新型ACコブラ誕生 その中身は? 昔みんなが憧れた伝説のACコブラ再来
2020年9月5日
ACコブラの再来。でも調教されて、ちょっとおとなしくなって。58年前に登場し、その8気筒エンジンによって、ACコブラは一躍有名になり、カルトカーともなった。今、ヘビは再び少量生産シリーズとして再開された。しかし残念なことにV8はもうそのボンネットの中にはない!
8気筒か4気筒か?
購入主のほとんどは間違いなく8気筒のほうを選んだ。そして、もしカルトカーのACコブラが再来するなら、その選択肢は残っているのだろうか?ACコブラのメーカー、ACカーズはカルトロードスターであるコブラを2種類のバージョンで再び作り始めた。オリジナルのコブラが生まれて58年、しかしV8はもうない。
イギリスとアメリカの自動車の歴史ショートバージョン
1950年代半ばになると、少量生産シリーズモデルの市場はますます激化していった。少数のエンジンのみの生産では採算が取れなくなり、イギリスの自動車メーカー、ACカーズは倒産寸前だった。アメリカ人でレース界のレジェンドである、キャロル シェルビーは、イギリス人に、フォードの高回転型4.3リッターV8を搭載したコブラの新造を提案したのだった。その結果、AC(後のシェルビー)コブラは誕生した。
電気モーターまたは4気筒?
8気筒エンジンのファンは、購入するかどうか二度くらいは考えるだろう。まず、ACコブラシリーズ1エレクトリックは、その名の通り、230kW(308馬力)の静粛性に優れた電動モーターを搭載している。54kWhのバッテリーは500Nmの最大トルクを発揮する。これにより、6.7秒以下で0から100km/hに到達することができるはずだ。メーカーは純粋な電動のみでの航続距離を150マイル(240km弱)としている。
一方、もうひとつのACコブラ140チャーターエディションには、搭載されているのは期待されていた、V8エンジンではない。代わりに2.3リッター4気筒(エコブースト4気筒)が採用されている。そしてデータシートには355馬力、最大トルク440Nmと記載されている。コブラは0から100km/hまでのスプリントを6秒未満で達成する。これは、オリジナルコブラの7.0リッターV8のデータにはもちろん及ばない。V8バージョンのACコブラは、約4秒でスプリントを完了した。
筋肉質な体形は残る
デザインでは、ACカーズはおなじみの要素に頼っている。ストレスを受けた筋肉を強く連想させるフレアフェンダーを持つカルトカーのデザインはそのままに受け継いでいる。短いリアエンドで終わる細長い側面。そして、コブラには、フードが備わっていないため、晴天用の車にすぎないが、内燃機関エンジンモデルはほぼ1100キロ、電気駆動モデルは1250キロと、戦闘用の軽量ロードスターとして知ってあげられている。シャシーですら58年前のものと同じだ。もちろん、ACカーズではEコンポーネンツのマイナーチェンジは行っている。ステアリングやブレーキは現在の規格に合わせ、e-driveにも適応されている。インテリアでは、アナログの計器類はレトロなスタイルを忠実に踏襲している。
それでも比較すると、かなり好ましい
最後に良いニュース。潜在的に興味を持っている顧客は、自分のコブラのために長く待たせることはない。生産される全116台のうちの最初の1台は、早ければ2020年末にも納車される予定だ。コブラ チャーター エディションの価格はわずか85,000ポンド(約1,230万円)だ。一方E-コブラの価格は138,000ポンド(約2,000万円)からとなっている。そして、なぜ、「わずか85,000ポンド」なのか?50年代からのオリジナルのコブラは、その希少性のために数百万ユーロ(数億円)で取引されているからだ。したがって、カルトスネーク、ACコブラにあこがれている人にとっては、またとないチャンスでもあるのだ。レトロかニューカーか、悩ましいところだが、それでも伝統が守り続けられることには敬意を表したい。
電気自動車だぁ?フォードのエコブースト(通称 エコブー)だぁ?せっかくの格好いいコブラに対してそりゃああまりにもな仕打ちじゃあなかろうか、と正直にこのレポートを見ながら思った。この記事を見ているそこのあなたもそうでしょう? ね、そうに違いない。
以前から、昔の形のまま、中身は最新のテクノロジーでクルマを出してもらえたらなぁ、とは思っていたし、今でもその考えにかわりはない。ルノー5の形の電気自動車とか、フィアット トッポリーノの電気自動車、ちょっと良くないですか?でも、コブラのEVっていうのは、なんだか違和感があるんですけれど……
そんなコブラ電気自動車バージョンは、まあそこそこの性能を持ってはいるが、それでも、あの首の骨が折れると形容された加速には程遠い(こんなことならいっそのこと、テスラからモーターとバッテリーかっぱらってくりゃよかったかも)。
エコブーのほうは、はっきり言ってBMWのM2にはもちろんついていくことなどできるわけもなく、118dあたりと良い勝負のような速さだろうと思う。そう考えるとこのコブラは形を楽しむクルマなのかもしれないが、それにしてもあんまりなパワーユニットではないか。写真を見る限りボディワークも内装もなかなか手が込んでおり、昔の雰囲気をそれなりに頑張って醸し出しているがゆえに、どうしてもこのパワーユニットの軟弱ぶりが惜しい。まあおそらく、このエンジンルームに他のエンジンを押し込むことは可能だろうから、せめて6気筒か、できれば8気筒のエンジンを「買ったあとに移植する」という方法は可能だろうし、今から(本物と比べれば安いとはいえ1000万円以上を支払って)コブラを購入するという人間にとっては、それくらい納得いく出費だろう。
今からコブラをよみがえらせるという努力と技術に敬意を払うがゆえに、パワーユニットだけはちょっと惜しいなぁ、と思うのである。でもそれこそが21世紀の正しい姿と割り切れば、このコブラの完成度は高そうだし、総生産台数を考えれば目くじらをたてるべき問題でないのかもしれない。昔からコブラの形が大好きなまま齢を重ね、今でもおしゃれを楽しみながらスマートにカフェに行き、音もたてずに走り去る、そんな使い方ができる人にはぜひ乗ってほしいとも思う。
Text: Conny Poltersdorf
加筆:大林晃平
Photo: AC Cars