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小さな巨人にひれ伏す「スズキ ジムニー」究極のMPV

2024年7月4日

年初にマイナーチェンジされ、さらに磨きがかかったスズキジムニー。「そう言っても軽自動車でしょ?」と高を括って試乗に臨んだ筆者は、走り出してすぐにそれはとんだ認識違いであったことを思い知らされた。

これまで筆者は、各メーカーの「軽自動車」はそれなりに試乗してチェックしていた。「軽自動車」は、日本独特のジャンルであり、明確に決められた規格の上限で各社しのぎを削っている差別化の難しいカテゴリーだ。そのため、個人的には見分けが難しい上に「軽自動車」は総じてブレーキがプアである印象があって積極的に購入する気にならないカテゴリーでもある。

間違った固定概念のもと借り出したジムニーだが、しっかりしたブレーキに驚き、俄然ジムニーへの関心度が高まった。

すべてが規格外

ボディサイズとエンジンは軽自動車の枠の上限であるため文句のつけようがないが、それ以外のすべては平均的な軽自動車とは完全に異なっている。ボディ剛性、ブレーキ性能、インテリアの質感については乗用車のレベルだ。ハンドルをはじめ、あらゆるパーツが乗用車レベルになっている(共有されている)、何よりシートの出来の良さにはびっくりした。15分も乗ると腰が痛くなるシートはいまだにたくさんあるが、ジムニーのシートは2時間連続運転しても苦にならなかった。同乗者も同じ意見だったので個人的な感覚ではないと言えよう。

ハンドル剛性も高く、通常は後輪駆動(!)ということもありコーナリングも楽しめるほどだ。これらは、ジムニー独自の構造によるもので、ラダーフレーム、リジッドアクスル式サスペンション、ボディ構造によってもたらされるが、それにより、自ずと車重が重くなる。スズキ ハスラーより150kg以上も重いのだ。しかし、この車重の重さが安定性につながっているとも言えるのではないだろうか。

これを見ればコスト最重視の軽自動車とは違うことがよくわかる。
Photo:スズキ

ジムニー最大の特徴である伝統のラダーフレームには、JB64型でエックスメンバーと、前後にクロスメンバーが追加され、ねじり剛性が高まっている。また、ボディとラダーフレームをつなぐボディーマウントゴムは、上下方向に柔らかくすることで乗り心地を良くし、水平方向に硬くすることで操縦安定性を高めている。

これが世界に唯一のジムニーのシャシー。
Photo:スズキ

主要諸元
・全長:3,395mm
・全幅:1,475mm
・全高:1,725mm
・トレッド:1,265mm(F)、1,275mm(R)
・ホイールベース:2,250mm
・ブレーキ:ディスク(F)、ドラム(R)
・定員:4名
・車重:1,040kg(MT)、1,050kg(AT)

R06A型直列3気筒インタークーラーターボは規格上限の64馬力だが、吸気レイアウト、インタークーラーの設置場所、樹脂製インテークマニホールドの採用、アルミ製オイルパン、エンジンオイルの選定など、ジムニーのために見直されており、ただ共有するエンジンを載せただけではない。

縦置きされる直列3気筒DOHCインタークーラーターボエンジン。
型式R06A型
種類水冷4サイクル直列3気筒DOHCインタークーラーターボ
総排気量(L)0.658
圧縮比9.1
最高出力(kW/rpm)ネット47〈64PS〉/6,000
最大トルク(N・m/rpm)ネット96〈9.8kg・m〉/3,500
ボア(mm)64.0
ストローク(mm)68.2
ストローク/ボア1.07
VVT吸気VVT
エンジンオイル粘度5W-30

気持ちよく走るにはコツがいる

エンジンは排気量のわりにトルクフルでターボラグは一切感じられない。ただ、低回転ではまったくと言っていいほど走らない。今回敢えて5速マニュアルをお借りしたのだが、街中から高速道路まで常に最低3000回転をキープする乗り方をしなければダメだ。それがわかってからは、まさに水を得た魚。ジムニーでこれほどまでのドライビングプレジャーを味わえるとは!

革巻きステアリングホイールをはじめ豪華装備のXC。質感の高さは秀逸。リアシートは事実上物置。

AT車とMT車両方を所有する知人に聞くと運転する楽しさはMT車の方が上だが、キビキビと、そして思うように走れるのはAT車だと言う。

本気でほしい

ジムニーはオフロード愛好家のための本格的オフローダーだと決めつけていたが、シティコミューターでもあることがわかった。兎にも角にも運転していて楽しい。ジムニーは絶対マニュアルで乗るべきだ!と言いたいところだが悩ましい。MTとAT2台のジムニーを所有する知人の気持ちがよくわかった。ジムニーシエラも試してみたいが、維持費など軽自動車のメリットを鑑みるとジムニーの方がいいのだろう。

ジムニーワールド

ジムニーは世界で類を見ない独自の乗り物だ。ドイツAuto Bild編集部にもジムニー好きがたくさんいる。また、アピアやダムドといったジムニーを知り尽くしているメーカー、ショップもあるので、ジムニーの楽しみ方は無限大で、最高のホビーであり、優れた実用車だ。

試乗車のブリスクブルーメタリックはとてもいい色だ。

いまだに即納車がないと言われるジムニーだが、「ジムニーは他の軽自動車とは作り方からして違うのです」とおっしゃっていたスズキの広報ご担当の話を思い出した。確かにボディ外板は1ミリくらい厚い鉄板を使っているような感じだし、ラダーフレームだし、リジッドアクスルだし。大量生産が難しいクルマだということがよくわかった。

ジムニーのグレードはXG、XL、XCの3種類で価格は1,654,400円から2,002,000円。XCのシフォンアイボリーメタリックかホワイトか。ツートンカラーにするべきか。オプションはどうしよう。夜な夜なカタログとにらめっこしている。

Text&Photo:アウトビルトジャパン