1. ホーム
  2. テスト
  3. テスト 新型フルハイブリッドルノー クリオ(ルーテシア)Eテック140 その実力は?

テスト 新型フルハイブリッドルノー クリオ(ルーテシア)Eテック140 その実力は?

2020年7月23日

ルノー クリオ(ルーテシア)Eテック140: テスト、エンジン、価格

フルハイブリッドとして、ルノー クリオ(以下、日本名のルーテシアと称す)は、燃料消費と同時に価格も節約できる。国からの補助金こそ出ないものの、2つのパワーユニットを備えたフランス車はそれなりの説得力がある。そのファーストチェックをしてみよう!

ルノードイツはコロナ危機にもかかわらず、大笑いしている。
その理由とは?
EVの新型ゾエが、とりわけ連邦政府の助成金のために、ホットケーキのように売れているからだ。
その連邦政府の助成金は、完全なハイブリッド、ルーテシアEテックのためには利用できないものの、フランスのメーカーは割引でその分を補おうとしている。
そして、新しいルーテシアEテックも、決して悪い車ではない。
フルハイブリッドのルーテシアは、電気的なサポートがほとんど効果のなかった、ゴムバンドCVTトランスミッションと疲れたエンジンで、ユーザーに悪い経験を与えていた時代に終わりを告げる1台だ。

ルノー ルーテシアEテック140は、基本的には2台のプラグインハイブリッドメガーヌとキャプチャーと同じパワートレインを使用している。
91馬力(67kW)の1.6リッター内燃機関エンジンと、49馬力(26kW)と205Nmのトルクを持つ電動モーター、20馬力(15kW)と50NmのHSGジェネレーターで構成されている。
これにより、システムの総出力は140馬力(103 kW)となる。

純粋な電気駆動性能は管理可能だ

駆動系の心臓部は「CVTのような」(ルノーによれば)、DogBoxトランスミッションで、その原理はF1に由来している。
比較的強力なスタータージェネレーターが、シンクロの不足を補う理想的な速度を担っている。
また、ギアボックスの摩擦が大幅に低減されているため、エネルギーの回収が可能となり、燃料消費量の削減にも貢献している。
電動エネルギーは、日本の日立製の1.2kWhのバッテリーを使用しており、その重さは約45kgとなる。
純粋に電気的な意味では、最長走行距離4km、最高速度75km/hを意味する。
しかし、ルーテシアEテックのドライブトレインは、主に効率性と電気的なサポートのために設計されている。そして、駆動部品の相互作用は完璧に機能している。

このルーテシアは、電動モーターだけでは、最高スピード75キロまでで、4キロしか走行できないが、多くの都市部ではそれで充分だろう。

ルーテシアは、以下の場合にのみフルパワーで作動する

1,313kgのルーテシアは、電動アシストのおかげで、街中や田舎道をゆったりと移動する。
往年の内燃機関とEモーターの組み合わせのような、うなり声は一切聞こえない。
突然パワートレインにパワーを要求されたときだけ、トランスミッションはラバーバンド効果を発揮し、エンジンは甲高い声で反応する。
結局のところ、この小さなフランス車は、停止状態から時速100kmに到達するのに10秒弱しか必要とせず、最高時速180km/hの高速走行を実現している。
電動化されたルーテシアはタフなアスファルトの騎士ではないものの、シートは横方向のサポートと長い大腿部のサポートを提供している。

リラックスした走り。ルーテシアは陸の上を静かに滑空することができる。そして、アクセルペダルを踏んだ時だけ、トランスミッションが目覚める。

スポーツ走行モードは確かにベストな選択ではない。
一番いいのは、ルーテシアを「マイセンス(MySense)」モードに切り替えて、システムに任せてしまうことだ。
節約家は、「エコ(Eco)」ドライビングプログラムをアクティブにして、ゆっくりゆったりと運転することができる。
ルノーによれば、ルーテシアEテック140は、急速に充填されたバッテリーのおかげで、80パーセントの街乗りを電動で達成し、その結果、燃料消費量を約40パーセント削減しているとのこと。

ルノーは、国からの補助金不足を補いたいとしている

短い高速道路のステージを含む試乗での平均燃費は、23.2km/ℓだった。
ギアレバーを「B」に設定すると、より強力なエンジンリカバリーを作動させ、ほぼワンペダル感覚の先読み運転が実現できるようになっている。
9インチのタブレット型タッチスクリーンによるインフォテインメントシステムの操作は簡単だ。
ドライバーの目の前にある7インチのコックピットディスプレイで必要な情報がすべて表示される。
しかし、ディスプレイは少し遊び心がありすぎるきらいもある。
最後の最後に、やはり注目すべきは価格だ。
ルノー ルーテシアEテック140は、少なくとも21,874ユーロ(約273万円)する。
しかし、値段交渉可能だ。
なぜならルノーは、値引きに寄って、国からの補助金分を補う方針だ。
純EVを欲しないならば、ルノールーテシアEテック 140は良い選択となるだろう。

価格表によれば、ルーテシアEテック140は21,874ユーロ(約273万円)する。しかし、ルノーは手厚い値引きを行いたいと考えている。

わが国にもEテックは導入されると思われるが、プジョー&シトロエンがディーゼルエンジンのモデルを導入していることを考えれば、燃費に関しての他のソリューションとして良い対決をするのではないかと思う。

【フォトギャラリー】

ルーテシア初のフルハイブリッドモデル。基本的なテクノロジーはメガーヌやキャプチャーと同じものを備えている。
駆動システムは、91馬力(67kW)の1.6リッター燃焼エンジン、49馬力(26kW)と205 Nmトルクの電動モーター、および20馬力(15kW)と50NmのHSG発電機で構成されている。これにより、システムの総出力は140 HP(103 kW)となる。
電動エネルギーは、日立の1.2kWhバッテリーから供給され、その重量は約45キログラムだ。
9インチのタブレットタッチスクリーンでインフォテインメントシステムを操作するのは簡単だ。ドライバーの正面にある7インチのコックピットディスプレイは、必要なすべての情報を提供してくれる。全体的にシンプルではあるがセンスがいいのはルノーらしい。こういう部分を、日産リーフはもっと見習ってほしい。

ルノー クリオ(ルーテシア)は、ちょっとおしゃれなコンパクトカーに見られることが多いが、その本質は骨太な実用車である。いかにお洒落な色遣いで、フランスのエスプリ(笑)がどうたらこうたらと評論されたとしても、実はタフで実用的な2ボックスカー、それがルーテシアなのである。
そもそも先祖はあのルノー5なわけで、そりゃお洒落と実用性が両立していても当たり前の話ではあるのだが、このところルーテシアに欠けていたのはハイブリッドシステムと、自動ブレーキをはじめとする各種エレクトロニクスデバイスであった。

今回のEテック140には、もちろん日産の知恵と工夫が流用されていることに疑う余地はなく、厚木にある日産テクニカルセンター、通称NTCのエンジニアたちの汗と涙がしみこんだパーツとかモーターが、今までにはなかったほどの効率をルーテシアに与えたことで、あっという間にこのクラストップのハイブリッド車となった。
残念ながら安全デバイスのほうは、最新の日産のモデルには全く及ばないが、その辺もいずれは採用されるのではないだろうか。現状ではまだ進化の途中ではあるが、ルノーの十八番たる骨太なサスペンションや、まだまだ日本の車が追い付けそうもないシートなど、見るべき点の多いモデルである。そう考えると、このルーテシアは魅力的なモデルであるといえるし、日産とのアライアンスが良い方向に作用した一台なのではないだろうか。

だからこそ、というべきか、残念ながらというべきか、日産のこのクラスの車に(だけではなく、全モデル的に)、ルノーの持っている良い面が生かされた一台、というのが全く見当たらないことは、いったいどうしたことなのだろう?
ルノー風味の日産車、ぜひ一度見てみたかったのだが。

Text: Wolfgang Gomoll
加筆:大林晃平
Photo: PSA Groupe