【JAIA試乗会】アルファ・ロメオ初のPHEV トナーレは超絶ハンドリングSUVだった
2024年2月11日
PHEVなんてアルファに相応しくない? いやいや、実にアルファらしい車なのです
「トナーレ Plug-in Hybrid Q4 ヴェローチェ」を走らせていたら、疑問や疑念や疑惑が次々に湧いてきた。
まず最初の謎は、なかなか加速しないことだ。バイパスの追越車線を流しながら、アルファに相応しい加速を味わうべくアクセルを踏んでみても、まるで取調室で黙秘を続ける頑固な被疑者のようになんの反応も返さない。エコモードでなくノーマルモードを選んでいるのに、なぜこんなに遅いのだろうか。
カタログによれば1.3L 直列4気筒ターボエンジンは180馬力、フロントモーターは45馬力、リアモーターは128馬力、すべてを合わせたシステム最高出力は280馬力のはずだが、カタログを作った業者が数字の桁を間違えたのだろうか? なるべくエンジンを動かさないモードらしいが、それにしても……。
仕方なくノーマルからダイナミックモードに切り替えてアクセルを踏み込んでみる。すると、エンジンは嬉々として吹け上がり、スポーティな外観に相応しい伸びのいい加速を見せてくれた。
カタログによればエンジンの排気量は1.3Lらしいが、カタログ業者が8を3と間違って記載したのだろうか? PHEVとはいえ、1.3Lとは思えない速さである。
つまりトナーレPHEVは、ノーマルモードでは遅すぎて馬力の詐称疑惑があり、ダイナミックモードでは速すぎて排気量の詐称疑惑がある。なかなか面白い車である。
さすがイタリア車だ。
切れ味の良すぎるハンドリング
カタログ業者への疑いはまだある。
モードを問わず一定以上の速度でステアリングをきると、トナーレPHEVは右に左に飛ぶように曲がり始める。ステア操作に対する初期のゲインが非常に高く、目が覚めるようにシャープで軽快なハンドリングだ。
カタログによれば、車重は1880kgである。PHEVかつ四輪駆動であり、この数字に納得感はあるが、その辺をのろのろ走っているスポーツカーを瞬殺するほどの鋭いハンドリングを味わうと、やはり3と8を間違って記載したように思えてしまう。
カタログ・スペックから想像する乗り味と、現実のトナーレPHEVは大きく異なっている。カタログ業者の怠慢でなければ、これはアルファ・ロメオならではの魔法というほかない。
ボディ剛性やサスペンションの仕上がりは標準的なものだが、唯一、回り込むようなコーナーでステア操作をした際に保舵力が軽すぎてフィールを欠くことが気になった。また1990年代までのアルファでファンを虜にしてきた、エンジンの回転上昇と共に歌い上げていくようなサウンドのマジックもない。
だがトナーレPHEVには、SZ(ES30)やブレラを思い出させるアルファらしいスタイリングと、急進的なほど鋭利なハンドリングが備わっている。その上、葬式とサンバカーニバルくらいに違うノーマルとダイナミックのモード切り替えスイッチもあり、イタリア車らしい憎めないキャラクターの車に仕上がっている。試乗車は「モントリオール・グリーン」という色に塗られていたが、トナーレPHEVの周囲だけぱっと華やぐような素敵なカラーリングだった。
そう、アルファ初のPHEVは、実にイタリアらしい車だったのである。
Text: Auto Bild Japan
Photo: 池淵宏&Auto Bild Japan