世界でたった1台 トヨタ スープラのロードスター その物語と裏話
2020年10月22日
トヨタ スープラMK4(1995): コンバージョン、レクサスSC 430ロードスター
おそらく世界で唯一のトヨタ スープラ ロードスターはこうして誕生した。伝説のトヨタスープラMK4からは、クーペ、タルガ、そして1台のロードスターが誕生している。その発端は一晩の飲み会であった。
レクサスといえば、誰でも普通はシンプルなリムジンを思い浮かべるはずだ。しかし、時折、トヨタのプレミアブランドは奇抜な、あるいは風変わりなショットで、人々に本当の驚きをもたらす。例えば、シューティングブレークIS 300スポーツクロスやハイブリッドコンパクトCT 200h。スーパースポーツカーのLFAも忘れられない。しかし、今までレクサスは、スープラMK4のようなスポーツカーのアイコンを作っただろうか。
スープラファンのアメリカ人、シャイン シュラウスビーは、スープラ ロードスターが存在しなかったので、彼の夢の車を自分自身で作ったのだった。彼の改造は、スープラとレクサスのフォーラムで大きな話題となり、多くの噂や憶測を呼んだ。我々は、後にこのスープラ ロードスターのオーナーとなり、Facebookグループ、「TheSupraRegistry」を運営するアンソニー レシーヌ氏から、このユニークな車の真相を聞いた。
500時間の作業時間をかけて改造
シュラウスビーは、2002年に飲み友達たちと数杯の酒を楽しんだ後、このコンバージョンのアイデアを得た。彼は自分の所有する2台のスープラを見て、なぜロードスターバージョンが存在しないのか、不思議に思った。そして彼はその浮かんだアイデアを実行に移し、自分のスープラの改造に着手したのだった。改造のベースとなったのは、2JZサクションと5速マニュアルトランスミッションを搭載した1995年式スープラクーペJZA80だった。シュラウスビーは改造作業のほとんどを自分で行った。彼がどのようにして作業を進めたのかは不明だ。わかっているのは、全体の改造には500時間という信じられないほどの作業時間を要したということだけだ。
ボンネットの下には、2JZ-GEと呼ばれる3リッターの自然吸気エンジンが残っていた。素晴らしいディテールは、フロントガラスのバックミラーの役割を引き継いだ8インチのスクリーンで、プレイステーション2に接続されていた。そしてシュラウスビーは、見る人の混乱を招くために、意図的にトヨタのロゴをレクサスのロゴに置き換えたのだった。リアのSC 440のレタリングは、レクサスのコンバーチブルSC 430をイメージしたもので、ハブキャップはレクサスのものを使用していて、幻想を完璧なものにしている。その結果はレクサスブランドに値するものになっていた。
高貴なロードスターから軽蔑的なパーツディスペンサーへ
スープラの再構築は、スープラのコミュニティで集団的な抗議を引き起こした。関連するフォーラムでは、避難轟々で、シュラウスビーに対して、真正面から敵意を持って攻撃した。世界で二度とトヨタ スープラ ロードスターが生まれないようにと。しかし、このプロジェクトが好きかどうかにかかわらず、彼の仕事には敬意を表すべきだろう。2010年、シュラウスビーは改造車を分割払いで販売した。数ヶ月後、購入者は分割払いができなくなり、シュラウスビーに車を返却したが、車の状態は荒れ果てた酷いものだった。シュラウスビーはその後、このロードスターを部品取りとして、他の4台のスープラのレストアのために活用した。
2014年、このローリングシャシーは、Youtubeグループ、「TheSupraRegistry」の運営者であるアンソニー レシーヌ氏の手に渡った。レシーヌ氏は手の込んだ手順でこのロードスターにタルガルーフを取り付け、その後、半完成車を再び売却した。レシーヌ氏によれば、現在のオーナーはこの車をさらに改造したいと考えているという。タルガのルーフはおそらく残るだろう。
いずれにしてもニューオーナーはエキサイティングな車であり続けることを約束すると言っているとのこと。そして私たちもいつの日かチャンスがあれば、ぜひ一度乗せてもらいたいと願っている。
現在のスープラ。タルガトップになるのだろうか、見ていて楽しい。
この時代のスープラの人気は驚くほどで、今やプレミアム価格で取引されている。その理由はもちろん、映画ワイルドスピードの影響だろうが、それだけではなく、おそらく熱狂的なスープラファンが世界中にいるということなのだろう。フェアレディZの時もそうだが、熱狂的なファンがいるということは大変良いことで、その車はクラシックとして、これから永続的に愛されるということでもあるし、車そのものもずっとこの世の中に存在できるということでもある。そんな貴重な車の屋根をちょん切ってしまうなんて、なんとももったいない、と思うか、愛するが故の行為なのかは、ちょっと判断が難しいが、出来上がった実車はなかなかいい感じで、そのバランスも十分に納得できる範囲であるといえるだろう。きっと苦労して作った完成度の高いスープラのオープンモデルを、わざわざタルガにするのもどうかとは思うが、そういえばその昔にはスープラ(セリカXXのころの)にもタルガは存在していたし、そのオマージュなのかもしれないな、と思うことにした。
現在のスープラも、ひょっとするとうまく屋根を切って?みると、なかなかいい感じのオープンができるかも、とも一瞬思ったが、そういう車はすでにBMW Z4として世の中に存在しているのであった。
Text: Moritz Doka
加筆:大林晃平