【動画付き】ここでしか観られない水陸両用車の世界 ―最終回― 

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パンサー ウォーターカー:この万能水陸両用車のエンジンは日本製!

ウォーターカーの値段とはいったいいくらくらいなのだろう? そんな疑問にまず答えよう。米国のパンサー ウォーターカー(Panther WaterCar)は時速70km/hで水中を駆け抜け、陸上では時速130km/hに達する。万能水陸両用車はシリーズ生産モデル。しかし楽しさにはコストがかる。

いかにもアメリカンな風景だが、一種のジョークだと思えばなかなか楽しい。一発芸の冗談のためには1400万円が必要。

元ネタがJEEPであることは一目瞭然。ただし格好いいかどうかは別。でもこのスタイルで水面を滑走していたならば注目度抜群だろう。
Photo: Werk

1999年以来、20年以上にわたって、カリフォルニアのファウンテンバレーに在るボディワークスチームは、究極の水陸両用車の開発に取り組んできた。数え切れないほどの時間をかけて試行錯誤し、数多の挫折を経験したあとで、ついに成功を祝い、27件もの特許を登録した。そして、その苦労が実を結び、「世界最速の水陸両用車」であるパンサー ウォーターカーが誕生したのだった。完全に運転可能で、泳ぐことができる「ウォーターカー」、米国で13万5000ドル(約1,400万円)の費用がかかるそうだ。

パンサーは塩水でもOK

「可能な限りステンレス素材を使用しました」とファウンテンバレーのボディワークスは言う。とはいえ、腐食を防ぐために、泳いだ後は真水で水洗いしなければならなかった。基本的に海での使用には何も問題はない。特別な運転免許証は必要なく、少なくともカリフォルニア州では誰でもこのような15フィートのモーターボートを運転することができる。ドイツでは(通常の運転免許証に加えて)、スポーツボートの免許証が必要だ。

泥? 砂? ノープロブレム! ウォーターカーはどんな路面状況にも対応できる。ちゃんと四輪駆動だからだ。 写真のように旗などたててお気楽に使うのが正しい乗り方。
Photo: Werk
JEEPそっくりであることはやや残念だが、こういう感じで軽く使う、遊びの道具と考えればなかなかいいかも(でも後ろのような大きい家に住んでいるのであれば、すでに豪華クルーザーくらいは所持していそう。そう考えると、これは「大人のおもちゃ」なのである)。
遊園地の乗り物ではない。これはちゃんとした商品なのである。
水上スキーにも好適。なんとなく変な感じがするのは、きっと気のせい。
Photo: Werk

カリフォルニアのスクリュードライバーが作ったのはなんともかっこいい作品だ。 ストリートでもビーチでも水辺でも、暴れまくる。3.7リッターのホンダVTECエンジンによりそれは少なくとも130km/h、道路上で加速することができる。しかし、パンサーがビーチに向かって侵入するとき、それは本当にエキサイティングになる。単にギアを取り出し、ボタンを押すだけで車輪を押し上げ、パンサージェット(ウォータージェットドライブ)のスイッチをオンにすると、両生類は、最大70km/hで水を割いて躍動する。
水上スキー? 
ヨットを追い越す? 
釣り? 
すべてが問題なく可能だとメーカーは自信をもって言う。車からボートへの変更は15秒以内に完了するという。

ビーチから豪華クルーザーまで行くための、軽いノリのボート、と考えればしゃれが利いていていいのかも。
ワンオフではなく、ちゃんとたくさん生産してまっせ、という写真。アメリカに多く見られる、こういう水路などではいい乗り物なのかも。
きわめてアメリカンなショット。釣りにも適している、というイメージなのだろうが、だったら最初からプレジャーボートを買うべき(釣りに使うには、絶対的にスペースが狭いから)。
ハニー、楽しかったわ、チュ♡、みたいなカット。遊園地の乗り物のようなドアなど、いまいち安全性などは心配だが、そんなことを気にしていては水陸両用車には乗れません。
Photo: Werk

【その他】

一見まるでボートだが、よく見るとタイアが変な角度でついているではありませんか……。
アメリカのギブス社も冒険的な乗り物を製造している。2012年には、「フィビアン(Phibian)」と「ハムディンガII(Humdinga II)」という2台の水陸両用構造物を発売した。前日のJEEPもどきの水陸両用車よりもはるかに本格的。スタイルもそんなに悪くない。
Photo: autobild
細いタイアが印象的だが、この方が収納しやすいのかも。駆動系や水上用の推進器など、かなりちゃんとしているのにご注目。まるでボートにタイアを後付けしたような感じではあるが。
陸でも水中でも、人や物を運ぶ。そして、可能な限り迅速に。陸上では少なくとも100km/hという性能を備えている。ギブスによれば、水の中で約50km/hで航行できるという。
救命用ボートといっても通じるカット。タイアの上下機構がどういう仕組みか全く不明だが、おそらく油圧か何かと思われる。救命胴衣は言うまでもなく必須。
Photo: autobild
いってみれば水中翼船。速度を上げることにより、水面上を滑降するような乗り物である。サイドの部分に開発に協力した企業のロゴが見られる。
スイスのシンクタンク、「リンスピード(Rinspeed)」も少し前に水陸両用車を考えた。その結果がこのスプラッシュだ。ドライバーが強くアクセルを踏んだ場合、スプラッシュは60センチの高さ、80km/hで水の上を「飛ぶ」。これは、ボタンを押すだけで展開する複雑なウィングシステムによって可能になる。
これだけのものをちゃんと動かすにはかなりの努力が必要なはず。推進用プロペラが妙にかわいらしい。
「レーシングボート状態」には広いスペースが必要で、適した水域でしか使用できない。浅い水の中を滑走しながら時速50km以上の水しぶきをあげる(おそらく乗員もずぶぬれ必至)。
本当にものすごく複雑で、スペースを必要とする構造だが、まじめにこういう車を作る情熱だけは認めたい。
どういう意味のカットかよくわからないが、サービスカットなのだろうか。
全体的に格好いいかといわれると、やっぱりどことなく両生類的なにおいのする不思議な自動車だ。
外皮は超軽量カーボンで構成されている。船尾のフラップは船のプロペラを隠すためのもので、水深に応じてプロペラを伸ばすことができるようになっている。
リンスピードの原動力。環境に優しい天然ガスはウェバー社の0.75リッターターボの2本のシリンダーに供給されている。つまりこれは、ガソリン車ではないのである。
低めのフロントガラスは、ドラフトを防ぐために設計されている。スピードスターは上陸時には時速200km/hまで達するというが、走行安定性などは大いに疑問だし、安全性にも心配点は多い。
楽しいアクアプレーニング。リンスピードは、80km/hで水の上を走る。
ただし波にはからきし弱そうなので、外洋に出てはいけません。
水中世界も驚愕。人魚たちも触りたくなる(この広報写真もCGではなく、ちゃんとお金をかけて撮影していることに注意。人魚が4人も写っている)。
ベテラン水陸両用車。VW製のスイミングカーは、第二次世界大戦で使われた。24.5馬力という出力は、性能的には物足りないものだった。
一度は皆さんも、どこかで見たことがあるであろう、シュビムワーゲン。こんなものを真剣に開発していたドイツ人は、実は水陸両用車が大好きだったのかもしれない(アンフィカーもドイツメーカーだったし)。
アンフィコーチ(Amphicoach)製の水陸両用観光バス。50名の観光客を乗せて水上と路上を行き来できる。
Photo: Werk
わが国でも最近人気の水陸両用車バスによるツアー。海外では結構昔から人気だが、このモデルは完全クローズドボディなのに注意。
この水陸両用バスは、マルタ島の首都、ヴァレッタで使われていて、観光客を乗せて地中海を楽しく泳いでいる。アンフィコーチは、当然のことながら、見た目の美しさよりも、機能を優先する。強く傾斜したフロントは、水の中に多かれ少なかれエレガントにスライドするために必要だ。フラットな構造は、水の中に入る際に車両が転倒するのを防ぐ。海上では、イヴェコ(Iveco)製のディーゼルエンジンを活用したタービンユニットが推進力を発揮する。要望に応じて、この機械は250~300馬力を発生する。
Photo: Werk
上部構造がなければ、水泳バスはいかだのように見える。海での衝突事故があっても、アンフィコーチのフロントは強化されているため、安全性は保証されているはずだ。さらに、ライフジャケット、火炎放射式シートベルト、自動エンジン停止装置が標準装備されている。これはおそらく開発中のスナップだが、なんとも変な感じの写真である。

YouTube動画で豪快な水陸両用車の世界をお楽しみください

今回で水陸両用車の楽しい世界は一応終わりだが、またこういう車が世の中に登場したらぜひ紹介したい。まだまだ自動車の世界は楽しく、可能性はたくさんあるのだから、これからもきっと私たちを楽しませてくれる車が登場してくるはずである。

Text: Maike Schade, Daniela Pemöller
加筆:大林晃平