新型ブガッティ「トゥールビヨン」登場!8.3リッター自然吸気V16エンジンは機械工学の芸術に対する愛の宣言である!
2024年7月8日
新しいブガッティの名前はトゥールビヨン(Bugatti-Tourbillon)。排気量8.3リッターの自然吸気V型16気筒エンジンは、機械工学の芸術に対する愛の宣言である!
ブガッティ トゥールビヨンの開発は2021年に始まった
エンジニアとデザイナーに白紙が与えられ、比類のないクルマを作ることだけが前提になったらどうなるだろうか?その答えが「ブガッティ トゥールビヨン」だ。
時は2021年、「ブガッティ シロン」の引退を目前に控えたブガッティチームが動き出した。「前モデルに匹敵するなら、それはもはやブガッティではない」というモットーに忠実に、後継車は「シロン」を超えなければならない。「シロン スーパースポーツ300+」が現在でも世界最速の市販車でありながら、「VWゴルフ」のように簡単で快適な走りを実現していることを考えれば、簡単なことではない。
価格:基本価格は380万ユーロ(約6億4,800万円)
時計と同様、クラフツマンシップとブランドは、自動車に関しても非常に高価である。つまり、「ブガッティ トゥールビヨン」の価格は正味380万ユーロ(約6億4,800万円)であり、わが国(ドイツ)では実質約450万ユーロ(約7億6,500万円)に相当する。言うまでもなく、このクラスでは、価格は二の次であることは明らかだ。したがって、発表前にすでに250台の「トゥールビヨン」がすべて売約済みになっているのも不思議ではない。
デザイン:一目でわかるシロンからの引用の数々
「トゥールビヨン」は驚くほどの存在感を放ち、目を凝らせば凝らすほど魅力的なディテールを発見できる。そのディテールを総合すると、「シロン」と「トゥールビヨン」がまったく異なるクルマであることが明らかになる。それを理解するためには、まずデザインを見る必要がある。
フロントビューは特に目を引く。「トゥールビヨン」は先代モデルよりも33mm平たくなり、馬蹄形のラジエーターグリル(クラッシュストラットを追加して補強するほど幅広)を備えている。そのため、非常に骨太な「シロン」よりもワイドに見える。しかし、それは錯覚であり、両者の幅はまったく同じである。
馬蹄形のラジエーターグリルがどれほど前方に描かれているかは、サイドビューを見たときに初めて明らかになる。ブガッティのデザインディレクター、フランク ハイルは、基本的な形状は世界最速の鳥であるハヤブサをベースにしていると説明している。
ブガッティは、Cラインや伝説的な「ブガッティ タイプ57 SCアトランティック」に導入されたクレストなど、クラシックなデザインの特徴にこだわっている。ボディ中心を前後に走る1本のフィンは、オリジナルでは左右のボディをリベットで固定するための必要悪であったが、現代のブガッティでは純粋に美的なものである。「トゥールビヨン」では、フィンは小さなトランク(カスタマイズされたケースがある)からルーフを越えてリヤセクションまで続き、サードブレーキライトまで含まれている。細い鉛筆の線のようにボディを貫き、中央に配置されたワイパーによって視覚的に途切れない1直線のラインとなっている。
新デザインのホイールは「シロン」のものと同じサイズ(20/21インチ)だが、シャープなプロポーションにより大きく見える。リヤクスルには、ブガッティはサイドウォールがわずかに厚いタイヤ(従来の345/25ではなく345/30)も選択した。
露出したリアタイア
タイヤパートナーであるミシュランが「トゥールビヨン」のために特別に開発したパイロットスポーツカップ2タイヤは、後ろからよく見える。現行の「ポルシェ911(992)GT3 RS」と同様、タイヤトレッドのかなりの部分が露出している。これは、空力上後輪は45度の角度しかカバーする必要がないためだとハイルは説明する。
リヤの下部は、その名を冠したディフューザーで占められている。いわゆるキールは中央に位置し、角張ったテールパイプはディフューザーと一体化しているように見える。これは特許を取得したクラッシュ構造としても機能する。長さ約2メートルのカーボン製ディフューザーは、パッセンジャーコンパートメントからリヤまで伸び、ほぼ11度の角度で終わっている。これ以上は不可能である。
リヤウィングの使い道
このような努力には単純な理由がある。ブガッティチームは、「シロン スーパースポーツ300+」の記録更新ドライブで多くのことを学びんだ。ブガッティの特筆すべき点は、デザイナーとエンジニアが他のどのブランドよりも緊密に連携していることだ。例えば、ハイルが特に誇りに思っているのは、「トゥールビヨン」がリヤウィングを格納した状態で最高速度445km/h(もちろん電子制御による制限付き)に達するという事実である。ウィングはハンドリングモードでのみ必要となる。
ラ ヴォワチュール ノワール風の曲線を描くリヤライトや、カーボン製ディフューザーの武骨な表情など、芸術的なディテールには特に感銘を受ける。リヤのデザインは従来のブガッティの中でも傑作の一つだ。
ダウンサイジング?ブガッティでは違う!
エンジンもまた傑作である。伝説の「W16」が2022年に99台限定の「ミストラル」で引退したとき、私は最悪の事態を恐れた。V8ツインターボと電動アシストを搭載したブガッティなど・・・。幸い、私の心配は杞憂に終わり、ブガッティは走りの面で再び凌駕した。
W16ではなくV16
16気筒エンジンに背を向けずに、「W16」が「V16」として、新たなエンジンが開発された。2基の直列8気筒エンジン(これもタイプ57を意識している)が組み合わされた。その結果、1,000馬力、排気量8.3リッターの「V16」が誕生した。どのメーカーも、より小型で、より効率的とされるエンジンに長年注力してきたのに対し、ブガッティはその逆を行っている。ダウンサイジング?ブガッティは違う!
そして、「V16」の最高のディテールはもう明かされただろうか?9,000rpmまで回転する自然吸気エンジンのことだ。圧縮比14.5:1の極端にショートストロークな「V16」は過給機を頼らない。もう一度はっきりさせておきたい:「ブガッティ トゥールビヨン」は8.3リッター自然吸気V16エンジンを搭載し、1,000馬力を発揮する。言い換えれば、機械工学の芸術に対する愛の宣言だ!
エンジンもまた視覚的な芸術作品であり、ディスクやカバーなしで搭載されている。82mmの4つのスロットルバルブは、それぞれが彫刻だ。全く同じ長さのマニホールドも同様で、視界から隠されているが、その美しさゆえに実際には見えるはずである。
システム出力1,800馬力!
個人的には、全長約1m、重さ252kgの16気筒エンジンのみで成立させて欲しかった。とはいえ、「ブガッティ トゥールビヨン」がこのエンジンに3基の電動モーターを搭載するのは理解できる。2基は600馬力の電動フロントアクスル用で、もう1基はデュアルクラッチギアボックスとエンジンの間に搭載され、さらに200馬力を発揮する。これは「シロン」より300馬力、「シロン スーパースポーツ」より200馬力高い。
新しいのは、「トゥールビヨン」が電気駆動も可能なことである。これは、約25kWhの容量を持つバッテリーによって可能になったもので、センタートンネルとその後方にT字型に配置されている。電動モードでは、800馬力のパワーが4輪に供給される。驚くべきことに、機械式リバースギアはもはや必要ない。この仕事は電動モーターが行う。お望みであれば、燃焼エンジンだけで「トゥールビヨン」を駆動することもできる。この場合、1000馬力が後輪に供給される。
0-400km/h加速25秒!!!
0-100km/h加速が2秒、0-200km/h加速が5秒以下、0から400km/hまでの加速タイムが約25秒!!!まさにクレイジーだ。電動モーターとバッテリーによって約300kgの重量増があるにもかかわらず、「トゥールビヨン」は1,995kgの「シロン」とまったく同じ重量だという。しかし実際には、4基のターボチャージャーやインタークーラーなどが省かれたことで、エンジンだけで約150kgの軽量化が図られているのだ。
サウンドの面でも、「V16」は2005年から設定されている「W16」に勝る。スタジオで新開発V16エンジンを始動させるのはまだ早かったが、テストベンチで録音されたオーディオファイルから、250名の「トゥールビヨン」の顧客が何を期待できるかを知ることができた。
ウェイストゲートのヒス音だけが邪魔をする、「W16」の鈍いゴロゴロ音の時代は終わった。「トゥールビヨン」はまったく異なるキャリバーなのだ。高回転型V8と大排気量V12をミックスしたようなサウンドだ。レブリミットの9000rpmまで、エンジンはサウンドトラックに残る音のスペクタクルを提供する。これはブガッティオーナーにとっての嬉しい変化となるだろう。
装備:ドアは上向きに開く
「トゥールビヨン」は「EB110」以来のブガッティであり、ドアは(ボライドを除いて)従来通りには開かない。その代わりに、バタフライドアがフロントとトップに設置され、ルーフの大部分が開口して乗降を容易にしている。
インテリアの眺めは、他に類を見ない。人間工学に基づいて設計されたシートは、シャシーにボルトで固定されている。シートフレームをなくすことで、前述の33mmの高さを実現している。シートの代わりに、たとえば「フェラーリ ラフェラーリ」のようにペダルボックスを調整することができる。残念ながら、広さの感じ方は判断できない。生産間近のプロトタイプにはまだ座らせてもらえなかったからだ。
とはいえ、C字型のアークなど、多くのディテールを確認することができた。「シロン」のクラシックなレイアウトは継承されている。コックピットの最優先事項は、引き続きタイムレスである。
「トゥールビヨン」は何十年経ってもタイムレスであるべきで、そのためにブガッティは目に見えるスクリーンを排除した。センターコンソールの最上部にあるカバーの下には、リバーシングカメラとApple CarPlay用の小さなディスプレイだけが隠されている。すべてが無垢の素材から削り出されており、ボタンやスイッチのひとつひとつが小さな芸術品だ。「V16」の始動プロセスもまた賞賛に値する。まず、スタートボタンが押され、そのボタンが飛び出して引っ張られる。
息を吞むインストゥルメンタルパネル
これだけでは物足りないかのように、ブガッティは他にも素晴らしいものを用意している:「トゥールビヨン」には、「マセラティ ブーメラン」以来の華麗なインストゥルメンタルが搭載されているのだ。ステアリングホイールと一体化したサファイアガラスで覆われた3つの丸い計器が小さなバッフルに固定され、ステアリングホイールのハブは固定され、外部に取り付けられたシフトパドルを含むホイールだけが回転する。
走行中にレブカウンターと550km/hのスピードメーターを見ることはできないが、それは些細なことだ。「トゥールビヨン」は機械式時計の最高の複雑機構を意味する。まさにぴったりだ。
結論:
2026年に8.3リッター自然吸気V16。このエンジンだけでもブガッティに脱帽である。「トゥールビヨン」は、テクノロジーとデザインに対する等しく愛の宣言である。ブガッティは、すべてを新しくしながらも、自社らしさを失わないのが印象的だ。
フォトギャラリー: ブガッティ トゥールビヨン(Bugatti-Tourbillon)
Text: Jan Götze
Photo: BUGATTI AUTOMOBILES