【このクルマなんぼ?】ちょっと高額なユーズドカー8台には、本当にこれだけのお金を払う価値があるのか?
2020年10月5日
本当にこれだけ多くのお金を払えば高品質のユーズドモデルを手に入れることができるのだろうか?ちょっと古いユーズドカーのために25,000ユーロ(約312万円)?その金額なら、素敵な新車が十分買える。中古車にそれほどのお金を投資する価値があるだろうか?我々が8台の高価なユーズドカーで検証する。
ポルシェの場合、ユーズドモデルも高価だが、非常にしっかりしている
非常に高価な中古車は、ポルシェ911(タイプ991)で、最低でも6万ユーロ以上の予算が必要となる。2011年から製造された7代目は、日常車とスポーツカーの良いとこ取りをしている。多くの人にとって911は、ボディ、エンジン、テクノロジーのどれをとってもオールラウンドに魅力的な車だ。そして、我々の中古車検査の報告書の結果を見ると、991型がほぼ無難な中古モデルであることがすぐに明らかになる。すべてのカテゴリーにおいて、991は模範的な成績をおさめている。そしていくつかの分野では第一位を獲得している。これは、車両の質の高さだけでなく、多くのオーナーが車にかけるメンテナンスの努力にも起因している。走行距離よりもそれまでの経歴や程度を重視したほうが良いと思う。
X5、X6には弱点が1つある
価格は28,500ユーロ(約356万円)からとなっており、より新し目のユーズドBMW X5でも、象徴的なスポーツカーである911よりもはるかに安い価格で購入することができる。X5 Mが欲しければ、あと数千ユーロ上乗せしなければならない。それは大金だ。そしてその上に、X5またはその兄弟X6には、高価なメンテナンスが付いてくる。しかし、X5とX6のどちらも、多くのスペース、高い俊敏性と非常に良い運転の快適性に加えて、良い基本的な装備と、より高い装備レベルでは、豪華さを提供している。重厚なSUVは、我々の中古車検査でも好成績を収めている。しかし、3代目(F15/F16型、工期2013年~2018年)には、早い段階で車軸のサスペンションに問題が発生する。アクスルコンポーネントやスプリングの破損は、平均よりも頻繁に発生し、新しいオーナーにとっては、高価なワークショップの請求につながる可能性がある。
以下、人気のモデルのユーズドカー8台が本当にそれだけのお金を払う価値があるかどうかをレポートする。
まずはアウディTTから。
アウディTT(Type FV)
プレミアム品質とプレミアム価格を備えたシックなスポーツカーが、アウディTT(Type FV)だ。2018年にフェイスリフトを受けた、2014年から製造されたクーペは、多くのドライバーを喜ばせるだけでなく、我々の中古車チェックの検査官をも喜ばせる。結局のところ、美しく見える車は本物の模範生であり、一般的な検査ではトップマークで感動を与える。しかし、耐久性のある技術と良い仕上がりにはお金もかかる。低走行距離でよく整備されたTTの場合、少なくとも19,000ユーロ(約237万円)の予算を持っている必要がある。それは決して安い金額ではないが、ドイツ製の他のスポーツカーは、はるかに多くの費用がかかるのも事実だ。アウディTTの2世代目。初期モデルよりデザインのインパクトは減ったものの、TTがなくなってしまった今となってはなかなかいいのではないか、と思うようになってきた。アウディの常で細かいトラブルは出るかもしれないが、パーソナルな足として洒落ている一台だと思う。実用性も十分高い。
アウディA4/A5(Type B9)
平均走行距離が多いにもかかわらず、アウディA4とA5(Type B9) は、我々の中古車検査のレポートではクラス最高の車の一つだ。2015年以降に製造されたタイプB9では歯がみするような問題は知られておらず、賞賛に値する。1つだけ欠点がある。驚くべきことに、製作年度が新しいA4とA5ほど、摩耗したホイールサスペンションが目立つことが多々ある。それを除けば、頑丈なインゴルシュタット車について批判すべき点は何もない。他のミッドサイズセダンや社用車はもっと安い価格で販売されているが、プレミアムプライス(ドイツでは)にはそれだけの価値がある。日本では値落ちしやすいクルマだが、A3セダンなどよりも、「ホンモノ」のアウディを感じさせるのはこちら。クアトロも手ごろな価格で買えるし、全天候型実用セダンとしてはかなりレベル高い。IQも高そうに見えるし、このサイズのセダンの中ではおススメできる一台である。オプションの多くついたものほどお得感が強い。
BMW X5/X6 (Type F15/F16)
クーペのような兄弟車であるX6と同様、中古のBMW X5(Type F15/F16) の安い掘り出し物も期待できない。中古車市場での供給は大きいが、購入希望者は、2018年まで生産されたF15/F16シリーズのためには、少なくとも28,500ユーロ(約356万円)の予算を持っている必要がある。高い購入金額に加えて、しかし、X6だけでなく、X5の特定の弱点が早期に明らかになるので、余分に予算を持っておくことをお勧めする。それは多くの人々から絶賛されている高性能SUVのシャシーだ。それは性能的には優れているのだが、多くの場合、耐久性に問題がある。すべてのモデルイヤーに、中古車チェックの検査官は、平均以上の数の車に不合格のスタンプを押している。日本でもX5の流通数は多く、それこそピンからキリまである。激安車は走行距離も多くお勧めできないが、そこそこ(300万円くらい)出せば、なかなか程度のよいものも多い。実用性もX5は高いが、X6は正直言って狭いし、荒く乗られた車も多いので、おすすめは「ごく普通の」程度の良いX5である。
メルセデスSLC(Type R 172)
2016年のフェイスリフト以降、メルセデスSLKは、現在SLC(Type R 172) と呼ばれている。しかし、SLCが堅持し続けているものは、その品質だ。メルセデスSLCは、目立った特徴なしに、主な検査に合格する。保存状態の良いSLCに少なくとも17,000ユーロ(約212万円)を投資する人は誰でも、この堅実な車両を楽しむことができる。したがって、もしリーズナブルな値段で、ロードスターの良いレベルでの楽しさを求めている人には、ぜひSLCを見てみてほしい。 SLCと言うと、つい昔の優雅なクーペを思い出して、ピンとこないが、SLKが改名してSLCになったのだった。本家本物の?SLCと比べるとなんだか拍子抜けするが、気楽に乗るには手ごろなサイズだし、SLに間違われるようなデザインも決して悪くはない。性能もそこそこだが、あまり細かいことを気にせず、常にオープンにして、サンダルを履くように気軽に乗ってみてはいかがだろうか?日本でもそこそこの価格で売られている。
メルセデス・ベンツ GLC
このクルマに関して、これ以上の賞賛は不可能だ。メルセデスGLCは、今年の我々の中古車テストで、最優秀SUVに選ばれただけでなく、総合優勝にも選ばれた。技術的にはCクラスW205をベースにした、ミッドサイズSUVは、一般検査で最高の成績を収めた。2015年に、角張ったGLKに代わって登場したGLCを上回るパフォーマンスを見せた車両は他になかった。ちなみにGLKも総合優勝となり、二重の勝利となった。GLCの難点はその価格だけだ。その優秀さから、中古でも非常に安定した価値があり、3万ユーロ(約375万円)未満では入手できない。メルセデスベンツの数多いSUVラインナップの中でも実用性と性能のバランスが取れているのがGLC。おすすめはもちろんディーゼルエンジンモデルで、Cクラスよりもヘッドクリアランスなどのスペースユーティリティが高いため、日本でも使いやすいサイズのこちらを選ぶ人が多いのもうなずける。中古車でついAMGモデルなども気になる人が多いことはわかるが、標準的なGLCのほうが安楽で家族にも好評なはず。
ポルシェ911(Type 991)
ポルシェ911は、多くの人にとって絶対的な夢の車だ。所有者は誰でも、通常平均以上の状態を維持している。これは、技術的な観点から恐れることがまったくない中古車の購入者にもメリットがある。技術的には、2011年から2019年までに製造された911(タイプ991)は絶対に堅実かつ頑丈だ。我々の中古車テスト検査員は、第7世代の911(タイプ991)に欠陥を見つけることはない。しかし、当然のことながら、中古であっても、高品質車には多くのお金がかかる。そして、ポルシェのような名門モデルともなると、より高くなってしまう。911を買おうという人にああだこうだ言うのはやめておこう、と常々思っている。911の中でも人それぞれに「理想の911」は違うわけだし、年式も、ボディタイプも、駆動方式も、ミッションも、組み合わせは星の数ほどあり、どの911が欲しいのかは、その人の価値観によって決められるべきである。日本だけではなく世界的に911は価格下がらないし、とにかくあなたが欲しい911をしっかり見据えたうえで、一番気に入った車を丹念に選ぶのが正解だ。911の中古の話は、それでオシマイである。
ポルシェ カイエン
大きくて重いSUVは、ほとんどの場合、シャシーと格闘する必要がある。しかし、ポルシェ カイエンにはこの問題は存在しない。7年後でも、そのアクスルサスペンション、アクスルスプリング、ステアリングは平均以上だ。他のHU関連の領域でも、2010年から2017年までに製造されたポルシェは、競合他車よりも大幅に優れたパフォーマンスを発揮する。しかし、カイエンもベストな面を発揮していないエリアが1つある。比較的若い中古モデルでも、エンジンブロックとトランスミッションからオイルがこぼれることだ。日本でもカイエンの中古物件は激安から高値まで、本当に幅広く存在するし、どれがベストかと聞かれても、程度や年式で全然違うので、一概にこれ、ということは言えない。一つだけ言っておくならば、タイア交換やブレーキメンテナンスなど、それなりの金額は必要となるので、安いからと迂闊に手を出すと維持できなくなる場合もある。重く高性能な車というのは常にそういうものなのである。
VWトゥアレグ
VWトゥアレグは、地味で気楽、オフロードに強く、路上では快適だ。しかし、残念ながら、中古でも、このオールラウンダーはお買い得ではない。ユーズドトゥアレグの購入に興味のある人は、その最悪の悩みに特に注意を払う必要がある。オイルのトラブルだ。すでに早い段階で、それは大きなSUVのエンジンやギアボックスから滴り落ちる。2010年から2018年までに製造されたタイプ7Pのブレーキは、常に我々の中古車テストの検査官から厳しく減点されている。例えば、フットブレーキの機能については、通常よりも多くの苦情が寄せられている。一方で、トゥアレグのライティング、アクスルサスペンション、アクスルスプリング、ダンピングは全くもって問題ない。ポルシェ カイエン同様(というか、ポルシェ カイエンの兄弟車なのだから当たり前だが)、大きく重いので、タイアなどの維持費は結構かかるが、地味でよければ日本では圧倒的にカイエンよりもお得感は強い(値落ちが激しい)。もちろんポルシェというブランド力が備わっていないのだからあたりまえではあるが、クリーンなデザインなどは(個人的には)、こちらのほうが好みである。だがフォルクスワーゲンとはいっても、街で見ると「今のフォルクスワーゲンはでかいなぁ」としみじみ感慨を抱くほど大きいので、自分の家の駐車場事情とまずは相談してから探すべきだ。
Text: Adele Mose
加筆:大林晃平