パサートが欲しい!新型「VW パサート(B9)」が日本上陸
2024年12月29日
フォルクスワーゲン パサート(Volkswagen Passat):9代目となるVWパサートが日本上陸を果たした。我々は、その中でも注目のプラグインハイブリッドモデルの「VW Passat eHybrid Elegance」に試乗することができた。
VWパサートは1973年、ゴルフより1年先にデビューした生誕51年を迎えたフォルクスワーゲンのメインストリームである。販売台数も3400万台とゴルフよりも多いのである。2022年のデータではティグアンが1位で、パサートは2位。ゴルフは5位なのだ。
日本には「サンタナ」の名前で2世代目のパサートが販売され、3世代目(B3)からパサートとしてセダンとステーションワゴンが販売されてきた。また、細かいことになるが、パサートはビッグマイナーチェンジで型式を変えてきたので、シャシーを含むフルモデルチェンジでカウントすると「B9」は7代目とも言える。
この新型でステーションワゴンのみとなったが、名称は「パサート ヴァリアント」でも「パサート ワゴン」でもなく「パサート」である。セダンが廃されたのが残念でならないが、時代の流れには逆らえないといったところか。
50ミリ延長されたホイールベース
新しくなったシャシーからみていこう。プラットフォームは定評のEQBの進化形「EQBevo」となり、ホイールベースは先代より50mm長い2840mmとなった。スリーサイズは4915mm×1850mm×1500mmで先代より145mm長く、20mm幅広い。横から見ると明らかに長く、それは室内長にしっかりと反映されている。
新開発のDCCプラスと圧縮・伸側2バルブ技術により、パサートは先代モデルよりもさらにバランスが取れている。
経済的なエントリーレベルのガソリンエンジンを搭載
「eTSI」は、150馬力の1.5リッター4気筒DOHCガソリンターボエンジンと48ボルトのベルトスタータージェネレーターが搭載された。この小型電動モーターは、動力を呼び出す際に内燃エンジンをアシストし、ガソリンエンジンのスイッチを完全に切って惰性で走行することもできる。トランスミッションは7速DSG。この組み合わせで、燃費はリッターあたり18.5kmとなっている。
「TDI 4MOTION」は193馬力の2リッター4気筒DOHCディーゼルターボエンジン。7速DSGとの組み合わせで、このディーゼルバージョンの燃費は、リッターあたり16.4km、400Nmという十分なトルクと驚くほど滑らかな走りが期待できる。
プラグインハイブリッドは142kmの電気のみでの走行が可能
「e-Hybrid」は最高出力150馬力の1.5リッター直4インタークーラーターボエンジンに電動モーター、6速DSGを組み合わせた、システム出力204馬力のプラグインハイブリッドモデルである。25.7kWhのリチウムイオン電池を採用して、電気だけでのEV航続距離は142kmとされている。
パサートが欲しい!
日本導入となったのはマイルドハイブリッドの「eTSI」、ディーゼルの「TDI 4MOTION」プラグインハイブリッドの「e-Hybrid」の3タイプである。試乗にあたては、B9の目玉とも言うべきプラグインハイブリッドの「VW パサート e-Hybrid Elegance」を選択した。
我々は車を運転して思った。パサートが欲しい!クルマに座ってエンジンをかけ、最初の数メートルで思い知らされた。パサートは堂々と、安全に、静かに、そして遊び心たっぷりに走るではないか!
1.5リッターエンジンはフル加速したときにも存在感を伝えてくる。そして、レッドゾーンに向かってかなり熱心に、そして特に自信をもって突っ走る。排気量がもう少し大きければ、走りのスムーズさとノイズの発生が改善されたに違いない。それでもパーシャルスロットルでクルージングしているとき、「e-Hybrid」はとてもお行儀がよく、振動もなく、ゆったりとうなる。
パサートは伝統的に空力性能が高いのだが、新型のCd値も注目に値する。多くの微調整、フロントエプロンのエアカーテン、新型エクステリアミラー、ルーフエッジスポイラー、リアの流線型形状などにより、0.25(先代: 0.3)となっている。それにともなって、VWは車内の制音声も高く、ロードノイズはほとんど聞こえない。
さらに高まったボディ剛性と、4輪独立で可変制御するDCC Proによって、フォルクスワーゲンに共通の直進安定性に加えて、パサートは決して不正確さやスポンジーささえ感じることはなく、高速コーナリングはもちろん、つづら折りのカーブもハンドル操作に従って安全にクリアしていく。明らかに先代よりも走りの質が向上していることがわかる。
王子様のリアシート
インテリアデザインは、パサートにすっきりとした印象を与えている。操作はシンプルで、使用されている素材は高品質だ。ステアリングコラムのギアセレクターは「ID.4」と共通の奥と手前にひねるタイプで、あらかじめ知っておく必要がある。
仕上がりには多大な努力が払われ、インテリアの素材は細心の注意を払って選ばれている。どこを見ても、新型パサートのすべてが非常に上質な印象を与える。
シートは骨盤と上半身に理想的にフィットし、ダイナミックな運転状況でも安定したサポートを提供し、十分なサポートとリクライニング面を提供する。室内はフロントとリアに十分なスペースが確保されており、背の高い2人でも後ろにゆったりと座ることができる。ホイールベースが5cm延長されたことで、膝とフロントシートの背もたれとの間に手のひらほどのスペースができたことがよくわかる。
リヤドアパネルはソフトな素材で張り上げられ、より居心地のよい雰囲気になっている。パサートの後部座席に座るのをこれほど楽しんだことはない。我々はその広さを“王子様”と評価している。
「パサート ヴァリアント」のリアハッチの傾斜は以前ほど急ではなくなったが、ボディが長くなった分、トランクルームは広くなって容量は690リットル。以前より40リットル大きくなっている。リアシートのベンチを倒せば、1,920リットルまで収納できる。新型「Eクラス エステート」は最大1,830リットルだ。
新しいインフォテイメントシステム
ギアセレクターレバーがIDモデルのようにステアリングコラムに配置されたことを気に入るかどうかは、あなた次第だ。いずれにせよ、センターコンソールはよりすっきりした印象で、スマートフォンなどを置くスペースも広くなっている。
そういえば。VWはインフォテインメントシステムも見直した。これは現在「MIB4」と呼ばれ、音声アシスタントIDAをさらにわかりやすくしている。ドイツではChatGPTも年内にパサートに導入される予定だ。これは運転には実用的ではないが、VWに質問したくなるようなエンターテインメント性を提供する。
価格
車両本体価格
e TSI Elegance Basic:¥5,248,000
e TSI Elegance:¥5,530,000
e TSI R-Line:¥5,764,000
TDI 4MOTION Elegance:¥6,224,000
TDI 4MOTION R-Line:¥6,458,000
eHybrid Elegance:¥6,559,000
eHybrid R-Line:6,794,000
CEV補助金
eHybrid EleganceとeHybrid R-Line:¥550,000
ハーマンカードン製のパワフルなサウンドシステムと大型パノラミックルーフがセットになったラグジュアリーパッケージ。DCC Proパッケージは欲しいところだ。
結論:
その存在さえ危ぶまれたVWパサートがステーションワゴンに集中開発したことで大きく進化した。その完成度の高さによって、選択にあたっては、どの駆動方式を選択するかは問題ではない。予算と好みで決めれば良い。あえて言うならば、ガソリンエンジンの排気量が足りないことだ。
フォルクスワーゲンは「パサート(B9)」で進化したプラットフォームとシンプルなデザインを採用し、ボディ剛性を一層高めて高級感、安心感を上げてプレミアム感を向上した。そして、ライバルの「メルセデスCクラス」や「BMW 3シリーズ」にコストを含めたトータルでは断然優位に立ったと言えよう。ドイツAuto Bildのテスターの評価も非常に高かったことを加えておく。
Text&Photo:アウトビルトジャパン