比較テスト 英国製V8スーパースポーツ対決 アストン対マクラーレン対ジャガー

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アストンマーティンDB11対ジャガーFタイプ R対マクラーレンGT: テスト、V8

3台の英国製V8スーパースポーツカーをテスト。イギリス車はまだまだかなり素晴らしい。そのことは並外れた才能をと特徴を備えた、アストンマーティンDB11、ジャガーFタイプR、そしてマクラーレンGTの3台によって証明される。

我々は今、イギリス北の州のカフェテリアで、ウォーカーズのハイランダーショートブレッドをかじりながら、3時のアフタヌーンティを飲み、幸せな気分に浸りながら、窓の外に並んだ3台のゴージャスなイギリス製スーパースポーツを眺めている。
今朝から、我々が思う存分乗り回し、楽しみつつテストした、アストンマーティンDB11、ジャガーFタイプ R、そしてマクラーレンGTの3台だ。
この3台のスーパースポーツカーは文字通りそれぞれの特徴を備えた芸術作品だ。

DBの美しさは膝まずかせるに十分なものだ

まず我々が特に心を奪われ、魅了されたのは、アストンマーティン ‐ 「Bond car par excellence(究極のボンドカー)」だ。
DB11の前に立つと、これが今までに出会った車の中で最も美しい車ではないかと思う。
優雅で、エレガントで、それでいて、しなやか。
黒のルーフに白がよく似合う。
ここでは、ミッドエンジン(フロントミッドエンジン)が車をドライブする。
フロントエンドは、ほぼ無限に長いため、4リッターのAMG育ちの車はフロントアクスルの後ろにしゃがみ込むようにおさまっている。
この構造の利点は、カントリーロードでフロントエンドが非常に安定しているのに対し、リアエンドは邪魔にならないことだ。
フロントサスペンションの間にある巨大なストラットがねじれを最小限に抑え、10本スポークのアルミ製20インチのブリヂストン製ポテンザS007が残りの部分を支える。

エレガントで速い。アストンマーティンDB11はもっとも美しいクルマの1台だ。そしてスポーティでもある。

音響的には、Fタイプ Rは他の2台をかなり引き離している

次にFタイプに乗ってみる。
Fタイプの車内では、快適なシートとともに、パッド入りの膨らみのあるバランスのボタンを押すだけで、エンジンの音響を変更することができるようになっている。
DB11同様、威厳があり、もし必要とあれば、地獄のようなうなり声を上げ、岩のように激しく転がることもできる。
強度の面ではマクラーレンが、音響的にはジャガーがもっともすぐれている。
しかし、それは音響的な意味合いだけで、蛇行するカントリーロードでは飼いならされた家猫のように、最もスポーティなモードでも傾きが目立ち、再びシャシーが落ち着くまで、加速は控えられる。

素晴らしいサウンドを備えたFタイプ R。音響の面では他の2台を大きく引き離している。

マクラーレンは、GTという名前に騙されてはいけない

驚くべきことに、マクラーレンはまず、見た目が思ったよりもおとなしく見える。
パワー面では、620馬力の強力なマクラーレンは、ジャガーやアストンマーティンから主役の座を奪っているし、おそらく塗装以外の多くの点でも同様に優れている。
マクラーレンGTは、驚くほど快適なシェルに埋め込まれ、カーボンファイバー製のモノコックと融合し、手にはフリルのない小さなステアリングホイールがあり、その後ろにロッカースイッチが伸びている。
マクラーレンには「GT」という略語とはかけ離れた安心感が備わっている。
さらには、必要に応じて後部に荷物を積むこともできるし、近所への買い物にも適している。
インテリアもきちんと丁寧に手入れされており、テストカーの出来映えは素晴らしいものだった。
動物の皮で覆われたヘッドライナーを含むフルレザーのインテリアだけでも芸術作品だ。
シートの後ろのエンジンは720Sのエンジンと構造的に似ているが、GT用に4リッターのツインターボV8を100馬力弱にして、より穏やかに反応するようにしてある。
そして、油圧アシストパワーステアリングは非常にダイレクトに反応し、このトリオの中で最も正確なフィードバックを提供してくれる。

マクラーレンは、「GT」とは名ばかりの、とても快適な乗り心地と使い勝手の良さを備えている。カーボンファイバー製モノコックボディの剛性は素晴らしいものだ。

テクニカルデータ: アストンマーティンDB11
● エンジン: V8ツインターボ、フロント縦置き ● 排気量: 3982cc ● 最高出力: 510PS@6000pm ● 最大トルク: 675Nm@2000rpm ● 駆動方式: 後輪駆動、8速AT ● 全長×全幅×全高: 4750×1953×1290mm • 乾燥重量: 1685kg • ラゲッジコンパートメント容量: 270リットル ● 0-100km/h加速: 4.3秒 ● 最高速度: 300km/h ● 平均燃費: 10.1km/ℓ ● CO2排出量: 230g/km ● 価格: 187,700ユーロ(約2,350万円)より

テクニカルデータ: ジャガーFタイプ R
● エンジン: V8ツインターボ、フロント縦置き ● 排気量: 5000cc ● 最高出力: 575PS@6500pm ● 最大トルク: 700Nm@3500rpm ● 駆動方式: 全輪駆動、8速AT ● 全長×全幅×全高: 4470×1923×1311mm • 乾燥重量: 1668kg • ラゲッジコンパートメント容量: 299~509リットル ● 0-100km/h加速: 3.7秒 ● 最高速度: 300km/h ● 平均燃費: 9km/ℓ ● CO2排出量: 252g/km ● 価格: 125,600ユーロ(約1,570万円)より

テクニカルデータ: マクラーレンGT
● エンジン: V8ツインターボ、ミドエンジン ● 排気量: 3994cc ● 最高出力: 620PS@7500pm ● 最大トルク: 630Nm@5500rpm ● 駆動方式: 後輪駆動、7速デュアルクラッチ ● 全長×全幅×全高: 4683×1930×1213mm • 乾燥重量: 1530kg • ラゲッジコンパートメント容量: 150リットル(フロント)/420リットル(リア) ● 0-100km/h加速: 3.2秒 ● 最高速度: 326km/h ● 平均燃費: 8.4km/ℓ ● CO2排出量: 270g/km ● 価格: 198,000ユーロ(約2,480万円)より

どれが勝者ということは特別にない。それぞれに心ウキウキさせる3台だ。3台のうちの1台に胸ときめいた人は、まず金融機関に勤める友人と相談する必要がある。
左から右へ、スターティング価格は、198,000ユーロ(約2,480万円)、187,700ユーロ(約2,350万円)、そして125,600ユーロ(約1,570万円)となっている。

イギリスのクルマ、特にスポーツカーはどれも「気骨」のあるクルマだと思っている。
今回の3台ももちろん気骨にあふれているし、どれも素晴らしい性能を持っていることと、どの車も明確なキャラクターを持っていることが素晴らしい。正直言ってどれがいいか悪いかではなく、どれが好きかということだけを選択基準として、選ぶことが一番いいだろう。
それはどのキャラクターが好きか、あるいはどのメーカーの歴史とか成り立ちに共感できるかとか、そんなところが選択基準になるはずだが、いずれにしてもどの車も人生の中で買って間違いのないクルマたちであることは断言できる。

そりゃあ1500万円とか2500万円も出せば良くなくっちゃ困るでしょう、という声も聞こえてきそうだが、いくら大金をつもうが、明確なコンセプトや確固たる意志がなければ、ちゃんとした製品など作れるはずもなく、3台ともそういう意味では実にコンセプトのはっきりした、折り目正しい英国スーパースポーツカーなのである。
個人的にはマクラーレンほどの性能はいらないし、毎日使うほどの男気も根性も持ち合わせていない。さすがにいくらなんでも気楽に使える自動車ではないし乗り手を選ぶスーパースポーツカー、そういうジャンルの車がマクラーレンだ。
そうするとアストンマーティンかジャガーかで迷うが、格好で選ぶならばアストンマーティンだし(といってFタイプが格好悪いわけでは決してない、昔のEタイプを連想させるルーフラインなど絶妙だ)、他の車よりも1000万円も安いジャガーだって性能は他の2台に劣るところなどない素晴らしいスポーツカーだ。
ジャガーだって1500万円もするので、けっして気楽に選ぶことはできないけれど、イギリス車らしさという点では雰囲気も含めて、大変イギリス車らしい一台だと思う。
それにくらべるとどうにも最近のアストンはどうにも格好良すぎて、昔のアストンマーティンのように武骨で男らしいクルマというよりは、素晴らしくスマートなスーパースポーツカーなので、どうにも自分が車に負けてしまいそうな部分に躊躇してしまう。

格好良さと魅力でアストンマーティンは素晴らしいが、ジャガーだってその魅力に劣る部分はない…、というように、結局アストンマーティンとジャガーのどちらを選ぶのかは、自分の中でも答えが出ないまま、だらだらと書いてしまったが、とにかくアストンマーティンとジャガーはまったく違うクルマであることだけは間違いないし、これからも違う道の上を進んでいくことだろう。決められないのは結局自分が、どんな車が欲しいのか、明確で確固たる決意ができていない自分がいけないのだと思う。

とにかく世界がどんどん均一化していく中で、まだまだこれだけお国柄の出るクルマを生み出しているイギリスは、やはり自動車趣味とライフスタイルがとにかく厚く、彼らの車への想いはいつまでも頑固なまでに明確なのだ。

Text: Alexander Bernt
加筆:大林晃平
Photo: Tobias Kempe / AUTO BILD