一騎打ち トヨタ スープラ対アルピーヌA110
2020年9月8日
トヨタ スープラ対アルピーヌA110 僅差で勝利をおさめたのはどっち?
トヨタ スープラ対アルピーヌA110: タッチの差で勝利したモデルはどちらだろうか? 4気筒エンジンを搭載したGR 2.0のトヨタ スープラと、軽量化されたアルピーヌA110Sとの対決で、その真相に迫る。
目を覚ませ、4気筒!
スタートボタンを押すと、トヨタスープラGR 2.0のハードテストプログラムが始まる。
日本車を、ハンドリングコースとして名高いコンチドローム(コンチネンタルタイヤのテストコース)で待ち受けるのは、強力なライバル、アルピーヌだ。
アルピーヌA110は、スープラとほぼ同じように強力な4気筒ターボを搭載している。
しかし、わずか1.1トンという乾燥重量で、このフランス車は、実は、直列6気筒エンジンを搭載し、340馬力を発揮する今回のスポーツカーの兄貴分であるトヨタ スープラGR 3.0に近いパフォーマンスを発揮するのだ。
4気筒ベーシックスープラはサクセスモデルだ
アルピーヌA110は、1馬力当たり4.4キログラムという性能を発揮する。
一方、スープラGR 2.0は、1馬力あたり5.7キログラムだ。
しかし、実際のパフォーマンスは、数字だけで測れるような簡単なものではない。
2リッターターボ(エンジンコードB48)は、兄貴分の大きなスープラと同様、BMWから来ている。
その4気筒エンジンは素晴らしいという表現以外のない出来だ。
サウンドエンジニアは、サウンドイメージを適切にスパイスアップしており、パフォーマンスは気持ちよく早く始まり、パワーはZF製8速オートマチックトランスミッションによって的確に分配され、文句のつけようがないほどの仕事をしてくれる。
完璧なチューニングが施されていることが、ベーシックなスープラの第一印象だ。
そしてもう一つの良いこと。
2本シリンダーが少ないため、エンジン全体がフロントアクスルの後ろに配置されている。
そのため、アクスルの荷重配分は、フロントが50%、リアが50%という完璧なバランスになっているのだ。
走行性能では、A110が明らかに一歩前に出ている
しかし、パフォーマンスという意味では、はるかに軽量なアルピーヌと比較してスープラは明らかに遅れをとる。
0から200km/hまでスプリントした場合、A110は20秒を大きく下回る。
加速は別としても、フランス車は、とにかくスポーツ性を重視している。
アルピーヌのドライバーは、スープラのような電動スポーツシートを使用すべきではない。
横方向の十分なサポートに恵まれたボディシェルは、手袋のようにフィットし、驚くべきことに、快適性をほとんど欠いている。
しかし、快適性とは何だろうか?
極めてタイトにカットされたコックピットの中では、そんなことを考えることはない。
実際、アスファルト上、たった39センチのところに座っていると、サイドウィンドウを通り過ぎるオペル コルサが巨大なモデルのように見えて驚くことがある。
A110はわずか4.6秒で0から100km/hに到達する。中間スパートもあっという間にこなす。
A110はダブルクラッチで作動する。
シフトパドルを優しく引っ張るたびに雷のような速さでトランスミッションが反応して、スポーツモードのギアを介して非常に大きな力を発揮する。
ハンドルを握るとすぐにエンジンが鳴り響く。
A110はダブルクラッチの超高速トランスミッションによって、シフトパドル上のすべての穏やかな引っ張りに反応し、スポーツモードのギアを非常に大きな力でハッキングし、何かを引き出す。そしてそれは同乗者には不快なショックともなるし、ドライバーにとってもやや不快になることもある。
スープラのドライバーは、そのよう厄介なことを心配する必要はない。
この決闘では、間違いなく日本車の方が日常生活で使用されるスポーツカーとしては楽で快適だ。
しかし、そんな日常生活も、コンチドロームテストラックでは一変する。
アルピーヌはスポーツボタンを押したままにすると、トラックモードが作動する(スープラにはスポーツモードしかない)。
ミシュラン製タイヤが温まると、アルピーヌは本当に鋭く反応し始め、あらゆる曲がり角を多くのグリップでこなし、ブレーキをかければ模範的な安定性を維持し、最初のラップから最後のラップまで、一貫してブレーキペダルのキリッとした硬いプレッシャーポイントを維持する。
ご注意。トヨタはドリフトをうまくコントロールした状態でこなす一方、A110は荷重変化による不快な感じを生じる可能性がある。
スープラももっと妥協のないシャシーセッティングであれば、このコースでもっと多くのことが可能だっただろう。
しかし、スープラにとってはそれで十分なのだ。
少なくともラップタイムに関しては十分だし、ステアリングはあまりダイレクトではなく、フィードバックが少ないにもかかわらず、コントロールは楽だ。
急なブレーキングでは、スープラはやや挙動を乱すこともあるが、ドライバーはすぐにそれに慣れることができる。
ドリフトの出しやすさと相まって、よりコントロールしやすくなったスープラは、レーストラックをより楽しくしてくれる。
そして、そのために6気筒は必要ないといっても過言ではない。
第1位 400満点中283点: トヨタ スープラ
素晴らしい4気筒エンジン、ソリッドなブレーキ、素晴らしいオートマチックトランスミッション。スープラは4気筒でも十分に満足させてくれるし、日常生活でも使いやすく役にたつ。
第2位 400満点中281点: アルピーヌA110
ライトウェイトなA110はよりピュアでスパルタンなスポーツマンだ。価格的なハードルも少し高い。
結論:
わずか2点という僅差での勝利。
トヨタ スープラはオールランダー(万能)スポーツカーとして見事に仕上げられている。
一方、妥協を許さないアルピーヌは純粋主義者的なドライビングエキスペリエンスを提供する。
したがって、どちらかを選ぶかは個々人の好み次第で、迷うことはない。
結論は予想した通り、というか、あなたの好みによって好きな方を選べばそれが正解、といった方向で結実しているが、まあどんな車を買う時にも好きなモデルを買うのが一番ということは間違いない結論だ。と言ってしまえば終わりだが、AUTO BILDのスタッフがわずかな差でスープラを選んでいたことはやや意外というのも事実である。
というのも、どうせこういう場面では、官能性とか、乗った人が楽しいのはどちらか、といった面だけが強調され、わずかな差でアルピーヌのようなモデルが選ばれることが常だからである。そんな比較テストにおいてスープラがアルピーヌを負かしたことは意外ではあったが、きちんとした厳正なテストにおいて評価を得られたということは、スープラがホンモノであるということでもあるし、いよいよそういう時代が来たかとも思う。そしてスープラの完成度は4気筒モデルでも十分にスポーツカーらしい生活を堪能できるということでもある。
だがアルピーヌが魅力的な存在であることも間違いない。毎日の使用で圧倒的に気が楽で、エアコンも効いて信頼性も抜群なのは言うまでもなくスープラだが、アルピーヌも毎日の移動に使えない車では絶対にないし、もはや信頼性も低くはないだろう。そしてスープラよりもちょっと気を使ったり、不便さを承知で乗ったりすることもスポーツカー乗りの正しい選択ではあるし、やはり好きな方を選ぶことが一番の選択なのである。
Text: Stefan Novitski, Tim Dahlgaard
加筆:大林晃平
Photo: Olaf Itrich / AUTO BILD