【Love me tender】威風堂々 ラグジュリアスでエレガントなフルサイズSUV「キャデラック エスカレード スポーツ25thアニバーサリーエディション」との夢の5日間
2024年11月19日
生前、徳大寺有恒巨匠は、「キャディラックの伝統はエレガンスと趣味の良さである」と言った。GMジャパンの協力の下、我々、Auto Bild Japan編集部は、今回、最新の「キャデラック エスカレード」に乗ってエレガンスを見つける旅に出た。
毎年、二月に行われている、JAIA(日本自動車輸入組合)が開催している「輸入車試乗会」で、試乗車リストに名前を見つけたら、必ず選択する一台がキャデラックエスカレードで、キャデラックが大好きな人と一緒に乗っては、至福の時を満喫している。冬の相模湾を見ながら、西湘バイパスを文字通りクルーズしていると、豊かな時間という言葉が染み出てくるような思い出が心に残る。だが試乗の持ち時間は短く、かぼちゃの馬車の魔法が解けるように、あっという間に試乗時間は終わり、後ろ髪をひかれるようにキーを係の方に返却していたものだった。
いつかゆっくりとエスカレードに乗ってみたいとわがままを言っていたら、GMジャパンの粋な取り計らいで、なんと5日間も貸していただけることになった。しかもエスカレードの25周年を記念して発表された、日本市場限定15台の「エスカレード スポーツ25thアニバーサリーエディション」のおろしたての新車だという。我々のような者に、キャデラックの新車を5日も預けていただけるとは、GMジャパンの豪胆かつ太っ腹さには頭が下がる思いだが、千載一遇のチャンスだし、断ることなどもちろん念頭にないので、りんかい線に乗ってGMジャパンの入っているビルまで、うやうやしく取りに行くことにした。
「キャデラック エスカレード」を見た人は必ず「大きい」、「でかい」、「すごいなぁ」と口にする。「すごいなぁ」は正しいが、「大きい」は日本国内で見るからであって、生まれ故郷のアメリカで見るエスカレードはなかなか適正サイズ(よりはやや大きいが)だと思うし、このくらいでああだこうだ言っては、キャデラックの生みの親のヘンリー マーティン リーランドに怒られるだろう。生まれた環境が違うのだから。
もちろん全幅2065mm、全長5400mmという絶対的なサイズは大きいかもしれないが、借りた翌日にはすっかり慣れて、あまり気にならなくなってくる。これはキャデラックが生来持っている、誰にでも使えるわかりやすい操作性などに起因することでもあるとは思うが、とにかく日本でも都市部を離れれば、狭い路地裏や極小の駐車スペースに入れる時以外は、それほど心配したり恐れたりすることは必要ない、というのが今回一番感じたことであった。
但し、ガソリンスタンドの洗車機には入らないことがほとんどなので、手洗い洗車を選ぶことは必須となる。その場合、今回約5,000円(室内清掃を加えると7,500円)が必要であったことだけは伝えておきたい。
エスカレード スポーツ25thアニバーサリーエディションの特徴はエンブレムを含めてブラック塗装となること。キャデラック クレストもモノトーンのものが装着される。全長5,400mmと十分に大きいが、本国にはさらに長いロングホイールベース版もある。
実際に走り出してしまえば、アメリカ車の魅力を凝縮したような、安楽で平和な空間は、一切の屋外の環境とは関係なく粛々と移動する。6,156ccで、416馬力と624Nmをエンジンは発生しているはずだし、それを10速(!)ATが巧みに変速しながら走っているはずだが、そんな数値などどうでも良くなってくる。
走行中にはV8エンジンは8気筒、6気筒、4気筒、2気筒(!)と、状況に応じて、ものすごい速さでコンピューターが演算しつつ、気筒休止しながら動いているし、それを4輪駆動と2輪駆動を自動的に切り替え、さらにマグネティックライドコントロールとエアライドアダプティブサスペンションが巧みに制御を繰り返しながら働き続けているはずなのだが、ドライバーがなんとかその違いを感じ取ろうと努力しても、結局最後まで変化や作動状況を感じ取ることは一切できなかった。
ドイツ車や日本車ならば、喜んでそういったデバイスの作動状況をメーターパネル等に表示させるはずだが、かなり時間をかけて探してもそういったインジケーターを表示させるモードは見つからず、おそらくそういう表示機能はないのだろう、と思う。だがそれは不親切という意味ではなく、ドライバーに過剰な情報を与える必要などない、という設計者の判断によるものであることは言うまでもなく、キャデラック開発者の選んだその哲学は正しいと思う。実際、クルマにまかせておけば、なんの不満も不都合もないのだし、それがどう作動しているのか分からないほどに機能していることこそ、熟成した機構といえるのだから・・・。
なお6.2リッターV8エンジンを搭載した2.8トンもの自動車と聞くと、燃費を心配してしまうが、今回は400kmほどの走行距離を、途中大柄な成人男性を6人乗せて長距離移動し、雑踏の街中も這いずり回ることもあったが、総平均で約7km/lの成績であった。物理的な大きさや快適さを考慮すればこれは、決して悪くないと個人的に感じた。たまに275/50R22という大径サイズのタイヤがその重さを伝えることはあっても、あとは徹頭徹尾快適な巨大な空間が保たれることを考えれば、優秀でさえあるといえる数値ではないだろうか。
エスカレードのセンターコンソールには、冷凍庫にも切り替えることのできる冷蔵庫が備わっている。実際にアイスクリームを数個購入しその効果を確かめてみたが、数時間たってもアイスクリームは溶けなかったし、飲み物はキンキンに冷えたままであった。こういう装備をばかばかしいと思うか、アメリカの豊かさととらえるかはその人次第であるが、移動することを「何時間で移動できる」と計算しながらあくせくした時を過ごすのではなく、ゆったりと移動する間に変化する景色を堪能しながら、乗員同士がおしゃべりを楽しむような、数値としてではなく質としての豊かさを象徴する装備であることは間違いない(そもそも冷蔵庫を開発したのはアメリカ人なのだし)。そしてそんな時にこそ、36個ものスピーカーを持つAKGのサウンドシステムも効果的なものとなるはずである。
センターコンソールの冷凍・冷蔵庫を試したところ、購入して2時間以上経過したアイスクリームも溶けなかった。蛇足ながら左はチョコミントとティーオレ、左が新作フレーバーのメローバターアーモンドクッキーとジャモカコーヒー。
自動車の魅力はスポーティなことだけではなく、ラグジュアリーなことやエレガントなことはそれと同じくらいに大きなファクターであるということを、骨の髄まで感じた5日間だった。だが素敵な赤いキーホルダーのついたエスカレードの鍵を返却し、今回も魔法が解けてしまう、GMジャパンのビルディングはもうすぐそこである。キャデラックがいつまでもアメリカの豊かさと優雅さを失わず、あこがれの存在でありますように。キャデラックを愛してやまなかった友人も、雲の上できっとそう願っているはずである。
立派な3人分のシートベルト(中央部用は天井にリトラクターを持ち、するすると引き出せる)も備わり、スペース十分のサードシート。シート脇にはUSBタイプCの充電ジャックさえ備わっているのは21世紀である。
我々の想い
エスカレードほど、「威風堂々」という言葉が相応しいクルマはないと、我々は掛け値なしに想っているし、そう信じている。その優雅で、堂々とした佇まいと、圧倒的な存在感、気持ちの良いクルージングに適したクルマは他には見当たらないように思う。
安楽で平和な空間とともに、湘南の海を眺めながらのドライブは、「これぞまさにクルージング」と叫びたくなるくらい快適だった。
そして、これほど乗り心地が良く、ゆったりとリラックスしたスペースをエンジョイできたのは、キャデラックエスカレードの完成度の高さに他ならない。
一緒に過ごした5日間は、間違いなく至福の時だった。
CADILLAC ESCALADE SPORT 25TH ANNIVERSARY EDITION:https://www.cadillacjapan.com/campaigns-events/escalade-sport-25th-anniversary-edition
Text & photo: 大林晃平 / Auto Bild Japan