【第44回JAIA輸入車試乗会】プロ用ミニバン シャンパンゴールドに光り輝くメルセデス・ベンツV 220 d エクスクルーシブロングに試乗&レポート!
2025年2月13日

マイナーチェンジでフードマスコットのスリーポインテッドスターが付いたV 220 dに試乗することになった。大きさは、短・中・長のうちの中。グレードは最上級の、その名もプラチナスイートである。
メルセデス・ベンツVクラスが最初に日本に導入されたのは1998年のことだった。幸いにも最初のロットのV230で神戸まで往復する機会に遭遇したが、まず驚いたのは金庫を連想させるかのような頑強なスライドドアのつくりと(まだ電動ではなく手動だった)、取り外し可能なセカンド&サードシートの呆れるほど重く立派なことだった。いたずら心でシートアレンジを変えてみようと試みていたら、現在は重鎮モータージャーナリストの高平高輝氏に「キミのように非力でおっちょこちょいな粗忽者(ぼくのことだ)が扱うと、ギックリ腰になるか、怪我をするからやめておきなさい」と制止されたことを思い出す。


そんなV230をいざ運転してみると4気筒ガソリンエンジンは非力だったし、意外と路面によっては乗り心地が荒々しく、だがボディはどんな状況でもミシリとも言わなかった。そしてVクラスは他のミニバンのような甘口のクルマではなく、使用者や使い方を選ぶ道具なのだと思った。

それから四半世紀が経過し、今年のJAIA(輸入車試乗会)の一発目で乗らせてもらえることになったのは、最新型のメルセデス・ベンツVクラス、その名もV 220 dエクスクルーシブロング プラチナスイート(長い)である。シャンパン色に塗られた車輛の全長は5,140mm、全幅は1,930mm。今回のモデルはロングという中間の長さだが、これよりもさらに長いモデルとやや短いモデルもあり、3種類とも日本に導入されている。

なにしろプラチナスイートだからして明るいクリーム色の皮でしつらえられた室内は華やかで豪華である。その値段は13,550,000円也。1998年に乗ったV230は400万円を切っていたから、ざっと三倍以上の価格である。電動スライドドアはもちろんのことスライディングルーフもブルメスターオーディオシステムも、シートヒーターとシートエアコンを備え、電動で動くセカンドシートにはSクラス譲りのふっくらマクラも備わった今回のクルマの室内を見ると、1998年のVクラスなど区役所の待合室のような質素さである。


今回のVクラスが発表された時、個人的におっ!と思ったのはメルセデス・ベンツのスリーポインテッドスターのフードマスコットが起立していたことで、最近のメルセデス・ベンツではなかなか出会えなくなっているだけに、現金なものでこれだけでなかなかテンションが上がる。いざ走り出してみると2リッター4気筒ターボディーゼルエンジンと9速オートマチックトランスミッションの組み合わせは2.5トンのボディを過不足なく走らせるし、ステアリングも軽く的確でメルセデス・ベンツらしく回転半径も小さいことが嬉しかった。全体的に運転感覚はメルセデス・ベンツらしい、といっても良いと思う。

反対にやや残念だったことはフロントシート、セカンドシートを問わず路面によっては細かい振動を伝えることで、この面では日本のプレミアムミニバン(笑)の方が上手ではあると思う。そんな部分から、あのV230から25年以上が経過して値段も3倍以上になり内装は見違えるほど豪華になったが、Vクラスの本質は変わっていないということをあらためて実感した。日本の都市部だけで使われるという特殊状況下であれば、より乗り心地が良く感じられ、印象が良いのはトヨタ(あるいはレクサス)のミニバンのほうなのではないだろうか。そういう意味でもこちらは使い方を選ぶともいえるが、過積載ギリギリの人と荷物満載で、悪天候のもと、出発時間が迫る飛行機に間に合わせるため、やむを得ずアクセルを深く踏む……そんな逆境になればなるほどこの車の素質が明らかになってくる、Vクラスはいつの時代も働くクルマなのである。


乗車定員いっぱいのお客様と、人数よりも多い大型スーツケースと爆買いの紙袋を積み込み空港まで一目散に駆け抜けた後、Vクラスから降り立った「お客様」がふと車を振り返った瞬間目に映るのは起立したフードマスコットのスリーポインテッドスター・・・。演出としてはあざといまでに完璧である。
Text: 大林晃平
Photo:Auto Bild JAPAN