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【このクルマなんぼ?】伝説のV12を搭載したこのBMW 850CSiは世界に1台!

2020年9月27日

世界的にもユニークなBMW 850CSiがオークションに出品された!おそらくこの仕様では世界に1台しかないであろうV12クーペの1台が、オークションに出品されている!

初代E318シリーズは、1990年代にBMWのグランツーリズモのフラッグシップとして登場した。V8モデルも提供されていたが、最も威厳のある走りをするのはV12だった。その上には、シリーズ化されることのなかったM8に最も近い存在である、850CSiがそびえ立っていた。その自然吸気V12エンジンは、排気量5.6リッターから380馬力と550Nmのトルクを発生する。S70B56エンジンは、ゴードン マーレーの作った伝説の「マクラーレンF1」のベースとなったエンジンでもある。

そして850CSiのトランスミッションはすべてマニュアルシフトで、これは現在のV12では絶対に考えられないことだ。850CSiは、スカートの違い、ローダウン化された剛性の高いシャシー、ステアリング比の違いなどで、弱い兄弟車のV8モデルとは一線を画していた。トップモデルは、世界でわずか1,510台しか生産されなかった。現在その中の1台が、ナンバー162番の車輛が、アメリカのcarsandbids.comで、オークションに出品されている。このような8シリーズは二度と手に入らないはずだ!

ユニークな色の組み合わせ

一方で、この個体は優れた状態にある。スピードメーター上の走行距離は、わずか 39,700 マイル(約64,000kmに相当)を示し、その間、細心の注意を払ってメンテナンスされている。売り手によれば、灰皿までもが交換され、車が最高の状態であることを確認したという。しかし、本当に特別なのは、外側がデイトナバイオレット、内側がロータスホワイトとデイトナバイオレットという個性的な色の組み合わせだ。8coupe.com 8coupeの専門家によれば、この組み合わせは、一台だけ作られたものだそうだ。これは、Youtuberであり、Carsandbidsのオペレーターでもある、ダグ デムーロ(Doug DeMuro)氏でさえも言葉を失うほどのもので、広告された車両のそれぞれについて説明をしている。

クーペにはすでに5人の前オーナーがいた

広告によれば、この850CSiは比較的走行距離が少ないにもかかわらず、すでに5人の前所有者がいて、そのうち4人は売り手が個人的に知っているとのことだ。当初、最高入札額は64,000ドル(約685万円)で、このくらいが妥当な値段かと思っていた。しかし、ヨーロッパでは、走行距離の少ないBMWのトップモデル、V12クーペは、10万ユーロ(約1,250万円)の大台を超えているので、これで終わりというわけにはいかないはずだ。この1台がこの金額を超える可能性は十分にある。

そして最終落札額は143,000ドル(約1530万円)となった。

8シリーズによく似合う「デイトナバイオレットインディヴィジュアル」。

BMW850に乗っていた人物、というと、元読売巨人軍の松井選手、くらいしか思い浮かばないが、包み隠さず言えば?日本ではこの850は不人気車の一台である。著しく低い12気筒エンジンの信頼性をはじめ、不人気の理由はいろいろあると思うが、個人的にはこのカッコウがいけなかったのではないかと思う。

いや、850の格好が決して醜かったとか、しょぼかったのではなく、850の前のモデルの、633CSiとか、635CSiといった6シリーズがあまりに格好良く、スマートすぎたのがいけないんじゃないかな、と思う。そのために、日本では、850の中古車といえばもう気の毒になるほどの価格で取引されてしまっていたのだった。

当時、世界で、一番エレガントで美しい4ドアセダンがランチア テーマであったとしたら、2ドアクーペで、世界一エレガントで美しいのはBMW 6シリーズだったと思う。スマートで美しく、そして繊細なラインは(特にCピラーの美しさは絶品である)、BMWの歴史の中でも最高峰だと思うし、今でもデザインで6シリーズを超えるクーペはないと思う。そんな6シリーズから比べると、この850はエモーショナルなものに欠けるというか、無機質で、決してエレガントではない。全身筋肉質のスポーツマンな雰囲気は持っているものの、あのタキシードをさらっと着こなすようなスマートさと優美さはどこかに消え去ってしまっている。そしてそここそが、特に日本において過少評価され、中古車市場において、捨て値ボロ市、のような価格で売買される顛末を招いたのではないか。

だから今回のオークションの価格を見て、ゼロの数が一つ多いんじゃないかと思ったほど驚いたし、実際にこの車輛がオークションに出たとしてもわが国ではこの価格はありえない。走行距離も決して日本人の感覚では少なくないし、それが希少なMTのモデルであったとしても、この値段にはびっくりだ。

だが、ひょっとするとヨーロッパやアメリカでは、この850は大人気だったのかもしれないし、今でもカルト的な人気を博しているモデルなのかもしれない。私も850は決して嫌いではないが、この価格を出して買うかと聞かれたら、なんとしても635とか、6シリーズベースのアルピナB7(できればB7S)クーペを探し出して、レストアする方を選ぶと思う。850もいいクルマだが、6シリーズの魅力の前にはかすんでしまう。
それほど6シリーズの存在は偉大だったのである。

Text: Moritz Doka
加筆:大林晃平
Photo: Cars and Bids LLC