形ディスプレイと妙にデザイン優先で天地の薄いルームミラーとの位置関係が近い。こんなにルームミラーとダッシュボードとが近い車も珍しいし、フロントウインドーの天地も大きくないので、なんとも独特な眺めである。これらをミニらしいといえばまあそうなのだが、くっきり眺めの良い視界ではない。同乗した男性(約50歳)は「これはないじゃないか!」と文句を言っていたが、閉所恐怖症の人に薦めることはできない感じではある。

大きく書かれた「クーパー」の文字に注意。今や全部クーパーなのだ!!

エンジンスタートもあえてキー風なスイッチをねじったり、オートマチックトランスミッションのセレクターも小さいスイッチだったり、パーキングのスイッチなどは世界最小といえるほどの小ささである。決して使いにくいとか危険とはおもわないが、走行に直接かかわる部分なので、もうちょっと大きくてもいいかなとは思う。

この写真だとわかりにくいが極太のステアリングホイールには驚くが、それほど握りにくいとは思わなかった。布のような生地で覆われたダッシュボードも映り込むことはなく、これはこれで悪くないが、妙に「剥げた」ような処理に、わざわざしているのには納得いかない。運転席前にプラスチックのヘッドアップディスプレイが起立しているが、これはそろそろガラスに直接映るようにするべきで500万円カーとしては納得いかない。Aピラーのハーマンカードンスピーカーはもちろんオプション。

そのくせ走行モードのスイッチはやけに大きく、ゴーカートモード、コアモード、グリーンモード、パーソナルモード、ヴィヴィッドモード、タイムレスモード、バランスモードと7種も選べる。さらにさらにそれらを選択するとオリジナルサウンドが流れたり、メーターのディスプレイデザインと色が変化したり、ナビの中に走るミニの絵柄までちゃんと変わる。もはやここまでくると自動車というよりキャラクターの宝箱のような変幻自在ぶりで、デートの話題には欠かせないアイテムではあろう。

特異な形状ながら、決して見にくくはないナビ。今は「グリーン」という走行モードのため、ナビ画面上のミニの屋根に「お花」が描かれている。こんな風にディテールは凝りまくり。

さてそんな色物部分を除いて、純粋に一台の小型車自動車として評価するのであれば、決してスペースユーティリティに優れているわけでもないし(リヤシートは狭いと言い切っても良いと思う)、性能面でも燃費面でそれほど特筆するほどのものはないし、どのモードを選んでも落ち着かない乗り心地に至っては落第点かもしれない。

常に揺すられるような乗り心地と大きめのロードノイズ、そしてステアリング形状からは想像できないような妙に軽い操舵感。正直言ってしまえば、実用で車を使う人には程度の良い中古のゴルフⅦでも3分の1以下の価格で購入した方がずっと幸せな感じの完成度である。

じゃあミニはダメか、買っちゃいけないクルマなのか、というとそんなことはまるでない。純粋に実用車としての自動車を探している人には、もっと他に選択するべきクルマは星の数ほどもあるからそっちを買えばよいだけの話である。

ミニが好きな人、ミニが欲しい人はああだ、こうだと小難しい論評を繰り返す有象無象のモータージャーナリストの文章など気にせず、迷わず買ってほしい。決して皮肉でもなんでもない、僕はその気持ちが良くわかるし、自分でもお金に糸目をつけず、自分なりのミニを購入していたい、と思い、夜な夜なコンフィギュレーションしてみることもある。とにかくミニが好きだったら、ぜひ購入して心から楽しんでほしい。

そしてそういう人にとってはこの類まれなキャラクターも、数々のアメニティーもきっと可愛いアイテムになるはずで、どうかそんなミニとの生活を楽しんで欲しい。自分らしさを主張した、色とりどりのミニが増えることで、白と黒と銀色のミニバンばかりが溢れている無味乾燥な街を少しでも華やかにしてくれるなんて、素敵じゃないか。

ブルーに塗られたミニクーパーS。もちろん色も内装もオプションも選び放題。悩み始めたらきりがない。
見慣れたせいもあり、4ドアのミニクーパーも違和感がない時代となった。このホイールのデザインは個人的に苦手だが、もちろんこの部分も選び放題。
かなりぱっつんぱっつんで硬い印象の215 40 R19 のピレリ。まあそれもミニっぽいと言えばミニっぽい……のかな?
センターコンソールの機械式スイッチは左から、オーディオのボリューム(とオンオフ)、走行モード切り替えスイッチ、イグニッション、オートマチックトランスミッションセレクター、パーキングスイッチ。これは今「タイムレス」というモードで走行中。
センターコンソールの小物入れも一風変わった形状。だがそのつくりとセンスは上質なもの。でもこのコンソールが何か機能を持っていたり、使いやすかったり、というものでは「ナイ」。
リヤランプの点灯のし方も変更可能というが、他の装備が盛沢山すぎて試す暇はなかった。菜の花も咲いて、春はもうすぐそこのような気もする。内燃機関のクルマなのに、まったくマフラーの類が見えないのにご注意。

Text: 大林晃平
Photo: AUTO BILD JAPAN