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新旧ドライビングジョイ対決 どちらが本当に楽しいのか? BMW M2 CSか323iか

2020年7月22日

BMW M2 CS、祖先であるBMW 323iと出逢う: 新旧モデルテスト

強力なドライビングプレジャー: BMW M2 CSとその祖先323iの路上対決。
直列6気筒エンジンと後輪駆動、このコンビネーションこそが、BMWが成長した要因だった。M2 CSと1978年からやってきた323iはそれを備えている。
2台を同時に乗れるという、なんという喜び!

これは愛について、運転文化について、賞賛の物語である。
そして、バイエルン発動機製造株式会社=Bayerische Motoren Werke(BMW)のDNAについて。
それは後輪駆動と直列6気筒エンジンに他ならない。
この話のために、BMW愛好家のマリオは、彼の6台のBMWのうち、最も古い、今から42年前の1978年に製造されたE21型323i、容量2.3リッター、143馬力の323iをガレージから出してきた。もちろん、直6後輪駆動モデルだ。
我々は最新のBMW M2 CSをともなって彼の家を訪問した。

最後の2文字「CS」のせいで、このM2は32,500ユーロ(約406万円)の余分なコストがかかり、最終的には95,000ユーロ(約1187万円)という価格を備えた高価なモデルとなっている。

飛行機のエンジンを作っていたバイエルン発動機製造株式会社の作った自動車用エンジンの名機、直列6気筒。

M2と323iのサイズの違いは巨大だ

藪をつついて余計な生き物を呼び出すのはやめよう。
M2 CSは3リッターの直列6気筒エンジンを搭載し、450馬力を発揮する。
さらにこのスペシャルモデルは、ライトウェイト構造とレースのためにトリミングされている。
カーボン製ボンネットはM2のそれよりも4キロ軽く、カーボン製ルーフはマイナス7.5キロ、軽量なセンターコンソールはアルカンターラで覆われており、追加で2.5キロを節約している。

一方で老朽化した3シリーズは、長さ4.36メートル、幅1.61メートル、ドイツ南部のドロミテの山々を背景にしたアルゴイの丘のように繊細に見える。M2は323iより全長で10センチ長く、幅は26センチ(!)も広いのだ。
もちろん、これは主にリアのチーク部分が厚いためだ。
そして、19インチホイールには265のタイヤが必要だ。
323iが42年前にディーラーのヤードから出てきたときのオリジナルは13インチ、今回のクルマには14インチホイールを履いている。そして195のタイヤ、なんという素敵なチューニングだ!さらに運転していると、そのオールディーズな感じが身体全体を通して伝わってくる。

ホイールだけではない。新しいM2 CSの隣にある1978年の323iは、かなり小さめに見える。

運転していると、年季が入っているのがわかる

だがマリオはホイールとタイヤ以外の他のものは全てそのままにしておいた。
オリジナルのふわふわのシート!そのキッチンチェアのようなサイドホールド、おばあちゃんのソファのような布張り。そして4速マニュアル!
時速80km/hで全国2000ヶ所のイベントやツアーに参加して、心地の良いドライビングを楽しむ一方で、最終速度192km/hに達するまで4速目のギアを変える必要がないとは信じがたい。
最高出力の143馬力は6000rpmでのみ利用可能となるが、323iは高速で走りたがり、よりパワーを欲しがり、そしてあなたを翻弄する。
タイトな90度の右コーナーでは左前部に深く潜り込み、右前足を持ち上げそうになるもの、安全にコーナリングをこなす。

一方、M2 CSは323iとは別の次元のコーナリング性能を備える生き物だ。
そう、2つのモデルの間には42年の歳月があり、M2にはコントロールとレギュレーションのエレクトロニクスが詰め込まれているが、323iの電気システムはFMラジオしかない。

そして、M2 CSで、同じコーナーを同じく80km/hでこなしてみる。シフトダウン、ステアリング、そしてアクセルを踏む。
そして、何も起こらない。ふらつくこともなく、神経質になることもなく、あなたがステアリングとアクセルに指示した通りに走る。それはごく平和な時間だ。
このCSはサーキットやレーストラックのためのクルマであり、狭い田舎道のコーナーだけで操るのは、あたかもドイツサッカーリーグ1部のトップチーム、FCバイエルンミュンヘンを地方リーグに参戦させているようなものだ。倒せる相手などいない。

タイトなコーナーでは、古い3シリーズは大きく傾き、ほぼ脚を持ち上げそうになるが、最終的には安全にクリアする。

CSはレーストラックツールとしても使える。
今回のモデルはどちらも後輪駆動と直列6気筒エンジン、そこだけは同じだ。
そして、我々は旧型の3シリーズが、以前のように、活発に動き回れることを体験してとても幸せに感じた。
M2 CSもとても楽しめた。
ダウンフォースを高めるリアディフューザー、トランクリッドのティアバー、さらにダイナミックなパフォーマンスを発揮するアダプティブMサスペンション。280km/hまでの高速周回が可能で、コースであっても絶対に離陸することはない。
そしてMスポーツエキゾーストシステムの4本のテールパイプによって、より多くの、より良い音を体感できた。
最高の1日だった。
そしてこの2台と別れるのがつらかった。

【テクニカルデータと結論とフォトギャラリー】

テクニカルデータ: BMW 323i(E21)
• エンジン: R6(直列6気筒)、フロント搭載縦置き • 排気量: 2315cc • 最高出力: 143PS@6000pm • 最大トルク: 190Nm@4500rpm • 駆動方式: 後輪駆動、4速マニュアル • 最高速度: 192km/h • 0-100km/h加速: 9.5秒 • 全長×全幅×全高: 4355×1610×1380mm • 乾燥重量: 1180kg • ラゲッジコンパートメント容量: 460リットル • 燃費: 約7.6km/ℓ • 価格: 21,450ドイツマルク(約134万円、1978年当時)

テクニカルデータ: BMW M2 CS
• エンジン: R6(直列6気筒)、ツインターボ、フロント搭載縦置き • 排気量: 2979cc • 最高出力: 450PS@6250pm • 最大トルク: 550Nm@2350rpm • 駆動方式: 後輪駆動、6速マニュアル • 最高速度: 280km/h • 0-100km/h加速: 4.3秒 • 全長×全幅×全高: 4461×1871×1414mm • 乾燥重量: 1523kg • ラゲッジコンパートメント容量: 390リットル • 燃費: 9km/ℓ • CO2排出量: 226g/km • 価格: 95,000ユーロ(約1187万円)より

結論:
BMW M2 CS 1台に95,000ユーロ(約1187万円)というのは莫大な金額だ。
しかしその代わりに、CSは450もの息を飲むような馬力を提供するとともに、別の惑星から来たようなドライビングをもたらす。
1978年製323iにも似たような感覚は備わっていた。
なぜならそれがBMWを意味するものだからだ: それは車への愛だ。

40年以上という歳月は本当に長い。僕はそのころ中学生だったし、夢中になっていた自動車雑誌を毎日覚えるように読みながら、まだ免許をとるまであと3年もあるのかぁ、と思っていたそんな時代である。
今回の2台を見ると、一番驚くのはその大きさで、もはやそのころの5シリーズをはるかにしのぎ、6シリーズでさえ抜いてしまうほどの大きさに現在のM2は成長している。
さらに進化したのはエレクトロニクスデバイスの面で、電子制御燃料噴射装置はもとより、ABSやスキッドコントロールだけではなく、自動的にブレーキがかかったり、前の車に合わせてクルーズコントロールを作動させたり、勝手に駐車スペースを見つけてそこに入ったりするようなシステムなど、40年前には絵空事であったはずである。
そしてそれに伴って、性能は著しくアップし、今やM2はかつてのスーパーカー、BMW M1を置き去りにするほどの性能を持つに至った。そしてその性能を特別な、限られた人にだけではなく、だれでも簡単に発揮できるような装置を備えた結果、1000万円を超える値段になったわけである。
現在のどの車も同じように進化し、安全でだれもが簡単に、特別な技術を使わずとも高性能を発揮し、どんな天気でも走り曲がり止まるようになっている。そして明らかに車は大きく、重く、高価にもなっている。

42年経っても3シリーズを操る楽しみは変わっていない。

そんな現在の車を見なれた目で40年前の323を見ると、なんとも小さく、簡素に見える。だが不思議なことに、決して古臭いとか、時代遅れには見えないし、実際に走らせてみても十分にクルマとして機能することだろう。
デザインも内容も陳腐でもなく、クラシックカーという表現は適切ではない、と思うほどの新鮮な自動車、それが40年前の3シリーズなのである。これはもちろん当時のBMWの持っていた優れたデザインチームと卓越した技術力のたまもの、であるとも思うし、稚拙な表現かもしれないが、実に大したものであると感心する。
それと同時に、この40年間の進化というものが、電子デバイスや安全装備、そしてオーディオやナビシステム、といった面では著しく進歩している一方、絶対的な性能を別にすれば、本質的に「自動車が走る」という意味では、それほど大きく変化していないのではないか、とも思える。
果たして今から40年後、今回のM2 CSに、2060年の人々が乗ったら、どう感じるだろうか?

大きな見た目の違いには42年という長い月日を感じさせる。
2シリーズとは言え323iよりも大きくなった。いまや長く、広く、高いサイズを備えている。
70年代を彷彿させるマフラー、失礼、エグゾーストパイプ。
3本スポークのステアリングとMT用シフトを備えた、我々オールドジェネレーションには馴染みのBMWのコックピット。
直列6気筒と後輪駆動のおかげだ。
しかし今や323iが新型M2の先祖だと知っている人は少ないのではないだろうか。

Text: Andrew May
加筆:大林晃平
Photo: AUTO BILD