【動画付き】初試乗 スタイリッシュな新型 フェラーリ ローマ V8ツインターボ搭載2+2の実力は?
2020年9月3日
フロントエンジンV8のフェラーリ ローマをテストする
新型フェラーリ ローマ – 小さな欠点を持つサラブレッドドライビングマシン。かつてのフェラーリでは美しさを、直感的に楽しめていた。フェラーリは新型フェラーリ ローマで、それを復活させたいと考えている。マラネロからの新型フェラーリのレポートをお届けしよう。
1960年代のローマ、むろん1983年生まれの私には未知の世界だが…。その当時のフェラーリのプレス発表会によれば、カフェにはサマードレスを着た美しい女性が待っていて、ピンストライプの帽子をかぶったセニョールは250GTルッソに乗って迎えに現れたとこと。バローロ(イタリアの超高級ワイン)と昼下がりの浮気心-ラ ドルチェ ヴィータ(La Dolce Vita=甘い生活。1960年公開のフェデリコ フェリーニ監督のアカデミー監督賞受賞映画。主演: アニタ エクバーグ&マルチェロ マストロヤンニ)。フェラーリは、人生に対するこの態度を現代に移したいと考えているようだ。そして、我々は、ローマに適合するニッチ、「エレガンス」を見つけた。
ローマのブリキのドレスには歴史上のアイコンからの引用が含まれている
ローマはフェラーリモデルレンジの中でも最も優れていると言われている。そしてそれは見事に成功しているのだが、デザインコンセプトにおける独立性という面では、物議を醸しそうだ。なぜなら我々の同僚の数人は、ローマを見るやいなや、「アストンマーティンだ!」と叫んだ。それに対して私は言う。「あなたの眼鏡をきれいに拭いてから見直してください」、と。
はい、ローマには、DB11のそれとかなり重複するように思えるところもあるが、ローマは独自のことを行っており、充分にユニークだ。ボディカラーの統合されたシャークノーズグリル、サイドボディの水平ライン、ティアオフエッジの下のくぼみ、歴史的なアイコンからの引用と現代的なデザイン言語を組み合わせたデザインに仕上がっている。さらに、リアにあるこのダブル クアドリガ(四頭の馬が引くチャリオット)。上部には4つのリアライトがリデザインされてティアオフエッジに統合され、その下にはチューブ状のエンドポットが備わっている。
走行性能はほぼ文句なし
OPF(ガソリン直噴エンジンの排気ガスから粒子状物質排出量を削減するためのフィルター)がついていても、ローマは音響花火を船尾に向けて放ち、スマホに夢中になっていても本能的に振り向いてしまう。F8トリビュートにも採用されていた8気筒エンジンの620馬力のツインターボは、ここからその真価を発揮し始める。停止状態から時速100キロまでは3.4秒、時速200キロまではたったの9.3秒でダッシュする。エレガントでありながら荒々しい。一瞬のうちに、新しい8速ダブルクラッチは、ギアを切り替える。トランスミッションは、ところで、ゲトラグの開発したものであり、また、ハイパースポーツカー、SF90ストラダーレにも装着されているものだ。
固定パドルシフトが運転の楽しさを減少させる
フェラーリを愛するようなアクティブなドライバーは、通常、とにかくマニュアルモードに固執するが、これはDKGが特に説得力のあるところだ。たとえばピエモンテの素晴らしいヘアピンの1つで、急ブレーキをかけたときなど、いくつかのダウンシフトコマンドがすぐに送られ、トランスミッションは正確に、素晴らしい触覚フィードバックで実行される。唯一残念なのは、パドルシフトがステアリングコラムに固定されていて、ステアリングホイールで回転しないことが煩わしく感じられることだ。フェラーリは、ドライバーが常にステアリングホイール上に両手を置いている必要があるような方法でその操作概念を設計している場合は、パドルもアクセス可能でなければならないだろう。90 度の位置では、シフトは単に不可能だ。しかし、それが唯一の批判である。正確なステアリングと、ESCオフモードで見事にスイングするシャシーは、世界トップクラスと言える。まさにサラブレッドのドライビングマシンだ!
テクニカルデータ: フェラーリ ローマ
● エンジン: V8ツインターボ、フロントミドル縦置き ● 排気量: 3855cc ● 最高出力: 620PS@5750~7500pm ● 最大トルク: 760Nm@3000~5750rpm ● 駆動方式: 後輪駆動 ● 0-100km/h加速: 3.4秒 ● 0-200km/h加速: 9.3秒 ● 最高速度: 320km/h ● 全長×全幅×全高: 4656×1974×1301mm • 乾燥重量: 1495kg • ラゲッジコンパートメント容量: 272~345リットル ● 価格: 194,459ユーロ(約2,470万円)より
前回も書いたことだが、フェラーリ ローマはジャーナリスト、中でもある年齢以上の人たちに大変評価が高い。まずは、ローマ、という名前がよろしい。覚えやすいじゃないか。なんだ、そんなことかよ、と言わないでいただきたい。599だ、812だ、430だとか言われるよりは、フェラーリ ローマ。すっきりとしてわかりやすくていいじゃないですか。だから名前の良さは大切なのである。
次に良いのは、全体のさりげなくもエレガントさとスポーティさが絶妙にバランスされた、たたずまいで、本文中にも書かれている通り、アストンマーティンが好敵手に感じられる美しさだと思う。個人的には同色フロントグリルの部分(同色じゃない方がエレガントなのではないか、と思う)と、リアテールランプの形状と色がちょっとだけ残念ではあるが、それでも現在売られている他のフェラーリよりも圧倒的にシンプルで美しいと思う。
さらに内装も過剰なディテールや、いかにもフェラーリを強調しすぎた部分は影をひそめ、オジサン(おじいさん)たちが安心して乗れるような雰囲気を持っている。シート形状などもこういう派手すぎない色と普通の形状こそが、本当のフェラーリらしさともいえよう。
乗ってみてももちろん文句などあまりないほどの性能と快適さらしいし、フェラーリ ローマは久しぶりのエレガントで美しい2+2フェラーリだと思う。おそらく各種オプションを付けていくと3000万円の自動車にはなるだろうが、そもそも2+2のフェラーリは、2シーターのフェラーリよりも高価で格式が高いのが常であったし、そういうことを十分理解した層の人たちが、自分の好きな外装と内装とオプションを組み合わせ、見積金額などは一切無視して発注する、そういうクルマなのである。
Text: Alexander Bernt
加筆:大林晃平
Photo: Ferrari