【ご褒美試乗会2024】毎年楽しみでたまらない試乗会がやってきた 第43回JAIA輸入車試乗会 14台を試乗レポート!
2024年2月7日
日頃の精進と努力へのご褒美?我々が毎年楽しみにし、心待ちにしている「JAIA輸入車試乗会」に参加した。2024年1月31日の湘南の海が大きく広がる大磯は、雲一つない快晴で、暖かく、絶好の試乗会日和だった。ありがとう神様。我々はこの日、すべてが素晴らしかった14台の欧米モデルを文字通り堪能した。
それではまず、メルセデスSUV対決からお楽しみください。
【どっちの自動車ショー】比較テスト メルセデス・ベンツGLA 200d 4MATIC対GLC 350e 4MATIC
僕は下戸なので利き酒というのにはまるで縁がない人間なのだが、基本的にはその場合さっぱりとした、あるいは安い(下級の)方から、豊潤でリッチなほうに進むのが王道だそうで、それは自動車の比較テストにもきっちり当てはまると思う。
まずはパワーが少なく、グレード的に下のモデルから上に、というのが普通でしょう、ということでまずはメルセデス・ベンツGLA 200d 4MATICに乗り込むが、ドアを開けて驚くのは派手な赤を基調とした内装と、過剰なまでに演出されたエアアウトレット、そして今のメルセデスらしく室内に光り輝くイルミネーションである。最後のイルミネーションだけはコントロールパネルで、思い切り地味な色に変更する事は可能だが、昼間の試乗だしそのまま乗ることとした。それにしてもW123(古い!!)の頃の内装を知っている身としては、あまりの天変地異に戸惑うばかりの室内空間である。
これが今の一般的なメルセデス・ベンツの室内光景、と自己暗示にかけながら真っ赤なシートに座りエンジンをかける。この色彩と造形を無視するならばGLA 200dは適度な大きさで使いやすいサイズの実用車になるのではないか、と思いながら走り始めると、なかなかな好印象を受けた。どこが具体的に好印象かというならば、ディーゼルエンジンであることを感じさせながらもスムーズに回るエンジンと、可変ダンピングの影響からか235/45/20という扁平のタイヤを持ちながらスムーズで快適な乗り心地、そして1850mm幅と1760㎏の車重という、決して小さくはないけれど相対的には許容範囲のサイズと重さ、で使いやすく感じる。
特に2リッター直4ターボディーゼルエンジンと組み合わされた8速DCTの働きっぷりはなかなか見事で、軽やかに街中を走ることができるだけでなく、高速においてもかなりの余裕をもって走行することができる。GLAなかなかやるじゃないか、こりゃ普段使いからちょっとした遠出までこれ一台で事足りるかも……と車から降りる際に価格ボードを見ると、車輛価格655万円に100万円以上のオプション装備がついて、ほとんど800万円である。GLA今やそんなにするのかぁ、そりゃ良くなくっちゃ困るよなぁ、と少し冷静になりながらGLC 350e 4MATICに乗り変えることにする。
本当ならイコールコンディションとしてディーゼルエンジン同士で比較したかったのだが、今回お借りできたのは「e」つまりプラグインハイブリッドのGLCであった。2リッターのガソリンエンジンと組み合わせたシステムの最高出力は320psと700Nmを生み出し、9段ATのトランスミッションとエンジンとの間に組み合わされたモーターが加勢して、またはモーター単体でも走行する。どういう風に作動し、どんな状況下で走行するのかは短い時間では満足に理解できなかったが、とにかく素晴らしく滑らかで速く、GLA 200dの150ps 320Nmのディーゼルエンジンとは次元の違う世界を提供する。これはもうクラスが違いすぎる、そう感じるのに十分な差異ではないか。
実際に走らなくとも、この2台はまるで異なり、ドライバーズシートに乗り込んだ瞬間からセグメントというか、もうクラス(階級)の差を肌で感じ取れるのがいかにもヨーロッパ的であり、それこそがメルセデス・ベンツの戦略ではある。GLAの真っ赤できらびやかに光り輝くピアノブラックの内装パネルにくらべ、GLCの茶(それでも十分に派手ではあったが)と、落ち着いた色基調のウッドのパネルはそれだけでほっとするような安心感を与えるし、もう一つ一つのスイッチのタッチからシートの大きさと感触、ステアリングホイールの質感や窓の切り方、空間の設定などなど、もうすべてが違う。
大きな声じゃ言えないが、GLAのオーナーは親友がGLCを購入したら、乗っちゃダメである。まあそれを言ったらEのオーナーはSに乗るべきではないし、無間地獄ではあるのだが、とにかく今回一番感じたことは、お金を払った者に対する接し方が、ここまで大きく違うのか、というクラス(階級)の差であった。
もちろんこの2台はエンジンだけでなく、プラットフォームも違えばすべてが異なる。価格に至っては、今回試乗したGLC 350e 4MATICは998万円の車輛価格にざっと100万円のオプションを装備し、ざっと1100万円であった。決してGLEではないし、少し前までゲレンデヴァーゲンG 350dとかS 300dがこれくらいの価格であったことを考えると、自動車は高くなったなぁ、と実感せざるを得ない。くどいようだが、GLCが1100万円なのだから。
という自動車のせいだけではない通貨や給与所得の問題はひとまず触れないことにして結論を言うと、GLAは実用で乗ると決して悪い車ではない、GLEに乗ったり触れたり比較しなければ、という当たり前の結論になる。この2台には300万円の差があるが、これを大きいと捉えるか、小さいと捉えるかはあなた自身に問題であり、それが選ぶ時のポイントとなる。
蛇足ながらメルセデス・ベンツのSUVラインナップの中には、現在この上のセグメントにGLEとGLSがあって、さらには中間にGLBもあるし、GLSクーペとGLEクーペもある(合計SUVだけでも7種類あって、さらにマイバッハGLSとゲレンデヴァーゲンを加えるならば9車種)。普通の(?)メルセデス・ベンツのモデルにはAとCとEとSがあって、ほかにもCLAなんかもあるしCLSがいたり、シューティングブレークさえあったりもする。あとお忘れになってはいけないが、もちろん他にEQシリーズもたくさんあって、とにかく覚えきれないほどのフルラインナップである。
この2台のモデルにも、それぞれ様々なエンジンの違いがあり、AMGパッケージもあるし、ホンモノのAMGもあるし、すべて乗り比べるなんて所詮無理な話である。まったくこんなにモデルがあったら、いくら利酒士だって、酔っぱらってわからなくなってしまうだろう。メルセデスの開発者だって全部乗っているのか、心配になるほどだ。
Text & photo: 大林晃平