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【ひねもすのたりワゴン生活】自称果樹園に新顔登場 その2

2024年1月23日

フルーツもいいけど、とろろ飯もね

 翌日、植えつけの準備に取り掛かる。ネットをチェックしてみると、土はよくほぐして柔らかくしておいたほうがいいようで、ちょいと骨が折れそうだ。とはいえ、今回選んだのは長く伸びるタイプの芋ではないので、さほど深く掘る必要はないんじゃなかろうか…。そんな自分に都合のいい解釈をして、土を耕すのは最低限にした(笑)。袋の説明書きによれば、埋めるのは20㎝程度の深さでいいらしい。一応、伸びしろを考えて40㎝ほどの穴にする。

なかなか芽吹かないので心配していたけれど、5月に入ってついに!

 種芋を埋めて軽く押さえて、支柱を立てる。自然薯は茎が蔓のように伸びていくので、上に伸びてキウイに巻きつかれたら大ごとだから、単なる棒ではなくて、朝顔などに使う組み立て式のループ状のものを用意した。そんな作業を終えたのは3月……あとは秋まで放っておくことにした。

おっ!うまくいった。この後、あっという間に支柱は葉っぱで覆われる

 放っておくと言いながら、気になって気になって仕方がない。ちょいちょい見に行ってみるけれど、なかなか芽吹かない。普通の野菜なら種を植えれば、早ければ数日、2、3週間も経てば顔を出すが、自然薯はのんびり屋だった。で、ようやく芽が顔を出したのは5月のGW明けだった。待った割には、芽が出たらすごいスピードで蔓が伸びて、ループの支柱はハートを細長くしたような葉で埋め尽くされた。それだけでは足りずに、濃い緑の葉がキウイ棚まで進出して、やはりキウイの枝と絡み合った。で、慌ててほどいて、元の支柱に戻しておいた。

 梅雨が明けてお盆を過ぎ、10月に入ると、そんな葉も日に日に艶を失い、やがて黄色に枯れ始めた。しかし、完全に枯れたあたりが収穫時期だと書いてあったので、もう少し放っておくことにした。日に日に寒さが増して秋が深まっていったが、房総半島の内陸にある自然薯の産地でも出荷は11月に入ってからと聞いたので、我が自然薯サマもそんなものだろうとのんびり構えることにしたのである。

 が、しかし。
 あろうことか年末にかけての忙しさで、自然薯のことが頭からすっぽり抜けてしまった………そのまま正月を迎え、松の内も過ぎ、思い出したのは1月の末だったのである。
年末年始の暴飲暴食で疲れた胃が不調をきたし、消化のいい食事を心掛けようと思いついたのが“とろろ飯”。

 「あっ!」。そこでようやく自然薯を思い出した。冬真っ盛り…もう手遅れか?と不安になって、ネットで検索してみると、2、3年放っておけば芋も大きくなるという。…ってことは、この時期でも芋は健在だろう。とにかく食べてみたい。いや、まずは掘り出してみたい。で、1月の最終日…寒風吹きすさぶ中、ついにスコップを入れてみた。

晩秋、収穫をすっかり忘れて、気がつけば気の早い梅が咲き始めていた

 まず、伊勢芋系のほうを掘ってみる。コロリとしたお饅頭のような芋が出てきたが、残念ながら、種芋と比べてひと回りくらい太っただけで、食べるには心もとない。植え方が悪いのか、肥料が必要だったのか、それとも土が合わなかったのか…。ちょっと落胆しながら、手芋系のほうに取り掛かる。すると、今度は見事に育った芋が姿を現した。手のひらを思いっきり開いたくらいのサイズで、店頭で売られているものより少し小ぶりな気もするけれど、食べるのには充分。初挑戦にしては上出来だ。

掘ってみたら、手芋系のほうはこのとおり!ひとつひとつが手のひらをちょっと超すくらいのサイズ
泥を軽く拭ってカーゴルームに置いたら、なかなかの艶姿(笑)

 水洗いして土を落とし、すり鉢で丁寧にすり下ろす。かなりの粘度で摺るのが大変だが、伊勢芋のように団子になって持ち上げられるほどではない。かつお節でかなりしっかりしたダシを取り、そこに味噌を溶かして味をつけた。自然薯の土の香りと味噌の風味は相性がいいからだ。以前、味付けは醤油をメインにしていたけれど、味噌のポテンシャルを知ってからは、すっかりファンになった。

すり鉢で丁寧におろし、さらにすりこぎで滑らかになるまで摺っていく

 ちなみに、旧東海道沿いの静岡県の丸子宿はとろろ汁で有名だが、江戸時代の浮世絵には、とろろ汁の店で室内にアユを干している光景が描かれている。かつお節の代わりにアユで旨みを補っていたらしい。

ついに我が家のとろろ飯が完成!いや、我が子?ながらなかなかの美味でした

 こうして拵えた我が家のとろろ汁はことのほか美味しかった。掘ってまもなくだからかもしれないが、なんといっても香りがいい。疲れた胃を癒そうと思っていたのに、茶碗で3杯も平らげてしまった……。

Text&Photo:三浦 修

【筆者の紹介】
三浦 修
BXやXMのワゴンを乗り継いで、現在はEクラスのワゴンをパートナーに、晴耕雨読なぐうたら生活。月刊誌編集長を経て、編集執筆や企画で糊口をしのぐ典型的活字中毒者。

【ひねもすのたりワゴン生活】
旅、キャンプ、釣り、果樹園…相棒のステーションワゴンとのんびり暮らすあれやこれやを綴ったエッセイ。