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【このE36 AMGカブリオなんぼ?】かつて3,300万円だった唯一無二の「メルセデスE36 AMGカブリオ ブラバス6.0」がオークションに出品された

2025年1月28日

メルセデスE36 AMGカブリオ ブラバス6.0(1995): メルセデスE36 AMGはそれ自体が珍しい車だが、特にブラバスによって大幅に改造されたこのA124は貴重な車だ。かつて40万ドイツマルク(3,300万円超)近くしたこの唯一無二の車がオークションに出品された!

このエレガントで控えめなメルセデス製コンバーチブルは、かつては新車の「フェラーリF355」の2台分もの価格だった。その理由は、メルセデス・ベンツのチューニングエキスパートである、ブラバスが「A124」を大幅に改造したからだ。改造費用だけでもかなりの額になった。このユニークなアイテムがオークションサイト「thembmarket」でオークションにかけらた。

1991年末から1997年にかけて、約34,000台の「メルセデスEクラス カブリオレ」が「124」世代で製造されたが、このモデルはそれらを凌駕している。今でも時代を感じさせないデザインの「W124」のオープンカーバージョンは、様々なエンジンを搭載して工場から出荷された。しかし、セダンとは異なり、オープンカーには8気筒エンジン搭載モデルは公式には販売されなかったため、さらなる高性能を求める顧客は、AMGを頼った。当初は、3.3リッター直列6気筒エンジン(M104 E34)を搭載した「300 CE-24 3.4 AMGカブリオレ」が提供され、最高出力は252馬力だった。1994年からは、3.6リッターの6気筒エンジン(M104 E36)を搭載し、272馬力を発生する「E36 AMG」が販売された。しかし、「E36 AMGカブリオレ」はわずか68台しか生産されなかったと見られており、「124」シリーズの中でも最も希少なモデルのひとつとなっている。

希少なE36 AMGカブリオレをベースに

ここでご紹介する「アズライトブルーメタリック」(カラーコード366)のエクステリアカラーを持つ個体は、1995年に特別装備「957 AMG」とともに工場出荷されたもので、「E36カブリオレ」の中でも最も高級な部類に属する。しかし、最初のオーナーにとっては、AMGの272馬力では十分ではなく、同年に彼はブラバス社のメルセデス専門家に特別な依頼をした。彼はより多くのパワー、大幅なパワーアップを望んだ。しかし同時に、「124」は見た目には控えめなままであるべきだと考えていた。

Eクラスカブリオレ(A124)のエンジンルームには、6.0リッターに拡大されたV8エンジンが収まった。バッテリーはトランクに移された。

ブラバスでは、直列6気筒エンジンが即座に降ろされた。その代わりに、その地位にふさわしいV8エンジン「M119」が採用された。このエンジンは、1995年5月のオファーからわかるように、「メルセデス SL500(R129)」から借用されたものである。しかし、それだけではない。ブラバスはありとあらゆる手法を駆使してV8を改良した。排気量は5.0リッターから6.0リッターに拡大され、新しいマニホールドが取り付けられ、エンジン電子制御および制御ユニットは「E500」から流用された。さらに、「A124」のフロントエンド全体を新しいエンジンに適合させる必要があった。その結果は今日でも印象的だ。408馬力、最大トルク560Nmという性能は、決して遅い車ではない「E36 AMG」の272馬力、385Nmという性能を大幅に上回るものだ。この「メルセデス・ベンツ E36 AMG カブリオ ブラバス 6.0(Mercedes-Benz E36 AMG Cabriolet 6.0 BRABUS)」の最高速度は電子制御により、控えめな270km/hに制限されていた。

メルセデス SL600のブレーキシステム

しかし、エンジン交換は始まりに過ぎなかった。大幅に強化されたパワーに対応するため、シャシー、ブレーキシステム、トランスミッションも改良する必要があった。控えめな外観に加え、オーナーは大幅に改造された「A124」をできるだけメンテナンスが容易な状態に保つことを特に重視した。例えば、「SL600(R129)」のブレーキシステム一式に大型のブレーキディスクを取り付け、メルセデス正規ディーラーのワークショップで理想的な整備ができるようにした。スペースの不足と重量配分の最適化のために、バッテリーはトランクに移された。ただ移しただけではなく、特別に作られたハウジングに設置されている。このような個々のソリューションは、ブラバスによる「A124」の改造の品質の高さを示している。

ブラバス製3ピースモノブロックIIIが、控えめな外観に完璧にマッチしている。

以前のAMGがどれほど控えめであるかが際立っている。視覚的なハイライトは、18インチの3ピース構造のブラバス製モノブロックIIIホイールだ。その他の視覚的な変更は意図的に避けられ、ボンネット下の巨大なV8エンジンを示す文字やテールパイプトリムさえもない。インテリアも、グレーレザー(コード268)で丁寧にリファインされただけだ。ウッド製のシフトノブ、ブラバス製フロアマット、油温計「Tempmatic」、そして最高速度270km/hに対応するため300km/hのスピードメーターが装備された。

元の価格は39万マルク(約3,250万円)以上

改造の複雑さゆえ、最終的な請求額は23万マルク(約1,920万円)近くになった。この金額はベース車両を除く改造費のみのものだ。1995年当時の新車メルセデスE36 AMGカブリオレの価格は約16万2,000ドイツマルク(約1,350万円)だった。つまり、合計価格は驚異的な39万2,000ドイツマルク(約3,260万円)だったのだ。当時、その金額で「フェラーリF355」の新車2台が購入できた。しかし、そのようなフェラーリは馬力も劣り(381馬力)、「ブラバスA124」と比較すると大量生産モデルでもあった。

ブラバスは、300kmまで目盛りがついたスピードメーターなど、インテリアにもわずかな変更を加えただけだ。このコンバーチブルは、走行距離107,670kmで販売されている。

この1台限りのモデルには、すべての書類、ハードトップ、5本(!)のキー(キーのバッテリーが切れると、オーナーはいつも新しいキーを注文していた)、およそ6万5,000ユーロ(約1,080万円)に上るメンテナンス記録が含まれている。2023年5月のトランスミッションのオーバーホールだけでも、約7,000ユーロ(約120万円)かかっている。

唯一無二のチャンス

世界中から集まるメルセデスコレクターにとって、ここにしかないユニークな機会が訪れた。ブラバス製の6.0リッターV8エンジンを搭載した「A124」は二度と現れることはないだろう。オークション終了まで数日を残し、最高入札額は約68,000ユーロ(70,000米ドル=約1,125万円)相当だったが、最終落札価格は189,320ユーロ(195,000米ドル=約3,030万円)に達した。

結論:
この特別なメルセデスは、通好みの車だ。「124」のカブリオレバージョンは、長い間、人気の高いクラシックカーであり、この車は、時代を超えたエレガントなデザインと、メルセデスが製造した最高のV8エンジンを搭載している。

Text& photo: Jan Götze