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【高価な再塗装?】世紀のスポーツカー&ドリームカーである「メルセデス 300SL ロードスター(W198)」の再塗装価格は高い?それとも安い?

2024年6月20日

メルセデス・ベンツ 300SL ロードスター(Mercedes-Benz 300SL Roadster):メルセデス 300SL ロードスター(W198)のオーナーが、再塗装に5万ユーロ(約850万円)を支払う。今やメルセデス 300SL ロードスターは軽く100万ユーロ(約1億7,000万円)以上する貴重なクラシックカーだが、果たしてその値段は高いのか安いのか?

「メルセデス 300SL(W198)」はドリームカーであり、非常に貴重なクラシックカーである。長い間、ガルウイングはロードスターよりも高値で取引されていたが、近年は価格が若干収斂している。

とは言え、実質的に120万ユーロ(約2億400万円)を下回るものはない。

しかし、もし夢の車が希望の色で市場に出回っていなかったら?ハンブルクのある裕福な企業家はこの疑問に直面した。彼が見つけたのは1962年製の「メルセデス 300SL ロードスター」で、ディスクブレーキ付きの後期型(269台しか現存しない)。状態も良かったので彼は購入を決意した。ただ一つ問題があった。ボディカラーが彼の好みではなかったのだ。そこで彼は、この貴重なロードスターを純正色の「ブルーグレー(DB166)」に再塗装することにした。

世紀のスポーツカー

「メルセデス 300SL」は自動車工学の象徴であり、「世紀のスポーツカー」と呼ばれるにふさわしいモデルである。1954年から1957年にかけて、伝説的なガルウィングモデルであるクーペが1,400台製造された。当時の新車価格は29,000ドイツマルク(約253万円)で、「300SL」の価格は「VWビートル」の約7倍だった。今日では100倍といったところか。

そして1957年、「300SL ロードスター」が発表され(わずか1,858台しか製造されなかった)、70年近く経った現在でも、通の間ではより魅力的なクルマとして扱われている。エアコンがないこともあり、「300SL」界では「クーペは飾って置くためのクルマ、ロードスターは運転するためのクルマ」と言われている。

塗装後の再組み立てを成功させるため、分解はすべて綿密に記録された。

赤い「300SL ロードスター」は、購入時すでに走れる状態だった。実際、レストアされていないこの個体は、機関の状態も非常によく保たれており、数十年にわたって定期的に整備されていた。しかし、新しいオーナーは明るいボディカラーに満足していなかった。「300SL ロードスター」には新しい色が必要だったのだ。

老舗高級車ディーラーに任された

ハンブルクのスポーツカーディーラー、「デイヴィッド ファイネスト スポーツ カーズ(David Finest Sports Cars)」が再塗装を担当した。この老舗高級車ディーラーの本業は、高級スポーツカーの販売とサービスだ。「メルセデス 300SL」のような罪深いほど高価なクラシックカーは、そこでも例外であったのだ。

フリードリッヒエーベルトダムでのアポイントメント。2024年1月、マネージングディレクターのベンジャミン デイヴィッドは、満面の笑みで我々を出迎え、印象的なショールームを誇らしげに案内してくれた。「ポルシェ 911ダカール」、「ランボルギーニ ウラカン STO」、「フェラーリ 812 コンペティツィオーネ」、その他、数え切れないほどの夢のスーパースポーツカーが整然と並んでいる。そのほとんどは販売され、一部は冬の間保管される。

「デイヴィッド ファイネスト スポーツ カーズ」では、車は販売されるだけでなく、整備、改造、アップグレードも行われる。我々は、その時はまだ赤い「メルセデス 300SL ロードスター」の前に立っていた。

この「300SL ロードスター」はディスクブレーキを搭載した後期モデルで、専門家の世界では「ディスクブレーキ」と呼ばれている。

オラフ ボルンホフトが率いるワークショップチームは、専門知識を駆使しながらも、少しずつ「ディスクブレーキ」に慣れていかなければならなかった。ポルシェ、ランボルギーニ、フェラーリの修理はここでの日常業務だが、120万から150万ユーロ(約2億500~2億5,500万円)の「300SL」の分解と再塗装は別物だ。

「300SL ロードスター」の解体には2週間ほどかかった。すべての部品を適切に取り外し、ラベルを貼って保管する必要があり、そのために作業場の空っぽだった戸棚が満杯になった。

オリジナルの色は赤ではない

新オーナーの依頼で「300SL ロードスター」は購入に先立ち、この分野の著名人である専門家クラウス ククックによって精査された。

この専門家の報告書により、イタリアに最初に納車された「300SL ロードスター」は、1990年代に再塗装されていたことが判明した。1962年に「セメントグレー(DB186)」の外装色で工場を出荷されたが、この色は前のオーナーにとってはあまりにも目立たない色だったらしく、ロードスターは赤く塗り変えられた。

3リッター直列6気筒エンジン(M198)は215馬力を発揮。これにより、300SLのクーペとロードスターの最高速度は200km/hを優に超える。

再塗装されている時点で購入を断念する理由にもなっただろうが、好みの色が無ければ再塗装するしかないのもまた事実。彼は自分色のロードスターを作るためにも再塗装を希望した。

300SLのスペアパーツはもちろん高価

いくつか例を挙げてみよう。オリジナルのステアリングホイールは約1万2,000ユーロ(約204万円)、インテリアのトリムストリップは1本約2,000ユーロ(約34万円×10本以上)、オリジナルのジャッキは6,000ユーロ(約102万円)、ワイパーブレードは3,000ユーロ(約51万円)、そして伝説の3リッター直列6気筒エンジン(M198)は約40万ユーロ(約6,800万円)もする。

赤がグレーブルーになって完成に近づいた「300SL ロードスター」。

専門家による解体の後、クルマは塗装工場に運ばれた。同時に、クロームメッキされた窓枠は改修のために送られ、バンパーサポートはオーバーホールされ、小さな部品は交換され、「300SL ロードスター」が最終的に完璧な状態になるようにすべての部品がチェックされた。

約5週間後、車は3月末に「デイヴィッド ファイネスト スポーツ カーズ」に戻ってきた。そして4月、私たちが2度目のワークショップに入ったとき、クルマはほとんど見分けがつかなくなっていた。組み立てが進み、完成に向けてチームは入念な作業を行っていた。

この2枚の写真には3ヶ月の隔たりがある。しかし、最も重要なことは、見ての通りその結果が見違えて印象的だということだ。

組み立ては、大人向けのレゴのようなものだが、ここでのミスは許されない。忍耐力に加え、器用さも要求される。小さな部品には家庭用のピンセットが必要なこともあった。

費用は5万~10万ユーロ(約850~1,700万円)

しかし、最終的に重要なのは結果であり、それは印象的なものだ。数ヶ月のワークショップの後、「300SL ロードスター」はまるで新車のようになり、夏に向けて初出撃の準備が整った。「300SL」の現在の市場価値を考えれば、部分的な修復を含む再塗装に5万から10万ユーロ(約850~1,700万円)の費用がかかったとしても、オーナーは納得できるはずだ。

もし彼がオリジナルカラーの「セメントグレー(DB186)」に塗装していたら、ロードスターの価値はさらに高まり、塗装代は価値の上昇によって吸収されただろう。しかし、夢のクルマに常識は関係ない。

Text & Photo: Jan Götze / AUTO BILD