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【革命的なシャシー】アクティブ・サスペンション技術が大幅に進化したZFの「sMOTIONアクティブ・シャシー・ダンパー」の量産開始

2025年2月5日

パワートレインとシャシーコンポーネントの世界的メガサプライヤーのZFフリードリヒスハーフェンAG(以下ZF)は革命的なアクティブシャシー「sMOTIONアクティブ・シャシー・ダンパー」の量産を開始したと発表した。

ZFと言えば、オートマチックトランスミッションメーカーとしての認知度が高いが、自動車関連部品、技術を提供する、世界の自動車部品サプライヤーのトップ5に入るグローバル サプライヤーである。今回発表された「sMOTIONアクティブ・シャシー・ダンパー」をはじめ、電子制御シャシーダンピングシステムの開発においても25年の経験を持つ業界のリーダーである。

「sMOTION」は、運転状況に応じて正確にダンピング力を調整し、各ホイールに対して極めて迅速な垂直動作を行うことで、車両を積極的に持ち上げ、最適なロードホールディング性能を確保しながら、快適なドライビング体験を提供する。つまり、ブレーキング時にはリヤが下がり、加速時にはリヤが上がるのだ。

ポルシェのパナメーラとタイカンの一部車種にsMOTION アクティブ・サスペンション・システムの一部である、ダンパーとバルブ技術を使用した「アクティブライドエアサスペンション」が装備され、すでに非常に高い評価を得ている。Auto Bildは、革命的なシャシー技術と評している。

sMOTIONテクノロジーの新たな量産適応例として、ポルシェ パナメーラとポルシェ タイカンは、ZFのダンパー技術を「アクティブライド」シャシーに採用している。

自動車のシャシーにおいては、優れた動的特性と高水準の快適性を両立させることがしばしば難しい課題で、例えば急ブレーキを踏むと前のめりにフロントが下がり、急ハンドルを切ると車が傾くといった当然であったことが、sMOTION によって、ステアリング、ブレーキング、加速時のピッチングやローリングをほぼ排除できるようになった。

私たちの完全アクティブなsMOTION シャシーシステムは、特定の走行状況において車体の動きをほぼ完全に防止することができます。同時に、sMOTION 搭載車の快適性も大幅に向上します。
ZFの取締役、シャシー・ソリューション部門の責任者 ピーター・ホールドマン博士

ドライビングの快適性、ダイナミクス、安全性の基準を設定するsMOTION

sMOTIONのアクティブ・シャシーシステムは、ZFのアダプティブダンピングシステムCDC(コンティニュアス・ダンピング・コントロール)をベースにしており、2つの外部バルブがそれぞれ独立してダンパーの圧縮および反発方向を調整する。それによって、ダンピング圧力はそれぞれの運転状況に適応され、快適性とダイナミクスが向上する。

さらに、高性能オイル・ポンプを使用して、ピストン・ロッドを介してホイール・サスペンションをアクティブに動かすことで、電子制御システムは、路面の起伏が個々のホイールに与える影響を中和するべく働くので、コーナリング時においても、加速やブレーキの際にホイールの高さを補正または相殺することが可能となる。

ホイールのアクティブな垂直移動

sMOTIONは、ダイナミックな運転操作の際に特に威力を発揮する。 例えば、通常、コーナリングでハンドルを切ると車両は「傾く」が、sMOTIONを搭載した車両は、コーナリングの傾斜を速度に応じて自動的に調整し、「ヘリコプター・モード 」を生成して、車両の挙動をほとんど打ち消す。例えば、sMOTIONを搭載した車両は、アクティブ・ダンパー・システムを使用して、わずか0.5秒で車両を8センチメートル持ち上げることができるので、3トンの乗用車を、コーナリングフォースが1gまでほぼ水平に保つことが可能となる。

乗り物酔い:原因を最小限に抑える

このアクティブボディコントロールはスタビライザーを使用せず、車両のボディの垂直移動を防ぐことができるので、「乗り物酔い」の原因を排除できるという快適性の面で大きな可能性を秘めている。

ZFのエンジニアリング・プロダクトライン・サスペンション担当副社長であるトーマス・クッチェ氏は「私たちのシステムは、旅行中に読書や映画鑑賞をする乗客に主に影響を与える乗り物酔いをほぼなくすことができます。」と説明している。

ZFのシステム・ポートフォリオの拡張 – 25年歴史のCDC

sMOTIONにより、ZFは乗用車のステアリング、ブレーキ、シャシー向けのポートフォリオを拡充。これらの電子制御アクチュエーターを使うことで、ZFは車両の縦、横、垂直の動きを制御し、ソフトウェアによる統合システムとして機能する。

将来的には、これらの技術を組み合わせることで、ZF cubiXソフトウェアを使用して全体を調整できるネットワーク化されたシャシーシステムが実現する。ホールドマン氏は、「私たちは、部品だけでなく、システム全体を制御するソフトウェアでもメーカーをサポートできます」と述べている。

ZFは、セミアクティブおよびアクティブダンピングシステムにおいてトップテクノロジーサプライヤーの一つで、最初のCDCシステムが市場に登場してから25年が経過した。sMOTIONは最新世代のCDC技術であるCDCrciを使用しており、各ダンパーにリバウンドバルブとコンプレッションバルブがそれぞれ1つずつ搭載されている。

道路の起伏や穴ぼこなどの路面状態を瞬時にデータ化して、システムが特定の箇所を重点的に補正することで走行安定性を高めることが可能になる。「sMOTION」によって実現されたこの技術は、自動運転や自律運転が普及するにつれて、すべての乗員にとってますます価値のあるものになっていくだろう。

QRコードまたは以下URLから、ご自身のsMOTIONグラフィックビューを作成することができる。

https://neospace.io/L9bej

Text:アウトビルトジャパン
Photo:ZF