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コンパクトカーを見直そう SUVだけがクルマじゃない お薦めの小型車×8台

2020年7月24日

8台のうち3台が日本車で5台がドイツ車: コンパクトクラス購入アドバイス

この8台のコンパクトカーには、どんなテイストにも合うものがある。大人の便利さとお手頃価格。これら8台のコンパクトカーは我々の購入アドバイスサービスであなたの好みを競い合う。

世の中のすべての人がSUVを欲しがっている。
それって本当なの?
いや、正確に言えば、事実ではない。
車を購入するそれほど小さくないグループの中には、より扱いやすいサイズとコストを好む人もいる。ヨーロッパでは今でも多くの人々がコンパクトカーを購入する。
ドイツでは、購入されるほぼ5台に1台の新車、つまり新車の20%は、いまでもVWゴルフクラスのモデルだ。その購入アドバイスと提供されているレンジとともに、我々がお勧めするモデルとエンジンをお教えしよう。

欧州車はアジア車からの激しい競争に直面している

その中でも特に重要で面白いコンパクトカーを8台、徹底的にチェックした。今回チョイスした車の中で、まずVWゴルフは、第8世代として、生まれ変わって戻ってきた。また来年日本に戻って来るオペル 欧州では人気の高いアストラも興味深い。
ヨーロッパ勢は、特にアジアからの激しい競争に直面しており、今回もホンダ シビック、マツダ3、フルEVの日産リーフなどが登場している。
少し贅沢をしたい人には、3台のプレミアムコンパクトカー、アウディA3スポーツバック、BMW 1シリーズとメルセデスAクラスが登場して、競い合っている。

ベースは1種類、タイプは3種類。VWゴルフはバランスが良く、ホンダ シビックはスポーティ、マツダ3はスタイリッシュで実用的だ。

以下、フォトギャラリーとともに、我々の購入アドバイスをご参考ください。

ドイツでは、新車販売のほぼ5分の1がまだいわゆるゴルフクラスに属している。
その理由は? 
われわれの包括的な購入アドバイスを見て判断してください。
それでは、我々がお勧めするコンパクトカーのモデルとエンジンをご紹介する。
まずは、ホンダのシビックから始めよう。
新しいエアインテークとフルLEDヘッドライト(標準装備)で、シビックの繊細なフェイスリフトが明らかになった。

ボリュームのある回転式ノブとタッチスクリーンの左端にある(非常にフラットな)ダイレクト選択ボタンは、操作性を格段に向上させている。
エンジンの選択も明確だ。320馬力のタイプRはシャープだが、不合理(37,990ユーロ=約399万円)からだし、126馬力のそれなりに強力な1.0リッターターボは妥当(20,990ユーロ=約262万円)からだが、多少物足りない。
ということで、1.5リッターターボバージョンが選択肢として残る。その182馬力パワーユニットは実に活き活きとしていて、クルマ自体もとても機敏な動きをする。32,990ユーロ(約412万円)の「スポーツプラス」には、希望するほとんどすべての装備が備わっている。

いつものシビックのように、室内には十分なスペースと合格点の420から1187リットルのラゲッジスペース(1.0ターボより58リットル少ない)がある。
サスペンションはコーナーで速く、かなり快適だが、ステアリングはじゃっかんフィードバックに欠ける。

お勧め: シビックは、まだ多くの人に理解されていない、多くの魅力を兼ね備えている。
活発な1.5ターボ(182馬力、32,990ユーロ(約412万円)~、平均燃費16.3km/ ℓ)が完璧なチョイスだ。

〇: 文句なしのエンジン。格好の良いCMによるブランドイメージの高さ
×: 大きくなってしまったボディと、もはや市民=Civicのものとは言えない価格

第2候補は、ニッサン リーフだ。
ヨーロッパ全体で成功しているニッサン リーフのレシピは、4.45メートルの徹底的にコンパクトな外装長と非常に良好な空間条件、むしろソフトにチューニングされた快適なシャシーと、理解しやすい操作だ。

シンプルな素材の外観や反転時のビープ音のような奇抜さもその一部だ。
62kWhのバッテリーと217馬力を備えたe+として、ニッサン リーフは日常使いで300km以上の航続距離をカバーし、BMW i3のようにフルロードで颯爽と駆け抜けることができる。

しかし、大型バッテリーはリーフに300キロ近くもの重さを追加するので、40kWhのバッテリーと270キロの航続距離を備えた5000ユーロ(約62万円)安い廉価版で十分だ。
つまり、ベーシックなリーフも29,990ユーロ(約374万円=環境補助金込み)で購入できるということだ。20%から80%への急速充電は60分から90分で完了する。
※日本では332.6万円から

お勧め: 40kWhのバッテリーを搭載したリーフZE1で十分だ。
TEKNA機器パッケージは、6,710ユーロ(約7万6千円)の追加料金で、ベースモデルリーフにほぼ完全な装備をもたらす。そのリーフZE1 Teknaは36,700ユーロ(約458万円)から利用可能で、150馬力と17.1kWh/100kmという性能を提供する。

〇: 電気自動車として完成度が上がったこと
×: あまりに不細工な内装。今一つ不安なバッテリーの耐久性と保証問題。

そして第3候補、アウディA3へと続く。
その考え抜かれたスペースのコンセプト、ソリッドなシャシー、そして高品質なレベルが、ゲストを幸せな気分にさせる。
ラゲッジに関しては、BMWと同等の、380リットルから1200リットルを有する。
150馬力のA3 35 TFSIは28,900ユーロ(約361万円)から購入できるが、インゴルシュタットのメーカーは、7速SトロニックDSGのためには、追加で2000ユーロ(約25万円)を要求している。
しかし、ライバルのBMW 118iとは異なり、A3は、走行中の滑らかさとノイズレベルを向上させる4つのシリンダーを備えている。さらに、アウディは、250Nmというトルクのおかげで、常に生き生きとしていて、必要に応じて232km/hで走行することができる。

アウディは、追加料金なしでLEDライトを提供している。
追加料金がかかるのは、シートヒーター(340ユーロ)、40:20:40分割リアシートバック(200ユーロ)、デュアルオートマチッククライメートコントロール(590ユーロ)だ。
フルデジタルコックピットは標準で12.3インチ、フルHD解像度は(240ユーロ)の追加費用がかかる。

お勧め: コンパクトなインゴルシュタットモデルは、150馬力(28,900ユーロ=約361万円、平均燃費17.2km/ℓ)の35 TFSIがもっともお薦めと言える。全体的に優れた外観に最適なドライブのグッドコンビネーションだ。

〇: 作りの良さと、バランスの良い内容
×: オプション価格がとにかく高価。また日本にもディーゼルエンジンのモデルを導入してほしい。

BMWからは、当然1シリーズが参加する。
バイエルン製最小車でありながら、そのベーシックモデルは十分すぎるものだ。
118iは、ボンネットの下に1.5リッター3気筒エンジンを備え、その140馬力はあなたをとても幸せにする。
コンパクトなミュンヘン車は、決して邪魔にはならない唸り声とともにスピードを上げ、高速道路を180km/h(最高213km/h)の速度で爽快に巡航する。たとえ、高速走行時の細かいステアリング操作でコースの修正が頻繁に必要になったとしても…。
お勧めは、2100ユーロ(約26万円)の7速ダブルクラッチだ。
心地よく湾曲したやや狭いシートと、バランスの取れたサスペンションは、悪路でも拷問にはならない。
また、iDriveや音声認識システムを介したほぼ完璧な操作は、満足のいく笑顔を約束してくれる。

スペースの面では、寛大なものを想像する人も多いだろうが、大柄な人にとっては、2列目は窮屈だ。
ラゲッジ用にはA3と同等の380~1200リットルのスペースを確保している。
28,300ユーロ(約353万円)から118iは購入可能だが、ダブルクラッチを備えただけで、軽く30,000ユーロ(約375万円)は超える。
さらに、求めに応じて、シートヒーター(350ユーロ=約4万3千円)、LEDライト(900ユーロ=約11万円から)、デュアルゾーン自動空調システム(550ユーロ=約6万8千円)、またはロードスルーシステム(200ユーロ=約2万5千円)といった追加費用も必要となる。

お勧め: 最小サイズのBMWであっても、快適さと運転の楽しさは説得力があり、118iは、わずか3気筒にもかかわらず、全く痛痒を感じさせない。118iは28,300ユーロ(約353万円)から始まるがオプションは別途である。

〇: 前のモデルより広くなった室内とパワー豊富なエンジン
×: 前のモデルよりふっくらとしてキレのないスタイル。FRをやめてしまったこと。

次の候補、Aクラスの価格表を見てみよう。
3万ユーロは軽く超えて、5万ユーロはかんたんにいくのではないかという先入観を持っている方々へ。A180スタイルセダンは、30,410ユーロ(約380万円)から利用可能だ。
出力は136馬力で、燃料消費は18.8km/ℓという優秀さだ。
そしてベンツはなによりも安全性を第一に考えている。
1833ユーロ(約23万円)のドライバーアシスタンスパッケージには、ディスタンス(距離)レーダーとプレセーフ(PreSafe)システムが含まれている。
頻繁に利用するドライバーには、テクノロジーパッケージに魅力的に映る。そのパッケージには、アダプティブダンパー、LEDマルチビームヘッドライト、キーレスゴーと大型のブレーキが含まれている。いいだろう。だが、そのパッケージは3600ユーロ(約45万円)弱という追加費用が必要とされる。
その上、最新テクノロジーに魅了されているドライバーであれば、2つの大型デジタルディスプレイ、ナビゲーションシステム、そして交通標識認識をAクラスに装備する3552ユーロ(約44万円)のMBUXハイエンドパッケージは必須アイテムだろう。

他のギミック?
おそらく最高の音声認識がもっとも人気が高いはずだ。しかし、それにも2100ユーロ(約26万円)が追加でかかる。
見積もりの計算表にはすでに4万ユーロ(約500万円)以上と表示されている!
だが痛々しいほど高価な構成のあとには、運転する喜びが待っている。
エントリーベンツとは信じられないほど、そのシャシーは非常に良い仕事をしている。
そして、A180の136馬力は、最高速度215km/hのためには十分なパワーだ。
しかし、そうやって無理に高速で走る必要などない。
小柄でベンツは、ゆったりとした滑空が得意なのだ。
お勧め: スタイルラインのA 180で十分だ。
そしてMBUXのハイエンドパッケージを使えば、最高クラスのインフォテイメントシステムを手に入れることができる。

〇: メルセデスベンツというブランドと各種安全デバイスの充実
×: 価格を考えると熟成度が足りないことと、あとちょっとで手が届くCクラスの存在

日本からの3台目、マツダ3は、視覚的に際立っている。
スカイアクティブG1.5セレクションの価格は26,090ユーロから。
パワーは150馬力で、燃費は16.3km/ℓ。
あまり顕著でないのは、利用可能なスペースで、トランクの容量は、わずか351から1026リットルだ(今回の8台の中で最小)。
150馬力を備える新しい2リッターパワーユニットが、その弱点を補う。
それは、スムーズかつ静かに回転し、6000rpm以上でも遠慮なく力強く回転する。
だから、私たちは高速でリラックスして運転できるが、一方で、サスペンションがより滑らかで、ステアリングがより敏感になることを願っている。

デュアルゾーンオートマチッククライメートコントロール、リアビューカメラ、キーレスアクセスなどを備えたG1.5セレクションは、26,090ユーロ(約326万円)とかなりお買い得だ。
お勧め: 日常的な性能ではなく、美しいデザインを求めるのであれば、マツダ3がお勧めだ。非常に快適なのは、150馬力のガソリンエンジンモデルだ。

〇: 格好の良いデザインと作りのよい内装
×: 狭すぎるリアシートと、今一つ魅力にかけるパワーユニット

好むと好まざるとにかかわらず、VW Golfは多くのものを提供する。
例えば、スペースが節約されたボディは、今ではほぼ控えめな寸法(長さ4.28メートル)であることから、至る所に非常に優れた室内空間を提供している。
同乗者にはフロントとリアのどちらでも、常に快適な空間が存在する。
むろんドライバーも同様に快適なフィーリングを得る。サスペンション、ステアリング、ブレーキ、加速は、どれも優れた、あるいは非常に優れたものだ。
ベストセラーモデルを最大限に楽しみたい人は、150馬力のeTSIがお勧めだ。
ダブルクラッチは標準装備されていて、始動をアシストするスタータージェネレーターと連動して、素晴らしい仕事をしてくれる。
このエンジンとゴルフVIIから受け継がれた技術(これはまだボディの下に備わっている)は、あなたを幸せにするのに十分だ。

新しい完全デジタルコックピットは、ゴルフ8の初心者を神経質にさせる。すべてがタッチのみで動作し、エアコンのコントロールさえも。そして、そこには設定のための2~、3回のプッシュが必要とされる。だから音声認識を注文した方がいい。
機器にもよるが、すでに高価なゴルフには、1,195〜2,325ユーロ(約24~32万円)の追加費用がかかる。
お勧め: 1.5 eTSIとDSGは完璧に稼働する素晴らしい組み合わせだ。
ゴルフ1.5 eTSIの価格は32,480ユーロ(約406万円)からで、最高出力は150馬力、平均燃費は21.7km/ℓだ。

〇: すべてにバランスが取れた内容
×: 多すぎる車種構成と、まだゴルフ7ほどの完成度がないこと

アストラは、来年再び日本に上陸する可能性の高いオペルのエントリーモデルだ。
アストラはまだ本当のアナログのオペル(後継モデルはプジョーをベースにしている)で、とても良いものだ。

アストラは、すでに数年の歳を経ているので、もはやチャンピオンとは言えないものの、本物のノブやスイッチを備えたその非常に整然としたコックピットは、私たちを鼓舞してやまない。
そして同じことは、素晴らしいEGRシート(390ユーロ=約4万8千円から)にも言える。Aクラスよりも座り心地は良い。
軽量で流線型のアストラは、急発進加速し、シャープにブレーキをかけ、経済的かつ機敏にドライブすることもできる。

お勧め: オペル アストラは、快適なEGRシートやインテリジェントなLEDライト、シックな外観などを備えた2020年モデルの特別仕様車だ。
アストラ1.2 DIT 2020の価格は24,500ユーロ(約306万円)からえ、出力は130馬力、平均消費は22.7km/ℓという優秀なものだ。

〇: 実用的で広い室内。VWゴルフに劣らない完成度
×: これから発表される日本での価格と、知名度

今回は「コンパクト」カーのテストではあったが、コンパクトカーもいつの間にかちっともコンパクトじゃなくなったなぁ、というのが素直な感想である。
どのモデルも幅は1800mmもあり、言うまでもなく5ナンバーではない。購入するのに最低でも300万円は必要で、オプションをつけていくと500万円を超えてしまう、そんなクルマたちを、コンパクトカーというのはためらってしまうけれども、今やそういう時代なのであろう。
そう考えると、本来のコンパクトカーは、もう一つ下のセグメント、つまりVWポロや、ホンダ フィット、マツダ2といったモデルのことを言うのではないかとも思うが、そのセグメントでさえ250万円は必要で、大きさも日本の5ナンバー枠いっぱいの全幅を持っているのだから、様々な要因があるにせよ、普通の生活の中における自動車というのは年々肥っていってしまっているのである。
そんな中でもプレミアムコンパクト(?)というくくりで見てゆくと、今回のクルマたちはどれもそれぞれに良くできていて、どれを選んでも困ることも失望もない、と思う。
VWゴルフは相変わらずの文句ないバランスのクルマだし、アウディはさらに高品質でスタイリッシュだ。シビックはとにかくエンジンが素晴らしいし、マツダ3は美しく、作りもヨーロッパのモデルを超えたと思う。
オペルも日本に導入された場合、その価格がおおいに気になることと、VWゴルフの票田にどれだけ食い込むことができるかが気にはなるが、それは車の課題ではなくマーケティングの課題といえる。オペルのクルマは昔から完成度も高いのだから、あとは売り方の問題なのだと思う。
そんな中、ニッサン リーフだけは電気自動車で、毛色が違う一台だが、意外と個人的にはこれが現代の生活に即したクルマなのではないかとも思う。あまりに味気ない内装とバッテリーの性能&充電機能などは改善点ではあるが、生活のライフラインと考えた時に、電気自動車の可能性は高いと思う。
毎年繰りかえされる忌まわしい被災地でのパワーユニットとして、また年々少なくなっていく地方のガソリンスタンド問題への解決策として、EVの活躍の場はこれからますます多くなることが予想される。
都市部に住んでいてはなかなか気が付かないが、都市部から1時間も車を走らせると、ガソリンスタンドに行くのに30分以上もかかるへき地や、電信柱一本に生活を頼っている家などは珍しくない。そんな場所での電気自動車は、車というよりも一種の生命線なのではないだろうか。コンパクトカーは、そんな生活に寄り添った存在でいて欲しいと思うのである。

Text: Stefan Novitski, Gerald Czajka
加筆:大林晃平
Photo: Christoph Börries / AUTO BILD