プラモデルはやっぱり面白い vol. 4 フェラーリ

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名作キットは復活しないのだろうか?

最近、非常に嬉しい出来事があった。トヨタ自動車が名車「トヨタ2000GT」(実車)用のパーツの再生産、販売を開始したのだ。これまで国産車メーカーは販売を終了した車輌の部品供給は基本的には行ってこなかった。従って宝物のように所有している愛車を長年にわたり、乗り続けるには困難が伴ったのである。しかし、ついにトヨタ自動車はこのように非常識(?)な常識を打ち破ったのだ。
同様にプラモデル業界でも名作と呼ばれたキットの再販を行って欲しいと思う。販売終了したキットを私は無性に欲しくなる事がある。発売中に購入しなかった事を後悔するのだが、人間の好みは変わりやすいのだ(私だけではないだろう)。ネットショップで中古品を探し当てても高額な事が多い。だが高額なのは人気がある証拠と言えるだろうことも事実である。

今回はまず、プラモデル作りにおけるディティールに関してのアドバイスを2件。

ウッドステアリングホイールの塗装方法

旧車のステアリングホイールは木製である事が多々あるが、その塗装方法を、今回は紹介したいと思う。完成後は車内なのであまり目立つ部分ではないが、オープンタイプの車両では目立つ部分である。
ここではタミヤカラーを例にして説明する。まずウッドの部分を「XF-78 木甲板色」(アクリル系かラッカー系)で塗装し、充分に乾燥させる。約1時間かけて乾燥させた後、「X-26 クリヤーオレンジ」と「XF-64 レッドブラウン」(共にエナメル系)とを2:1の比率で混ぜ合わせ、溶剤で薄めて上塗りするのだ。数回に分けて濃淡を意識して上塗りを重ねると若干であるが、木目も再現出来る。

メーターパネルの塗装方法

まずダッシュボードにあるメーターに付属されているスライドマークを貼る。注意点はスライドマークを台紙から切り取る際に「ニス」(余白部分)をキチンと除かなければならない。貼付後、乾燥させたら「X-22 クリヤー」をメーター部分に塗装するとガラスが再現出来るのである(筆でクリヤーをメーター部分に乗せるイメージ)。

写真はフェラーリではないが、「ジャガーXK Eタイプ」1/24グンゼ(現GSIクレオス)。メーター類が多いので、このモデルを例示した。

「フェラーリ」について

さて今回はフェラーリのプラモデルに関してちょっと触れてみたい。
80年代のバブル期には新旧のフェラーリのプラモデルが各社から発売されていた。しかも各社のオリジナリティーが発揮されていて、個性的なプラモデルが発売されていたのだ。
例えばフジミは「エンスージアストモデル」と銘打って、数種類の旧いフェラーリとポルシェを発売した。他社のフェラーリのプラモデルと比較すると2倍以上のパーツが箱に収められている(数えてはいない)印象があって、なかなか製作を開始出来なかったことを覚えている。
グンゼ(現GSIクレオス)は「ハイテックモデル」として、シャシーやホイール等を金属パーツにて再現したのだ。現在ではエッチングパーツが付属しているプラモデルは珍しくないが、本シリーズはその走りだったと思われる。
このシリーズも旧いフェラーリやアルファロメオ、オートバイ等が発売された。
タミヤはなんとプロトタイプの「フェラーリ・ミトス・ピニンファリーナ」を発売したのであった。プロトタイプの発売はタミヤにとって最初で最後と思
われる。
フェラーリファンにとっては百花繚乱の時期であったと言えるだろう。

「フェラーリ250GTO」1/24 グンゼ(現GSIクレオス)

実車のフェラーリ250GTOは39台しか生産されなかった為、稀少価値が高いモデルである。
また非常に美しいデザインであり、フェラーリ史上でも人気が高いのも頷ける(最近のオークションでは約30億円程度という)。
このキットはグンゼ製(ハイテックモデルではない廉価版)を製作し、ボディーをホワイトベースにブルーのラインを塗装した。
フェラーリといえば「情熱の赤」が定番である(特に250GTOは)。
しかし製作中に気が変わった。
せっかくプラモデルは自由に各自の好みを表現出来るのだ。もし250GTO(実車)をフェラーリ社へ発注したら、と有り得ない夢を想定して製作すれば良いのである (完成後、なんだかアメリカ車にみえてきた)。

フェラーリ250GTOのプラモデルは各社が競作している。グンゼの他にもイタレリ、フジミ等が発売した。本作はエンジンが再現されていないキットで比較的、短時間で完成できる。とにかく250GTOの美しいボディラインを再現したい方へお勧め(ヘッドライトカバー周辺のスライドマーク貼付は多少難儀するが、気長に作業することが求められる)。

「フェラーリ330P4」1/24 フジミ

昨年、公開された映画「フォードvsフェラーリ」でも脚光を浴びたが、曲線を基調とした美しいレーシングカーである。
このプラモデルは現在フジミが発売しているが、オリジナルはユニオン製と思われる。発売されてから数十年を経過しているが、なかなか製作するには手強いキットである。パーツの接着についても接着面が小さく強度が不足気味であったりする。従って完成後も手に持つ際には、注意しなければならない。
しかし一旦製作を開始するや、なかなか中途ではやめられなくなる。製作過程でも格好良さが鑑賞出来るし、製作の一過程が上手く進むと満足感があるのだ。
そうした苦労の結果、美しいデザインの330P4をじっくりと目の当たりに出来るのである。

前記したように古いキットであるが、トランスミッションやスペアタイヤも再現されていて、凝った内容となっている。どのキット作成でも言えることだが、透明パーツの接着は曇らせないよう気を使う。その際には曇らせない効果がある接着剤がホームセンター等で購入出来るので試してみてもらいたい。

「フェラーリ365GTB/4」1/24 フジミ

この365GTB/4は最後のV12気筒ベルリネッタとして現在でも高い人気を誇っている。デイトナというネーミングは1967年のUSグランプリでのフェラーリの勝利を記念して付けられた。
スタイリングもネーミングも米国人受けするように思える。
このキットは前記した「エンスージアストモデル」の再販版であるが、パーツ数が多いだけに、何よりも完成させる事を念頭に置いた。力まずあっさりと作り上げようとすると、結構それなりに仕上がるものである(意味不明な文章であるが、多少の失敗は気にせずにとにかく完成させた、という意味だ)。
あっさり製作したと前述したが、特に発売後10年以上経過しているキットには注意を要する点がある。
接着する前にパーツを仮組みしてみる事が必要なのだ。
パーツ同士の合いが悪いと、完成後4個のタイヤの接地が悪くなってしまう事がある。
古いキットは当然、パーツを成型する金型も古くなり、精度も落ちているのだ。

フジミには「エンスージアストモデル」の続編を期待している。アルファロメオ、マセラティ等は如何であろうか。本作もボディカラーを赤とはしなかった。なぜこのカラーなのか? 当時の私の愛車(実車)のカラーだったからだ。つまらない話で申し訳ないが、プラモ作りにはこういう楽しみ方もあるのだ。

「フェラーリ328GTS」1/24 ハセガワ

「フェラーリ328」は私が40年近く以前に最初に憧れたフェラーリである。
しかも知人が328GTSを所有されていて、同乗させてもらったものだから当時の私の頭の中はフェラーリに占拠されてしまった。
高価そうなメルセデスベンツを路上で見かけると「このベンツのオーナーは、何故似たような値段のフェラーリを購入しなかったのか?」と疑問に思ってしまうほどであった。
私はハセガワのキットは繊細なイメージがあるのだが、この328GTSも繊細な出来である。
面白いことにエンジン周りのプラグコードがプラ製のパーツで再現されている。
また跳ね馬のエンブレムは5㎜程度であるがスライドマークで再現するか、塗装をするかの選択肢があるのだ(5色のカラー指定が説明書に記載されている)。
ハセガワ社内でもこのエンブレムを塗装で仕上げる方がいらっしゃるか否か、はなはだ疑問である。

イタリアのスポーツカー(実車)にはスパイダー(オープンタイプ)仕様が多いように思える。イタリアの伊達男が地中海沿いやモナコ等をスパイダーで走らせる夢をみるのだろうか。スパイダーの場合はインテリアの再現に注力したい。例えばドライビンググローブやキーホルダーなどを自作すると面白いと思う。

「フェラーリF1-2000」1/20 タミヤ

以前、タミヤが発行している「タミヤニュース」で読んだ記憶なのだが、タミヤのスタッフがF1マシンを製品化する為に実車を取材した際に、取材されるF1チームのメンバーは、笑いながら取材を妨害したのだそうだ。
その理由は、タミヤのF1のプラモデルは精密かつ正確に再現されているので、他チームにマシンの秘密がばれてしまうのだと冗談を言ったらしい(笑)。
またF1デザイナーとしてレジェンド的存在のエイドリアン ニューウェイは9歳の時にタミヤの「ホンダF1」を父親に助けられながら製作し、続けて「ロータス49」を組み立てた経験が現在の自分の人生に大きな影響を与えたと語っている。
最近は版権料の問題もありF1のプラモデルが発売されなくなって久しいが、最近のホンダパワーの活躍をみると製品化が待ち遠しい。

レーシングタイヤにはブランド名がマーキング済である。またサスペンション部品のゴールド色の再現も専用パーツで手軽に綺麗に出来る。F1のプラモデル入門には最適のキットだと思う。

最後に

今回は「フェラーリ」を取り上げたが、やはりフェラーリはあらためて美しいと思う。それでもフェラーリを含めた自動車プラモデルが新発売される話題は減っている。
版権問題等が存在するらしいが、新型車や旧車を問わずプラモデルファンは欲しているのだ。市場動向を掴む為にプラモデルメーカーにはアンケートを募ってみる事を提案したい。

プラモデル自体の人気は落ちているのか? 長期的な視野では少子化や子供達の興味がプラモデル以外に向いている、とはよく聞く話である。調べてみたらこんな資料があった。
2019年度(2019/4~2020/3)の玩具の国内市場規模は8,153億円(前年比97.4%)であったが、プラモデル等のホビー部門は1,384億円(前年比101.3%)とある(一般社団法人 日本玩具協会資料)。
つまりプラモデル市場は好調なのである(因みに一番好調な部門はジグゾーパズル)。しかも春以降、世の中はステイホームの風潮になってきており、当面はこの傾向が継続されると思われる。どんな理由にしてもプラモデルに皆さんが興味を持ち始めたことは嬉しい出来事である。各プラモデルメーカーはこの期待にぜひ応えて欲しい。

Text & Photo: 桐生 呂目男

「プラモデルはやっぱり面白い」Vol. 1からVol. 7はこちらをどうぞ。